***電車の話***
これは私がまだうら若き女子高生だったときの話である。 授業が終わり、仲の良い友人3人と自分、合わせて4人で校門を出て駅に向かった。 駅の自動改札を通り、ホームへつながる階段を降りて行くと、ちょうど帰る方向の電車が進入してきた。 「電車が来てるー!」 そう叫び、みんな電車に駆け込むものだとばかり思っていた私は、 必死に階段を駆け降りホームに向かった。 ホームに降り立つと、ちょうど電車のトビラがガラリと開いた。 (よかった乗れる!) 電車に乗り、ホッとして回りを見ると一緒に来た友達がいない。 (あれ? この電車に乗るんじゃないのかな?) と不思議に思った。 ここで次の私の状態を頭に描いてもらいたい。 片足を電車の中に、もう片足を駅のホームに出した。電車とホームをまたいでいる状態である。 友人はどうしたのかと、今さっき降りてきた階段の方を見た。 すると……。 ――ガン! 電車のドアが急に閉まったのである。正中線上で、左右対象に引き裂かれる形で電車のドアに 挟まれてしまった。ただでさえ低い鼻と後頭部にドアが直撃したのである。 「いた〜い」 車掌は人を挟んでしまったのでとりあえずドアを開けた。 私は真っ赤になった鼻を抑えながらその場で向きを90度変えた。すると……。 ――ガン! むごいことに車掌はまたドアを閉めたのだ! 向きを変えた私は、今度は側面からドアに挟まれた。両耳を打った。 「きゃー」 もはや電車には恥ずかしくて乗れない。ホームに出た。 「なにやってるのっ! あんたは!」 バタバタと友人たちは階段を駆け降りてくる。どうやら友人たちはこの電車に 乗る気はなかったらしい。 私のことを二度も挟み込んだ電車は、まるで冷やかすように強い風を吹きつけてホームから姿を消した。 その後友人たちは大爆笑。 なかなかいないであろう! 二度も、それも二方向からドアに挟まれた女! はっはっは!(←笑い事ではない) ♪おわり |