赤髪の白雪姫2次小説
1.雷のあとに
二人で外出したのはいいけど、雷のせいで帰れなくなった二人。
白雪に半分誘われてのR18です。白雪ははじめてという設定になっています。
***
「今日はもう終わりにしていいわ」
ガラクが白雪に声をかけた。
「もうですか? まだお昼前ですよ」
これからお昼に行っていいと言われるならともかく、白雪はこんなに早く仕事を終わらせていいと
薬室長に言われるなんて思ってもみなかった。
「予定より早く仕事が進んでるし、最近、白雪君はずっと薬室に詰めっきりだったしね。それに……」
ガラクが無言で窓の方をペンで指した。窓枠から、第二王子らしい頭が見え隠れしている。
白雪はその頭をみて溜息をつく。
「あの、ゼンのことは気にしなくていいです。今日、お昼休みにちょっと会う約束をしていただけですから……」
苦笑いを含めてガラクに説明する。
「本当にいいですよ白雪さん」
低い位置からの声に白雪は振り向く。リュウが床で書き物をしながら言った。
「白雪さん、この前の休日も返上して働いていたし、今日はもう僕たちがやっておきますから大丈夫ですよ」
「でも……」
申し訳ないなという気持ちがある白雪は、ガラクとリュウの言葉を素直に飲み込めない。
「白雪さんは気づいていないと思うけど、ゼン殿下の頭、30分以上前からそこの窓枠に見え隠れしてましたよ」
「えっ!」
もう一度窓枠を見る。そんなに前からあの場所にいて、薬室長もリュウも気づいていたということだ。
「すみません、お気を使わせてしまって……。あの、じゃあお言葉に甘えます。今日は失礼致します」
白雪は林檎頭を深々と下げて、薬室を後にした。
「ゼン!」
薬室の窓枠に寄りかかっていた第二王子の名を大きな声で呼ぶ。
「ああ、白雪終わったか。早いな」
第二王子は穏やかな笑顔を向ける。白雪の顔を見れて安心した表情である。
「いつから待ってたの?」
「5分くらい前かな?」
とぼけた表情でゼンは言う・
「嘘! 30分以上前からゼンがそこにいたって薬室長とリュウに言われたよ。
みんな気を使っちゃうから外で待ってないで!」
白雪が必死で言う。
「ははは、ばれたか。天気が良くって外が気持ちよくてなー。
ここなら仕事をしている白雪の声も聞けるし、いい場所だったんだけどなー」
あたたかな太陽がゼンを見守りつつ照らしていた。風も爽やかで確かに気持ちいい場所であった。
「今日はもう仕事が終わりになったの。この前休日返上で働いたその代わりで」
白雪は、今日の午後はもう暇であることを伝える。
「本当か、白雪!」
ゼンは目を輝かせる。
「うん」
「俺も午後は暇なんだ。じゃあ、湖にいかないか?」
「湖?」
白雪は首を軽くかしげる。赤い髪が合わせて微かに揺れる。
「ああ、王宮から30分ほど行ったところに、少し大きな湖があるんだ。ちょうど今の時期、
気候もいいし、水も澄んでいて綺麗だぞ。天気もいいし、行かないか。二人きりで」
二人きりという言葉に、白雪の頬は少し赤くなった。
こんな機会滅多にない。白雪は二つ返事でOKした。
軽く昼食を済ませた後、出かける準備をして王宮を後にした。二人きりと言っても、
湖でだけ二人きりという意味で、行き帰りはミツヒデ、木々と一緒だった。
一国の王子を護衛なしで行かせてもらえるわけがない。白雪はミツヒデの馬に乗った。
それをゼンは恨めしそうに見ている。
「では、夕方、暗くなる前に迎えに来ます」
ミツヒデと木々は、仕事があるからと言って一度王宮に戻った。
迎えに来るのは約2時間後。たった2時間であるが、白雪と二人っきりで過ごせるこの時間は、
一国の王子にとって貴重なものだった。
湖は透明度が高く、周りの新緑を反射してエメラルドグリーンの輝きを放っていた。
気候がよいこの時期は、家族連れやゼンと白雪たちのようにカップルが何組も美しい景色を楽しんでいた。
「綺麗。王宮から少し離れただけでこんな場所があるんだね」
白雪は初めて見るこの景色に感動する。
「冬は凍ってしまう湖なんだ。真夏だと何時間もいるには暑いし、水の色も少し濁る。
新緑が美しいこの季節が一番綺麗なんだ、この湖は」
