地獄でのウルヒ
 天国3丁目のバス停を出発したウルヒは、数時間バスに揺られて
地獄1丁目についた。
 やはり地獄は、天国のようにあたたかくキレイな花が咲き乱れている
場所ではなかった。暑く、ムシムシし、草木など一本も生えていない
寂しいところであった。
 ウルヒはバスの中でおばちゃんにマントをもらった。
おばちゃんはすっぽんぽんの彼の姿に見かねたのだ。
しばらくもらったマントを羽織っていたが、地獄におりた途端、
むせかえるほど暑かったので、やはり元のハダカに戻ってしまった。
「ほぉ〜ここが地獄かぁ〜」
 ウルヒはきょろきょろしながら歩いた。
 しばらく歩くと、前方に人だかりが見えた。なんだろうと思い
ウルヒはハダカの姿のまま人だかりの方に歩みを進めた。
 人だかりの原因は野外コンサートであった。ピカピカに飾られた
ステージの上にいる人物に、沢山の人々が黄色い悲鳴を上げていた。
 ウルヒはステージの上の人物に目をやった。
 なんと、黄色い悲鳴を浴びていたのはズワであった。1巻でティトを殺し、
皮の大好きなあのズワである。ズワがステージの上に立ってマイクを持ち
ノリノリで歌を歌っていたのだ。その姿にはジャイアンも真っ青である。
「な、なんとあのズワがこのような人気を集めるとは……!
さすがは地獄! 常識では考えられない!」
 ウルヒはすっぽんぽんで呆然としていると、後ろからポンポンと
肩を叩く者があった。
 振り向くと背後にはサングラスをかけた妖しい若作りをした女が立っていた。
「もし、あなた。あなたもズワのようにスターになってみない?
あなたのルックス、プロポーションなら地獄のキムタクになれること
間違いなしよ」
 サングラスの女は
| 地獄タレント事務所 社長 ねね 薔薇ムセス株式会社  | 
    
 
 
 という名刺をウルヒに差し出した。
「わ、私がスターに!」
 ウルヒは天にも昇る気持ちであった(ここは地獄だが……)
 それからウルヒはスターになるためのレッスンを重ね、デビューを
果たし、地獄ドームを満杯にする大スターの道を歩み始めた。
 ウルヒの一糸まとわぬセクシーなダンスとその歌声は、地獄の人々を
魅了し、コンサートのチケットはいつも完売。写真集もCDもミリオンセラー。
空前絶後の地獄のスターとなったのだ。
「ああ、ナキアさま! この素晴らしいウルヒの姿を見てください。
早く地獄にいらして!」
 大スターになってもナキアへの一途な思いは変わらないようである。
 ナキアさん、早くウルヒを安心させてあげてください。
♪おわり