****北風(ラムセス)と太陽(カイル)****
ある昼下がり、北風と太陽が喧嘩をしていました。
どっちが強いのか言い争いをしていたのです。
「オレは、行きたい所へ何処へでも行けるし、自由に動くことが出来る。
オレのほうが、優れている!」
北風ラムセスが得意げに言いました。
「いや、私は草花の光合成を促すことができ、それで大地の草花は生きているんだ。
それに私から出る光には、暖かさ(赤外線)と殺菌効果(紫外線)があるのだ。
私のほうがラムセスなんかより数倍優れている」
太陽カイルは負けずと言い返しました。
「何が紫外線だよ。若い娘たちには お肌の敵だっていやがられているじゃないか。
それに今は温暖化が進んでるんだぞ。ムルシリがジリジリと照りつけるせいじゃないのか?
照らしているだけしか脳のないおまえは単細胞だな!」
「温暖化は私のせいではない。オゾン層の破壊が原因だ。私は 遠くはるか昔から
同じ暖かさで大地を見守ってきたんだ。温暖化が進んでると分かっているなら、
おまえの北風で冷却すればいいじゃないか。それぐらい気を効かせろよ。ラムセス」
・・・とこのように二人の言い合いは全く収まることはありません。
そこへ ある旅人が通りました。まだ若い女性です。名前はユーリ。
「よし、どっちが強いかバトルで決めようぜ。あの旅女のコートを脱がすことが
出来たら勝ちとしよう」
早速ラムセスが、冷たい北風を吹きつけました。
ユーリはブルっ身震いしコートの襟をたてしっかりコートが脱げないようにつかんでいました。
「だめみたいだな。よし今度は私だ」
今度はカイルの番です。カイルは暖かい光をサンサンとユーリに向けて照らしました。
「何?今度はすごく熱いわ。コートを脱ごう」
ユーリはコートを脱ぎました。
得意げにラムセスの方を見て笑うカイルとそれとは反対に、歯を食いしばって悔しがる
ラムセスがいました。
するとどうでしょう。ユーリはコートだけじゃなく、あまりの暑さに
セーター、ブラウス、スカート・・・と脱ぎ始めたのです。
「おい、もっと照らせカイル。それで全部ユーリの着ているものを脱がすんだ。」
「よ〜し、OK。分かったぞ」
さっきまで喧嘩していたはずのラムセスとカイルは今度は協力しあってます。
ユーリはどんどん着ているものを脱ぎとうとう、ヒートテック姿になりました。
「あと一息だ!もっと照り付けるんだ、ムルシリ!!!」
カイルはもっと光を強く照り付けようとしました。すると・・・。
「太陽カイルいつまで 出ているんだ!もう夕方の6時じゃぞ。早く引っ込まないか!!!」
声のする方をカイルとラムセスは見ました。声の主は満月でした。
満月の名前はナキア。満月のクレーターにはうさぎではなくナキアの顔が
浮かび上がっています。
時間をすっかり忘れ、ユーリの着物剥ぎ・・・じゃなくてバトルに熱中していた
カイルとラムセス。カイルは仕方なく 地平線の彼方に沈みました。
「フフフ、夜は魔が強まる時間(とき)、私の支配化の世界じゃ。」
ナキアは不気味に笑い、遠くはるか昔から、夜を制してきたのです。そして今も・・・。
理由はどうあれ、ユーリは 危機一髪ヒートテック姿で留まり、象牙色の肌を公衆の面前に
さらすことは逃れました。ナキアのおかげです。たまにはいいこともします。
カイルは地平線の彼方に沈みましたが、一方ラムセスは・・・?
ラムセスはユーリを裸にすることができず不満盛りだくさんです。
ラムセスはナキアに冷たい北風を一晩中吹きつけていたそうです。
♪おわり