ゼンが説明する。白雪は嬉しそうにうんと頷く。二人は湖のほとりに並んで腰を下ろし、
とりとめのない話をした。時々手を握ったり、軽くキスをしたりと……、
王宮では過ごせない時間をすごしていた。
1時間半ほど過ぎたころであろうか。少々冷たい風が赤い髪を揺らした。
空も厚い雲がたちこめ、暖かく二人を包んでいた太陽を隠す。辺りはすっかり暗い感じになった。
すると、雨がぽつりと白雪たちの頬に落ちた。耳を澄ますと遠くでゴロゴロ雷鳴の音がした。
「これは一雨くるかもな。仕方ない、帰る準備をしよう」
「うん」
ゼンと白雪の手を引き、急いで馬のところまで行った。馬まで辿り着いたときには
しとしと雨は強く降り始めていた。雷の音もどんどん大きく、近くなってくる。
このまま森を抜けて帰ろうとするゼンを白雪は止める。
「待って。雷がどんどん近づいてきているから、森の中を今駆け抜けるのは危ないかもしれない。
今はひとまず湖のほとりの小屋に避難しよう」
森に薬草をしばしば取りに行く白雪は、王宮育ちのゼンより、今何が安全かわかっている。
ゼンと白雪は湖のほとりに建てられた小さな小屋に向かった。小屋の中には同じように
考えた人たちが何人も集まっていた。
雷はどんどん大きな音を立てて近づいていた。稲妻のすぐあとに激しい雷の音がする。
すぐ近く、いや頭上に雷がいるようだ。小屋の中の人たちは雷の音に緊張し、身をすくませていた。
森育ちの白雪も、雷のこの大きな音に慣れるわけがない。ゼンの手を握る手に力が入る。
小屋の窓が一瞬銀色に光った次の瞬間、
『ドン、ガラガラガッシャーン』
「きゃあああ」
小屋の中に悲鳴が響く。近くに雷が落ちたらしい。小屋は無事である。
しばらくすると、雷の音が小さくなっていった。どうやら雷は遠くの方へ行ったらしい。
「森のどこかに雷が落ちたみたいね。ああ、怖かった」
白雪は胸をなでおろす。
「ああ、本当に。どの辺に落ちたんだろうな。帰り際に見てみよう」
ゼンと白雪は小屋の外に出る。雨はもうほとんど止んでいた。馬で帰路である森を進んでいくと、
数十人の人々が固まっている場所に行きついた。
馬から降りて人々をかき分けていくと、大きな木が倒れていた。さっきの雷はここに落ちたらしい。
運の悪いことに倒れた木は近くを流れる川にかかる橋の上に倒れてしまっていた。
さほど大きな川ではないが、先ほど降った雨で川の水かさが増し急な流れになっている。
橋なしで渡るのは不可能なようだ。
「ゼーン、しらゆきー」
川の向こう岸から二人の名前を呼ぶ声がする。ミツヒデと木々だった。
こちらへ迎えに来る途中、同じく雨と雷にあったらしい。
「こっちは無事だ。橋はこのままだと帰れそうにないなー」
ゼンがミツヒデたちに向かって叫ぶ。ミツヒデは困り顔である。
あと1時間ほどで夕暮れだ。雷が落ちた木をどかして川が渡れるようにするまでには
多分真夜中になってしまうだろう。それに水かさも増しているので今、この川での作業は危険である
。二次災害にもなりかねない。ゼンはこれから泊まるところを探すと、川の向こうにいるミツヒデに説明する。
最初ミツヒデはそんなのはダメだと言っていたが、川を渡る方法が今はないとわかると、しぶしぶ承諾した。
王宮には無事であることは伝え、早い橋の普及をするように伝えた。
「あいにく、先ほどの雷で満室で……」
「橋が渡れないので今日はお客さんが多くて」
宿探しをはじめたゼンと白雪は、周辺の宿に2件続けて断られた。
王子である権力をかざせば部屋くらいなんとかなるかもしれないが、
王子という名前の権力で無理やり得たものは後で何か悪いものにつながる可能性もある。
身分は伏せてなんとか宿を探したかった。
3件目を回る。先ほどの2件よりも、小奇麗なところだった。少々値段が高そうだ。
「一部屋だけなら空いております」
「一部屋……もう一部屋なんとかならないのか?」
ゼンは宿の主に頼み込む。
「あいにくこの雨でほかの部屋はもう埋まっているんです。シングルのお部屋ですが、
簡易ベッドをもう一台用意して仕切りもつけますので……」
うーん、とゼンは考え込む。
「そのお部屋でお願いします」
