ハルンカップの春子さん
私はハルンカップの春子.採尿容器の紙コップのことよ. 検査室では採尿容器をハルンカップまたはハルンコップと呼ぶことが多いから, この名前がついたの.採尿容器の尿子さんじゃあんまりでしょ.尿のドイツ語, ハルンでかわいらしく呼んでね. 尿検査は,検査の歴史の中でももっとも古く,2400年もの昔、 ヒポクラテスの時代から病気を知る手がかりとして,色や臭い, 量の異常が観察されていたの.古代から尿は健康状態を示す重要なもの として注目されていたのよ. 実際の検査は,患者さんの尿が私に採取された次の瞬間から始まるの. まずは色調.検査室に並べられたハルンカップを見渡すと,赤,白,黄色など チューリップの歌が歌えてしまうのはもちろんのこと,一人一人性格が違うように, 尿の色調もさまざまなのよ.十人十色,健康状態を反映して、微妙だけど みんな違う色をしているのよ. 比重やpH,蛋白や糖をはじめとする化学的成分の検査は,今は分析機器で 測定することが殆どだけど,スクリーニングとして広く行なわれているわ. 腎疾患だけでなく,他の疾患の診断にも役立つ臨床的価値が大きい検査なの. 尿沈渣についてもちょっと触れておくわね.生化学の血液検体を遠心分離するときより, 回転数を落として遠心すると,細胞成分,円柱,塩類結晶などが沈殿するの. 病態によって見られる成分は異なるんだけど,これらは主に腎・尿路系の状態を 反映しているわね. 一つ例を上げると,ネフローゼ症候群では卵円形脂肪体という脂肪変性に 陥った尿細管上皮細胞が出現することがあるの.これを偏光顕微鏡の光子さんで見ると, 脂肪顆粒が屈折して十字架に光って見えるのよ.マルタのクロス(Maltese Cross)と呼ばれ, 十字軍時代に生まれた聖ヨハネ騎士団の紋章,マルタの十字にそっくりなことから 名づけられたの.この名前をつけた人は,私と同じくロマンチストな人だったと思われるわね. 検査の世界でもIT化は進んでいることにちなんで,今日は偏光顕微鏡を使わないで, パソコンを使ってマルタのクロスを見てみましょう.興味がある人は次のことをやってみて……. まずはMicrosoft Wordを開いて,半角で大文字のXと入力するの.これをマウスで 反転させて(選んで)文字のフォントをWingdingsにしてみて.似ているものがあるけど, Wingdingsでなきゃダメよ.そのままだと小さすぎて見えないから,フォントサイズを 20以上にして大きくしましょう.そうすると,ほら! マルタのクロスが見えたでしょう! ちょっとした春子の魔法よ.もしWordのバージョンやプラウザによって表示されないことが あったらごめんなさいね.こんなふうに春子はITにも強いのよHP作りも得意だから, お時間があったら下記のアドレスにも是非いらしてね. このまま尿検査について話すと,カドで人を気絶させられるくらいの 分厚い本ができてしまうわ.春子のハルンは,患者さんから苦痛を与えずもっとも容易に 採取でき,病気の診断に基礎的かつ重要な検査であることがわかってもらえれば, 今日はそれだけで十分よ. http://www.geocities.co.jp/Technopolis/7138/kensa/index.htm 検査と技術 2002年 7月号コーヒーブレイク掲載 |
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ほらほらほらほら、これ↑よ、マルタのクロス。
HTMLでも出るのよ♪Wordでの出し方は、
マルタ騎士団について調べていたら偶然みつけました。
それにしてもHPの宣伝までしてしまうハルンカップって一体……(爆)。