夢の雫、薔薇色の烏龍
(ゆめのしずく、ばらいろのウーロン)
2016年7月号サイドパロ
反旗を翻したアフメットを治めるため、エジプトに同行したラムセス。
エジプトの地に踏み入れたら、いきなり古代に戻ってしまうのではないかとビクビクしたが
そんなことはなかった。
熱い太陽と乾いた風は古代から変わらない。懐かしい風景であったが、
今はイブラヒムと共にこの戦争を早く終わらせなければならない。
ラムセスはイブラヒムに様々な案を出して彼に協力した。
そんな時、イスタンブルのメフメトからイブラヒムとラムセス宛てに1通の手紙が来た。
「先に読んでいいぞ、ラムセス」
「ああ」
ラムセスはお言葉に甘えて先に読むことにした。書簡から手紙を出し読み始める。
「でえええええ!」
しばらくすると、ラムセスは大声で叫び始めた。
「どうした?」
「メ、メフメトとシャフィークは、ヒュッレムの皇子が即位するためには、
ライバルのムスタファ殿下にも命令があれば手をかけると……」
ラムセスは真っ青な顔で手紙を読み上げる。
ムスタファ皇子とは剣の稽古もしていて餞別ももらった仲である。
利発で賢くてそして素直で……本当によい皇子だ。情も移っている。ムスタファ殿下を暗殺など
ラムセスにとっては考えられない事だった。
「……」
イブラヒムは厳しい目つきで無言になる。ヒュッレムの産んだ皇子のほうがやはり大切なのだろう。
ラムセスは続きの手紙に目を落とす。
「ああ、そうか……よかった」
ラムセスは続きをよんで安堵の溜息を漏らす。
「どうしたんだ?」
イブラヒムが不思議そうにラムセスを見つめる。
「ムスタファ殿下は殺さないって」
「え?」
「ヒュッレム様が、邪魔な者は殺さないで後宮でいきたいというお考えだそうだ」
手紙から顔を上げてイブラヒムを見つめる。最初、意表を突かれた表情であったがイブラヒムであったが、
次に優しい笑顔になった。
「さすがは大宰相イブラヒム様が献上した妃だ!
ラムセスは嬉しそうに頷く。ムスタファ殿下のこれからの命が保証されたわけではないが、
身内が手をかけないと分かっただけで安心した。
「他にも、メフメトはヒュッレムの産んだ皇子メフメトと同じ名前でややこしいから、
ソコルル・メフメトって呼ばれることになったって書いてあるぞ。ソコルル・メフメトか。
ソコルル、ソコルル……ちょっと言いにくいな……」
ラムセスはブツブツ独り言を言いながら、次にメフメトに会った時に
ちゃんと呼べるよう練習をしていた。
♪おわり
【感想】
今回の夢の雫はヒュッレム第二子懐妊で終わってましたね。
これからドロドロしてくるのかな? もう少しイブラヒムはエジプトにいるのかな?
史実では、イブラヒムは豪華なエジプト風の衣装をまとって民衆の前に姿を現すパフォーマンスを
したそうです。そのシーンは出てくるかな? 次号を待つばかり。