交通事故の話
中学2年のとき、車と衝突したことがある。これは一応交通事故になるであろう。
無傷だったけど……。
中学二年、秋。全然やる気のない英語塾からの帰り道。
乗り慣れた自転車で、今では考えられない猛スピードを出して歩道を走っていた。
特に見たいテレビがあったわけでもない、家に早く帰りたかったわけでもない。
ただ、びゅんびゅん飛ばしてスピードを楽しんでいた……だけだったような気がする。
今考えると信じられないスピードを出していた中ねね(中学生のねね)である。
前方に信号機のない交差点が見えてきたが、速度を緩める気はまったくない。
人通りも車通りも少ない交差点で、今まで人も車も滅多に通っているのを
見たことがなかったからだ。
今日も大丈夫だろう。安心しきって交差点にさしかかると、
右目の端のほうに赤い色が見えた。車だった。
咄嗟にいけないと思い即座に両手でブレーキを握った。
かなりスピードを出していたのでブレーキが間に合うわけもなく、赤い色を認めた次には
視界が真っ暗になった。
(あ〜、やっちゃった〜)
車とぶつかった瞬間、暗闇の中で思ったことがこれ。ちょっともうねねダメかな?と
思い、そうっと目を開けてみると……。
目の前には赤い車があり、倒れた自転車が右側にあった。
(あれ? 無傷だ。自転車からは転んだけど、大丈夫だ)
安心して起き上がろうとすると、下半身がズンっと重い感じがした。
右足が動かなかった。視線を落としてみると……
; ̄ロ ̄)!!
つま先(右足)がタイヤに轢かれてる!
「うわあああああ!( ̄□ ̄;)」
タイヤの下にあるつま先を見て、ねねもうビックリ!
「きゃーきゃーきゃーきゃー」
ひとりで騒ぎまくり、無駄な抵抗と思いつつも右足をぐいぐい引っ張った。
すると、
スッポン!
靴だけ残して、足だけが抜けた。
当時、中ねねはぶかぶかの靴をはいていた。視覚的にはつま先が轢かれているように
見えたが、轢かれていたのはぶかぶかだったつま先の部分だけだったらしい。
残された靴をグリグリひっぱると、これまたスポッと抜けた。
そうこうしているうちに、赤い車の中から、人が出てきた。後頭部の薄いスーツを着た
おじちゃんだ。
「君、大丈夫? もう、ビックリしたよ〜。心臓止まるかと思ったよ〜」
「大丈夫です」
どうやら車にぶつかったと言っても、正面衝突したわけじゃなくて、
交差点で止まりかけた車の側面から、私がぶつかっていったらしい。
「大丈夫? 本当に大丈夫」
「はい、飛び出してごめんなさい」
自分自身、スピード出して飛び出したという自覚があったので、そのまま自転車で
家に帰っていった。今度はスピードを出さずゆっくりと。
家に帰り、ねね母に「おかえり」と声をかけられる。
「あのさー」
「何?」
「今、帰りね。車とぶつかっちゃってさぁ〜」
「はぁ?」
中ねね、車とぶつかったときの状況をかくかくしかじかと報告する。
「車とぶつかったって……、100円拾ったと同じような平気な言い方するんじゃありません!」
事情を聞いたねね母はビックリしていた。
やっぱりね、無謀はいけません。スピードの出し過ぎも交差点飛び出しも信号無視も
危ないです。前後左右、人に車に気をつけて道を歩かなければいけません。
このときしみじみ思いました。交通戦争とも言われる現代、交通事故には気をつけましょう。
被害者にも加害者にもならぬように。
ちなみに、タイヤに轢かれたぶかぶかだった靴の色は
くすんだ薔薇色でした(笑)。
注意一秒、怪我一生。気をつけましょう!