8周年記念パロディ
天河版 金の斧、銀の斧


 

むかしむかしアナトリア地方に、ヒッタイト帝国という大きな国がありました。
ヒッタイト帝国の皇帝の名はカイル=ムルシリ。戦いを好まず人民を愛し、賢帝と名高い優れた皇帝です。
 春の日差しが暖かい心地よい日に、カイルはお忍びで妃のユーリ・イシュタルと森に散歩へでかけました。
二人は仲良く手を繋いで森の奥深くへ進んでいくと、湖を見つけました。
水は空の色を映し太陽の光を吸収してキラキラと輝き、美しい湖です。
「わあ、カイル。大きな湖だね。きれい〜」
 ユーリは水辺まで近寄りかがんで水面を眺めました。水面にはユーリの黒い瞳と黒い髪が映し出されています。
するとどうでしょう。風もないのに急に水面が揺れました。水の中の黒い瞳が歪みます。
「きゃあああ!」
 ドブン!
 黒い瞳が映し出された水面は大きな波を立て一瞬のうちにユーリを飲み込みました。
「ユーリ!」
 カイルが叫んだときには、水面に彼女の姿はありませんでした。
「ユーリはどこにいったんだ。すぐに助けなきゃ!」
 カイルは湖に飛び込もうとして上半身裸になると、透きとおった水面がブクブク音を立てました。
空色の水面は大きく揺れ、湖の中から白い衣装をまとった女性があらわれました。
「ナ、ナキア皇太后! 一体泉の中で何をしている!」
 泉の中から出てきた女性はナキア皇太后でした。
「ちょっとした女神のバイトじゃ! それよりおぬしの落とした女はこの金のイシュタルか?」
 ナキアは黄金の輝く豊満な肉体を持つ美女を抱きかかえていました。
「女神? 女神と言うより魔女に見えるが……」
「ええい、黙れ! おぬしの落としたのはこの金のイシュタルかと聞いておるのじゃ!」
 黄金のイシュタルはカイルにウインクをして豊満な体をくねらせた。
「いや、違う。もっと小柄な胸のない黒髪の少女だ。よく知ってるだろうユーリを返せ!」
 ナキア皇太后はニヤリと笑いました。
「おお、なんと正直な青年じゃ。褒美に黒髪のイシュタルをこの黄金のイシュタルと交換してやろう。
感謝するのだな」
 ナキアは豊満な黄金のイシュタルをカイルに投げて、湖の奥底に消えていった。
「おい、ちょっと待った。ユーリを返せ!」
 カイルは必死に叫びましたが、空色の水面は静かに美しく輝いているだけでした。
 成す術もなく、カイルは黄金のイシュタルと一緒に王宮に帰りました。側近に事情を説明し、
泉にユーリを落とし、正直に答えたらこの黄金のイシュタルと交換させられたと告げました。
その報は遠くエジプトにも知れ渡りました。エジプトの貴族、ウセル=ラムセスの耳にも届いたのです
「なあ、ネフェルト。たまには森に散歩にでもいかないか?
「やあよ。なんで兄さまなんかと」
「久々のねねパロなんだ。話に乗らんかい! たまには兄妹で森に散歩もいいだろう!」
「もう、仕方ないわねっ!」
 ラムセスとネフェルトはお供にワセトだけを連れて、森へ散歩に出かけました。
 しばらく森を進むと、大きな湖が現れました。
「わあ、きれい〜」
 ネフェルトが湖に近づくと、ラムセスはこれだ!と思い、彼女の背中を追いかけました。
「ねえ、兄さま。エジプトにこんなところあったんだ」
 ネフェルトが言い終わらないうちに、ラムセスは彼女の背中を押し、湖に落としました。
「きゃあああ!」
 ドブン! 大きな音を立ててネフェルトは湖の奥底に沈みました。
「な、何をなさるんですか! ラムセスさま!」
「まあ、見てろって」
 オッドアイのセピア色のほうを軽くつぶってワセトに笑いかけました。
透きとおった水面がブクブク音を立てました。
空色の水面は大きく揺れ、湖の中からナキア皇太后があらわれました。
「おぬしの落としたのはこの黒髪のイシュタルか?」
 ナキアはユーリを抱きかかえています。
「離して〜、ラムセスでもいいから助けて〜」
 ユーリは必死に彼に訴えます。
「よし、今助けてやるからな! そうだ。俺の落としたのはそのペチャパイ黒髪イシュタルだ」
 ラムセスは満足げにいった。
「うむむ、うそつきめ! おぬしの落としたのは胸だし金髪エジプト娘であろう。罰として
この胸だし金髪エジプト娘は返さん! オタクねねと交換じゃ!」
 ナキアは黒髪だけどブサイクなオタクねねをラムセスに投げました。
「い、いらん。オタクねねならネフェルトのほうがずっとましだ! ネフェルトを返せ〜」
 ラムセスは湖に向かって叫んだが、再びナキアは現われませんでした。
「うふ♪ 人妻だけどよろしくね♪」
 ブサイクねねはラムセスに擦り寄り、ウインクしました。
「うげ〜、近寄るな!」
「まあまあ、ねね’Sわーるど8周年記念だし! 天河の外伝文庫も発売だし!
これからまた薔薇ムセスに登場してもらうかもしれないからさ! 仲良くしようよ!」
「やめろー、人妻なら大人しく家事でもやってろ〜!」
「やだよ」
 ナキアの陰謀にすっかりはまってしまったカイルとラムセス。
ねね’Sわーるどはまだまだ彼ら二人に活躍してもらおうと思っています。


おわり♪