暁に立つライオン
2003年5月号続き


 危うく炎にのまれそうになったところをヒューリエットのトルコ人、
アルプに助けられたえりな。えりなは、彼にかくかくしかじかとと事情を話した。
二人はとりあえず、バスが止まっている休憩所に戻った。
 すると、先ほどはなかった大型の観光バスがあった。
バスのまわりには、えりなと同じ肌の色、髪の色をした人々が数十人群がっていた。
イスタンブールと違って、トルコ内陸部へ行く観光客はあまりいないから、
かなり目立った騒がしい集団だった。それも、みんな女性ばかり。
一見若そうに見えたが、よく見るとえりなよりも随分年上のようだ。
それに、集団からはただならぬオーラが立ち上っている。ただならぬ年輪を重ねていそうだ。
「天河ツアーのみなさ〜ん、おトイレは必ずこちらで済ませてくださいね。
もうこの先ホテルに着くまでおトイレはありませ〜ん」
 えりなの耳にすんなり響く言語。日本語であった。
どうやらこの集団は日本からのツアー観光客のようだ。添乗員と思われる
女性が妖しげなオーラを放つツアー客の世話をしている。
「わたしもトイレに行っておこう」
 サフランボル行きのバスに乗る前に、えりなもトイレへ向かった。
トイレを出て、ミネラルウォーターを買うために併設していた小さなお店に寄った。
チャイなどのおみやげ品も少々置いてあり、トルコのお菓子も置いてあった。
その中に、えりなにも見覚えのあるお菓子があった。青いパッケージに
こげ茶色のクッキーの写真。トルコ版『オレオ』である。
「オレオだ!」
 えりなはミネラルウォーターと一緒にオレオを買った。
 お店を出ると、目の前のバスがエンジンを震わせていた。出発しようとしていたのである。
「きゃー待って、乗ります!」
 えりなは日本語で叫び、バスの後方扉に向かって走っていった。
 なんとかバスに乗り込み、あいている席に腰掛けた。
「みなさ〜ん、オトイレはちゃんとスマセマシタカ?」
 バスの前方から声がした。運転席の隣に、金髪のトルコ人が笑顔で
マイクを握り立っていた。
「まだまだこれからバスに乗って行きマ〜ス。がんばりマショウ。
みなさ〜ん、アーユーレディ?」
「ごーごー」
 やる気のなさそうな声がいくつか車内から返ってきた。
えりなは何かおかしいと思い車内を見回すや否や、彼女はハッとした。
イスタンブールを出たときと、一緒に乗っているメンバーが違う!
回りは日本人ばかりだった。えりなと同じ肌の色、髪の色をしている
妙なオーラを持った女性たちがたくさん座っていたのだ!
「みなさ〜ん、元気ないですネー。はい、もう一度。
これからヨズガット、ハットゥサに向かいますよ。カイルに会いに行きます。
アーユーレディ!」
「ゴーゴーッ!」
 カイルという言葉を聞いた途端、疲れた表情をした日本人たちの表情は
急に明るくなった。威勢の良い掛け声をトルコ人のガイドに向かって叫んだ。
「バ、バスを間違えたわっー! きゃあああ!」
 えりなは、席を立ち、窓ガラスに張り付いた。
彼女は、休憩所に居合わせた天河トルコツアーのハットゥサ行きのバスに
乗ってしまったのだ。
 窓から見える休憩所には、先ほどえりなを助け出したアルプが、うろたえていた。
「アルプスさ〜ん、たーすーけーてぇー!」
「オレはハイジじゃねぇ〜!」
 えりなが誤って乗ってしまった天河ツアーのバスは、みるみるアルプの姿を
小さくし、そして消してしまった。
 呆然としているえりなの肩をトントンと叩く者がいた。
「日本の100円ショップでなつめの蜂蜜漬けが売ってたんです。おひとつどうぞ♪」
 オレンジ色のパッケージされた袋に、干したプルーンを二周りくらい小さくした
お菓子を差し出された。
「あ、どうも……」
 えりなはそのうちの一つをつまんだ。なつめの蜂蜜漬けを持った女の
Tシャツに目がいった。『NENE』と書いてあった。えりなはふっと我に返る。
「こんなの食べている場合じゃないっー! サフランボルがァ〜」
「どうしたの? さあ、いよいよ明日はハットゥサよっ! 今日の夜は
色紙の撮影会に天河すごろくよ! あなたも仲間に入れてあげるから!」
 NENEなる人物がオタクパワーをメラメラ沸き立たせていった。
「作品が違うのよ〜。ついでに掲載誌も違うのよ〜。たーすーけーてー」
 泣き叫ぶえりなを乗せ、天河ツアーのバスはヨズガットへ順調に向かう。
えりな、天河トルコツアー4日目から特別参加である(笑)。




***

 約一年ぶりの続きパロです。続きパロ書こうかどうしようか迷ったのですが、
やってみました。まだ登場人物がどんな人々か全くつかめないので、
本当に迷ったのですが、ツアーに行ったことをネタにして書いてみました。
 今回出てきたバスが休憩したドライブインみたいな場所。
私たちもカッパドキアからヨズガッドへ向かう途中寄りました。
本当にあんな感じの場所で、みんなでトイレに行き、お店では本当に
オレオが売っていて、休憩したあとヨズガットへ向かいました。
 作品中のトルコの景色もなつかしいです。まずはトルコ航空の飛行機。
トルコマークそのまんま〜。そうそう、これに乗ったのよ!
 ツアー6日目のボスボラスクルーズ。こんな景色あったあった。
古風だけど豪華な洋館の建物がボスボラス海峡沿いに並んでいました。
 256Pのえりなの顔がドアップの見開き。橋が大きくかかっていて
イスタンブールの景色が広がっていて……あの景色のイメージ、
そのままクルーズで見ました!ボスボラス大橋の下を渡ったとき、
「橋がでっかーい!」と思いながら首を90度曲げて口をポカンとあけて見ました。
見た景色そのままのイメージを思い出させていまう篠原先生って
改めてすごいなァと思います。
 イスタンブールをはじめ、トルコの景色もすごく細かくて、
先生やアシスタントさんご苦労なさったんだろうなぁと思います。
トルコで見た景色が半年以上たった今でも鮮明に思い出されてツアーの
感動再びって感じです。どうも、ハンカチ噛み噛み組の皆様、浸っていて
すみません。先生の作品じっくり読み込んで、いつかはトルコに行きましょう!

 それと今回出てきた『サフランボル』。旅行記には載せなかったけど、
やっぱり!の気持ちが大きかったです。
ツアーの夕食会で、「先生、この後どちらにいかれるんですか?」と
たずねたら、「サフランボルへ」とお答えになっていたので、心の奥底のノートに
メモっておいたんです(笑)。夕食会が終わった後、サフランボルを
ガイドブックで確認したけど、1ページくらいしか載っていなくて「う〜ん」と悩んでいました。
現代モノのサスペンス。篠原先生のスリルは久しぶりで楽しみにしております。
ドキドキの展開待っています。

 最後に、篠原先生の新連載が見たいがためBetsukomi買ってしまったそこのあなた!
アンケートハガキ切り取って、『暁に立つライオン』にハナマルつけて
投函するのよ。50円切手も忘れずにね(笑)。

P.S.
BetsukomiのHPに篠原先生のコメントが新しく更新されていますよ〜。
http://www.betsucomi.shogakukan.co.jp/



ライオンなのに何故うさぎ……(笑)



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