考え込むゼンをよそに白雪は返事をする。
「おい、いいのか? 同じ部屋なんて」
驚くゼンに白雪は頷く。
「だって、どこの宿もいっぱいだったし、このままだと野宿になっちゃうよ。
さっきの雨で地面もぬかるんでるし、やっぱり野宿はつらいよ」
「でも……」
ゼンはまだ煮え切らないらしい。
「私は大丈夫。簡易ベッドでも床の上でのどこでも寝れるから!」
白雪はたくましくガッツポーズし、ゼンに笑顔を向ける。
「そういうことじゃないんだが……」
第二王子は静かに溜息をついた。
「じゃあ、お部屋を用意しますのでしばらくお待ちください」
宿の主は二人を見てクスクスと笑っていた。
通された部屋は小奇麗な部屋であった。もちろん王宮には負けるが、
多分ここは周辺の宿より値段が高い宿なのだろう。だから一部屋とはいえ空室があったのだ。
備え付けのベッドはしっかりとした綺麗なベッドであったが、用意された簡易ベッドは備え付けのものよりだいぶ見劣りする。
荷物台の上にクッションを置いただけの本当に簡素なものであった。
二人は交代で湯を浴びた。少々雨にも濡れたので湯が浴びれたのは嬉しかった。
ゼンが湯から戻ると白雪は宿に備え付けのワンピース風の寝間着を着ていた。
真っ白な薄手の素材である。
白雪は窓辺で雨に濡れた服を乾かしていた。
「あ、ゼンの服も貸して。濡れたから乾かすね」
白雪はゼンの手に持っていた服をもらい、窓に乗り出すようにしてゼンの服を乾かす。
白いワンピース風の寝間着は、光にかざすと体のラインがくっきりと出ていた。
腰から足にかけてくっきりと体のラインが強調されている。ゼンの心臓はドキッと鳴り、
思わず無言で白雪を見つめてしまう。
「どうしたのゼン……?」
無言で立っているゼンを不思議に思い、白雪は近づく。今度は正面から見ると、
胸のあたりが透けて見えるような気がした。思わず白雪から目を背ける。
「な、何でもない。明日も橋がどうなってるかわからないし、早めに寝るか!」
なるだけ白雪の方を見ないようにして言った。
「そうだね」
白雪は簡易ベッドに当然のように近づく。
「おい、なんで白雪がそっちなんだ。俺が簡易ベッドで寝るよ」
ゼンは白雪の腕を軽くつかんで止める。
「え、だってゼンは王子だし……。私は簡易ベッドで充分だよ」
「女の子を粗末なベッドで寝かせるわけにはいかない!」
「そんな、私は大丈夫だよ。床でも平気なくらい。ゼンは私たちの主人だし、いい方のベッドで寝て。ねっ?」
「いいや、ダメだ」
「こっちだって、ダメだよ」
両者真剣で一歩も譲らない。沈黙が流れる。
「じゃあ、一緒に寝るか」
沈黙を破ったのはゼンだった。
「えっ?」
白雪は予想外だったのであろう。目を丸くする。
「いや、冗談だ。嘘だよ。とにかく俺が簡易ベッドで寝るよ」
言った自分で恥ずかしくなった。確認しなくとも自分の顔が赤くなっているのがわかった。
白雪に背を向け簡易ベッドへ行こうした。
「いいよ。一緒に寝よう」
白雪の言葉にゼンは固まった。
振り向くと、うつむき加減の白雪が顔を赤らめて立っていた。
「え? 白雪、本気か?」
白雪の顔を覗き込む。更に顔が赤くなり、髪の色に近づいたような気がした。
「うん、そういう方法もあるし、ベッドも普通のシングルベッドより広そうだから二人で寝ても大丈夫かなって思って……」
「わかった。何もしないからな、白雪」
ゼンは自分に言い聞かせるように言う。
「うん」
少々の戸惑いはあったが、二人は同じベッドに入ることにした。
二人はベッドに入ると、予想外に白雪はゼンにぴったりくっついてきた。
最初正面を向いて寝ていたゼンに腕を絡めて顔を埋めてくる。腕枕をすると、
ゼンの首のあたりに顔をしっかり寄せてくる。白雪の吐息を首筋に感じる。
先ほど透けていた白い寝間着姿を思い出す。その体がすぐ隣に寄り添っていると考えると、
体のある一点に血液が集中してくるのをゼンは感じた。
「ダメだー! 限界だ。これ以上我慢できない」
ゼンは勢いよくベッドから起き上がる。腕枕をほどかれた白雪はびっくりして彼を見つめる。
「ごめん、やっぱりこの状況は我慢できない。俺が簡易ベッドで寝るよ」
