***オチです！***

血液型の検査結果が投票により出た。下敷きになった女官の血液型はAB型のRh（＋）。
　12人の中では、ラムセス、ナキア、ウルヒが適合しているようだ。
「早く俺の中に流れる薔薇色の血を採ってくれ！」
「ワタクシのどくどくしい悪魔の血も採ってもかまわぬぞ」
「たまには人の役に立つこともしましょうか……」
　3人とも、女官を助けるために献血することには同意のようだ。
　ABOとRhの血液型が適合したからといってすぐに輸血というわけにはいかない。
適合血に肝炎ウイルスやHIVウイルスなどの感染症がないかどうかも調べなくては、
命は助かっても後に適合血により感染を引き起こす場合があるからだ。
　3人の血液はすぐに検査にかけられた。
　宮廷付きの検査技師ねね（爆）によると……。
「血液型は適合していますが、3人の血液はどれも使えません。
まずはナキア皇太后。あなたの血は赤ではなく黒い色をしておりました。
その側近のウルヒの血は緑色です。ラムセス将軍の血は赤い色はしておりましたが、
血液の中から薔薇菌が検出されました。このような血液を輸血しても
女官の命は助かりますが未知の感染症に侵される危険があります。
輸血なんてとんでもありません！」
　優秀な検査技師ねねは3人の血液の輸血を拒否した。
「おお、毎日ワタクシは黒い水の味見をしていたからな。それで血液は黒いのかもしれぬ。
仕方ないのう。おーほほほ！」
　ドス黒い心を持つ天河の名悪役は高笑いした。
「フフフ。私の好物はハゥトッサの泉に棲む原生動物ミドリムシ。毎日食べていたから
血液も緑になってしまったのかもしれませんな……」
　さすがはウルヒ！　赤い河に落ちても生き延びていられたのは、池に棲息するミドリムシも
栄養として取りこむことができたからなのか？　ハゥトッサ放射能の雨が降っても、
ゴキブリとウルヒだけは生き延びるであることが想像できる。
「薔薇菌だと？　それは俺の血液にいて当たり前の菌ではないか！
どうして輸血できないんだ！」
　ラムセスは検査技師に向かって抗議した。
「なんの汚れもな宮廷女官に病んだ薔薇菌など入れることはできません。
薔薇ムセス後援会にはいっているならともかく……」
　検査技師も女官のためを思い負けてはいない。
「そうだなぁ。これ以上、天河ファンに薔薇菌が巻かれたら、たまったものじゃないぞ！」
　カイルも検査技師の意見に賛成のようだ。
　カイルが賛成したのはいいが、女官に輸血できる適合血がなくなってしまった。
どうすればいいのか？！
「困ったわね。このままじゃ、女官が出血多量で死んじゃうわ。どうしましょう！」
　ユーリも適合血がなくなったことでオロオロしている。
「本当だな。困ったな。またこれから他の者を検査（投票）するわけにもいかないし」
「そうですね、陛下。検査（投票）するには時間がかかりすぎます」
　カイルの忠臣キックリをはじめ、真面目なA型側近は頷いた。
「諦めることはありません。ミッタンナムワさんがO型です。彼の血球成分だけを
輸血すればいいんです！」
　自称優秀な検査技師は落ち込んでいるみんなに希望の声をかけた。
「ミッタンナムワって……、血液型が適合していないじゃないか。
輸血副作用がでるんじゃないのか？　全く、検査技師のくせにアホだな！」
　蜂蜜色の肌に埋まっているオッドアイが、バカにするようにアホな検査技師を見た。
「検査技師じゃなくって、あなた兼詐欺師なんじゃないの？」
　皇帝側室の黒い瞳も疑い深げに一緒に見つめる。
「いえ、違います。血液っていうのは、血球成分と血清成分に分かれるんです。
この下の表を見て下さい」

「ここで血液を味噌汁に例えましょう。味噌汁を放置しておくと味噌や麹は下に沈み、
上澄みができますよね。味噌や麹は重たいので下に沈みます。この沈んだ味噌や麹が血球です。上澄みが血清。
血球中にはA型物質またはB型物質が、血清中には抗A抗体または抗B抗体をが含まれています。
A型物質は抗A抗体と反応して副作用を起こします。表をご覧になるとわかるように、
自分の持っている型物質に対する抗体は持っていないことが原則となっています。
O型は血清中に抗A抗体と抗B抗体の両方を含むため、血球にはA型物質もB型物質もありません。
O型の血球成分のみならAB型の女官に輸血しても大丈夫なんです」
　カイルをはじめ、側近達はよくわかる（？）説明に頷きながら聞いていた。
「じゃあ、ミッタンナムワの血球のみなら輸血しても大丈夫ってことね！」
　希望の光が見えたユーリは元気な声になった。
「幸い、ミッタンナムワさんの血液からは感染症は検出されていません」
　ミッタンナムワの方を見つめながら言う。
「人のためになるなら、どうぞ、ガンガンお採り下さい」
　筋肉質の腕をミッタンナムワは差し出した。

　ミッタンナムワの血液が採血され、無事女官に輸血された。
なんとこの女官と思っていた人物。実はアルザワのアレキサンドラ王女だったのである。
　ユーリに会いたいがために女官に変装していたのだ。
　優秀な？（爆）検査技師とミッタンナムワと投票してくださった皆さんのおかげで
ヒッタイトとアルザワの友好にヒビが入らずにすんだようである。
　アレキサンドラ王女といえば……。
　ミッタンナムワと一心同体になってしまったことがちょっと不満であった。

♪おわり


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　ちょっと思いだしたことなんですけれど、ABOの他にも人間にはたくさんの血液型があって、
その中にＤｉａｇｏ式血液型という黄色人種に特殊な血液型があるんです。
黄色人種にＤｉ（a）の陽性率はすごく高いけど、白人にはDi（a）は０%だといいます。
ユーリは黄色人種なので、ヒッタイト人やエジプト人とはABOは適合しても
Di型は合わない確立が高いのかも。などと細かいことまで考えてしまいました。
えっ？　そこまで考えるなって？（笑）
　ちなみに上の表は間違いではない……と思う。
O型の血球のみなら万能血ということになります。（あまりよくないらしいが）
　その他にも輸血の知識として、一般に検査する血液型は赤血球の型であり、
白血球の血液型は合わせていないんです。白血球の血液型はHLAと言われ、赤血球よりもっと複雑です。
現代、白血球による副作用、GVHD（移植片対宿主反応；輸血された白血球が患者の組織を
異物と認識して攻撃してしまう反応）という作用が問題になっており、それを防ぐために血液に放射線をかけて
白血球の抗原性を殺してから病院では血液を使用しています。
放射線をかけるって……、私もはじめにきいたとき「いいの？」と思いましたが
そのほうが安全のようです。
　ではでは、余談はこのへんで。(^_^)/~

優秀な（爆）検査技師ねね

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