チームバチスタの顕微鏡

「顕次郎、巷ではチームバチスタの栄光という小説が脚光を浴びているようではないか」
「それがどうかしたんですか?顕太郎アニキ?」
「どうかしたじゃないぞ。田口と白鳥というコンビで医療の事件を解決するという話だというじゃないか。
われわれ顕微鏡探偵も負けていられないではないか!」
 顕太郎は電源コードで机を強く叩いた。
「負けるも何も……。競う必要ないと思うんですけど……」
「何をいう! 顕次郎。これだからいつまでたっても検査技師は世間から忘れられた、職業の名前も知られないような存在なんだ!
われわれ顕微鏡探偵も本格的に活動しなければならないぞ!」
「本格的に活動といっても一体どうやって……」
 顕次郎は呆れるようにしていう。
「そうだな。顕微鏡界の田口&白鳥コンビでも組もうじゃないか。とりあえず俺が白鳥で顕次郎、お前が田口だ」
「はぁ?」
 顕次郎が一オクターブ高い声をあげる。
「なんだ? 嫌なのか?」
「何で僕が田口なんですか? まあ、逆よりは性格的にあっているとは思いますが……」
 顕次郎は嫌そうに眉をしかめた。
「まあ、面白そうだこと。ワタクシもお話に入れて下さいませんコト?」
 顕微鏡の鏡子が話に加わってきた。
「ああ、鏡子さん。顕太郎アニキってば滅茶苦茶いうんですよ。田口&白鳥コンビ組もうって。
僕が田口だっていうんですよ」
「まあまあ、顕次郎はコンビを組むことに不満ですの? 
それならワタクシが顕太郎とコンビを組んであげましょう。ワタクシが田口役やりますワヨ」
「いや、いい」
 顕太郎は即答した。
「ほら、映画版では田口は女性になっていたではありませんか。
顕微鏡界の竹内結子と呼んで。うふ♪」
 鏡子はウインクした。
「うぎゃ〜。田口&白鳥コンビはやめやめ」
 顕太郎はコンビ結成の前に解消を叫んだ。
「顕太郎、ワタクシと一緒に顕微鏡界と検査技師界の未来を担うのですノヨ」
「いやだ〜」
 顕太郎の声が夜の検査室に響きわたった。