ゼンは白雪を残してベッドから降りた。簡易ベッドの方へ行こうとすると、背中を引っ張られた。
「……我慢しなくていいよ」
背中から、白雪の震える声がした。背中のシャツが強く握られているのを感じる。
――そういうことは結婚してからと思っていた。
だが、身分の違う白雪と必ず結婚できるという保証はない。
このままの関係をずっと続けていたとしても、王宮でこんなふうに二人きりになれる夜がまたあるとは限らない。
こんな機会は滅多に、いや、万が一結婚を反対されて離ればなれになるようなことがあったら、もうないのかもしれない。
先ほど何もしないと言い聞かせていた気持ちが揺らぐ。
「いいのか?」
しばらくの沈黙の後、白雪に背中を向けたまま言った。
「うん」
白雪のか細い声が聞こえた。
振り返ると、赤い髪と同じくらい真っ赤な顔をした白雪がベッドに座りうつむいていた。
頬に触れこちらを向かせると、緊張した面持ちでゼンを見つめる。
「我慢しなくていい」白雪の言葉がよみがえる。髪も顔も林檎のようになった白雪に、
口づけをしようとすると、直前で白雪は目を閉じた。高ぶる気持ちを極力抑え、そっと口づけをする。
白雪もそれに答えるように軽く唇を開く。その小さな隙間に舌を入れると、「んっ」と小さく白雪の声が漏れる。
ゆっくりベッドに倒れこみ、唇から白いうなじへと辿る。肩と二の腕に触れ、そのまま胸に手を置く。
白雪の体が一瞬ビクッとなったが、抵抗することはない。ゆっくりと白い寝間着を脱がすと、
先ほど透けていた胸元そのものが目の前に現れた。想像よりも大きな胸で綺麗だった。
白雪は恥ずかしさのあまり両手で胸を隠そうとするが、ゼンがそれを遮る。
「よく見せて」
そう言った次の瞬間には、桜色の頂に唇を触れていた。もう片方の胸をゆっくりと揉む。
特別大きいわけではないが、片手から充分にはみ出していた。
「ああっ!」
白雪は目を閉じたまま喘ぐ。腰のあたりに触れると、更に白雪の体はビクッとなった。
ウエストはこんなに細いのに、胸はしっかりとある。その柔らかな感触をゼンはしばらくの間堪能する。
やがてゆっくりと、腰よりも下部に手が伸びてゆく。内股に触れ、そっと白雪の秘所を触ると指が潤った。
「すごい、濡れてる」
白雪の秘所は透明な糸を引く愛液で満たされていた。「やめて」と小さく吐息を吐く白雪をよそに、
ゼンは白雪の両脚を開き、その間に顔を埋める。
「ああっ」
白雪が少々大きく声をあげたが、そのまま舐め続けた。
秘所の奥の方からどんどん愛液が流れ出てくるのがわかった。
割れ目に指をそらせ、中指をそうっと膣の中に入れる。中も十分に潤っている。
「ひゃあああ」
聞いたことのない白雪の声がした。苦痛なのだろうか。顔を歪ませている。
「痛いのか? 大丈夫か?」
その問いに大丈夫だと返事がある。ゼンは再び白雪の上に覆いかぶさり、そっと口づけをする。
「ほら、俺のもこんなになってる」
白雪の手を、ゼンの中心にある肉棒に触れさせる。肉棒に振れた手は驚きのあまり一瞬、手を離す。
「こんなに大きいの……?」
白雪はまっすぐにゼンを見つめる。
「嫌か?」
白雪は首を振る。
ゼンは白雪の両脚を抱え、その中心に大きくそそり立った肉棒をあてがった。
そのまま、愛液で満たされた内部に進もうとしたが、固く閉ざされ前には進めなかった。
「痛っ」
白雪は苦痛そうに声を上げる。愛液で充分満たされているはいるが、
先ほどすんなり入っていた指も入らなくなっていた。緊張で入口は固くなっていたのだ。
何度か試みたが、白雪が痛がって挿入できなかった。
「ゼン……」
白雪が呼ぶ。
「なんだ?」
「自分からいいって言ったのにごめんね」
瞳が潤んでいた。なんとも可愛く愛おしい。ゼンはやさしく赤い髪をなで、そっと口づける。
「気にすることない」と耳元で囁き、少し深呼吸するように言った。
再び白雪の中心に指で触れる。相変わらず愛液で満たされている。
指を入れると1本、もう1本飲み込んでいった。そうっと指を引き抜き今度はゼンの欲望をあてがう。
「もう一回、深呼吸して力抜いて」
白雪は目を潤ませながら、言われた通りにする。
――次の瞬間、ゼンの欲望の塊を一気に白雪の最奥まで押し込んだ。
「あああああっ!」
白雪が声をあげ、顔を歪ませる。
「大丈夫か? 入ったよ。このまま動いてもいい?」
目を閉じたまま白雪はうんと頷くと、ひとつ深呼吸した。力を抜いたほうがいいとわかったらしい。
ゼンはゆっくりと、白雪の様子を見ながら腰を動かし始める。入口まで引き抜いては最奥まで突き抜く。
部屋には秘部がこすれあうグチョグチョとした音が動きにあわせて響く。徐々に動きが速くなってゆく。
白雪もゼンの動きに答えるように腰を動かす。
ゼンは白雪に唇を重ねる。白雪も答えるようにゼンの首にしがみつく。
唇を離すと、ゼンは「いくよ」と声をかける。次の瞬間、腰を大きく動かし、白雪の最奥に肉棒を突きつけた。
「あっ…あぁ…んっ!」
白雪の中がゼンで満たされる。ゼンは白雪に覆いかぶさったまま息を整える。
二人は無言でしばらく見つめあう。
疲れ切った二人は、そのまま深い眠りに落ちていった。
雷のおかげでこんなことになろうとは。エメラルドグリーンの澄んだ湖を眺めていたときには、今晩のことは想像もしなかった。
***
翌朝、雷で倒れた木はどかされ、橋は元通りになっていた。
ミツヒデ、木々が橋まで迎えに来ていた。
「ゼーンー、遅いじゃないか。何してたんだ」
疲れ切った様子のミツヒデが主人に愚痴をこぼす。
どうやら、昨日の夜はゼンが帰ってこなかったことで、ハルカ公爵などお偉いさんに
みっちりと怒られたらしい。表情はげっそりとしていた。
「すまない。宿が空いてなくて、少し遠くの宿に宿泊していたんだ。遅くなって、心配かけて悪かった」
実は昨日のことで少し寝坊したことが原因であったが、口が裂けても言えない。宿が見つからず、
少し遠く宿に泊まったのは事実だったのでそのせいにした。
「でも、二人とも無事でよかった。あれ? 白雪どうかした? 元気ないみたいだけど……」
木々が、ゼンの馬の前に乗っている白雪に元気がないことをすぐさま察知する。
「あ、心配おかけしてすみませんでした。大丈夫です」
なんとか笑顔で答える。
白雪は、実は朝からあまり喋らない。話しかければ笑顔で答えるが、
昨日のことがあったせいか朝からぼうっとしている。それを感のいい側近にばれやしなか、ゼンは冷や冷やしていた。
「ゼン、王宮に戻ったらハルカ公爵から怒られること覚悟しておくように」
ミツヒデは王宮が昨晩どれだけ騒ぎになっていたかを説明する。
「白雪、色々な人が色々なこと言うと思うけど、気にしない方がいいよ」
木々が穏やかに笑顔を向ける。
「おい、どうして俺と白雪ではそんなに態度が違うんだ」
側近のかける言葉に主人は納得しないようである。
「だって、ゼンから湖に行こうって誘ったんでしょ。大人しく王宮にいれば
こんなことにはならなかったんだし……ねえ、白雪?」
「こ、こんなこと!」
木々の言葉に白雪は顔を赤らめる。その言葉に反応しないで欲しいと思ったゼンは、
側近たちの一番前に馬を進め、白雪の林檎のような顔が見られぬよう、元に戻るのを待った。
王宮に戻ると、ハルカ公爵の仁王立ちのお迎えがあった。すぐそばにオビもいた。
「ゼン殿下!」
馬から降りたゼンにハルカ公爵の雷が落ちる。本当の雷は、昨日の木じゃなくって、
こちらなのかもしれない。そう思いながら、すまなかったと何度も詫び、なんとかこの場をやり過ごそうとする。
そんなとき――
「お嬢さん、どうしたんですか?」
馬から降りた白雪は、数歩歩いたところで、ヨロヨロとしゃがみ込んでいた。それをオビに支えられる。
「どうした白雪!」
ゼンは駆け寄り、オビから白雪の腕を奪う。
「なんか急にいろいろ筋肉痛で……あと、馬に揺られたのもちょっと……」
他の人には聞こえないよう、ゼンの耳元で囁く。白雪のその言葉を聞いたゼンも少々顔が赤くなる。
「内緒話ですか? お二人さん」
オビが二人に声をかける。
「いや、ちょっとな……白雪は具合が悪いんだ。なので俺が送っていく。
というわけでハルカ公爵またあとで」
上手く逃げたなぁ〜と側近たちは思った。だが、感のいい側近たちは同時に
二人の間に何あったと悟らずにはいられなかった。
♪おわり