***北風(邑輝)と太陽(巽)***
むかしむかし、ある日本の上空で北風邑輝と太陽巽が喧嘩をしていました。 「私は行きたいところに何処へでも行けるし、木枯らしを起こすことも出きる。 私の吹くつめたーい風は、きれいに色づいた秋の紅葉を落としているんだ。 風流もあるし、太陽巽さんなんかよりずっと優れている自身があります」 北風邑輝は口元を少し歪めて、太陽巽に向かってイヤ〜な笑いを浮かべました。 「何を言う! 私は大地を温め、それによって木々や人間達は生きているんだ。 地球上に住む全ての者が私に依存していると言っても過言ではない! 北風邑輝なんかと比べ物にならないくらい、優れているはずだ!」 太陽巽は眉間に皺を寄せながら、厳しい口調で言いました。 2人揃って眼鏡をかけた北風と太陽。お互い、自分の方が優れていると言って、 譲ろうとしません。 ―――そこで…、 2人はあるバトル?をすることになりました。 上空で喧嘩をしている邑輝と巽の下を歩いていた旅人、都筑の着ているコートを 脱がしたほうが勝ちという実力?勝負です。 「よし、では、私からあの可愛らしい旅人のコートを脱がしてやろう。フフフ」 不気味でかつ、嬉しそうな笑みを浮かべて、邑輝は都筑に向かってふぅ〜と 冷たい風を吹きました。 「うわっ! さぶっ!」 寒がりの都筑はコートをギュッと握り締め、縮こまってしまいました。 コートを全く脱ぐ気配はありません。 「ふふん。ダメですね。邑輝さん♪ 次は私の番ですね♪」 邑輝は引っ込んで、今度は巽の番です。明るい笑顔で、都筑に向かってサンサンと太陽を 照り付けました。 「うわぁ。今度はなんか暑いなぁ。コートなしでも十分だ!」 そう言って、ギュッと握り締めていたコートを離し、脱ぎ出したのです。 ニコニコ笑いながら邑輝を見つめる巽。見つめられて邑輝は悔しくってたまりません。 「うむむむむ。きいいいいっ!」 悔しさのあまり、叫び出した邑輝は、巽に向かって思いっきり強い風を吹きつけました。 「うわっ! 何をするっ!」 巽は吹き飛ばされそうになるのをこらえて、強い光りと熱を邑輝に向けて放ちました。 両者とも譲ろうとはしません。強い風に強い熱と光り……、 ―――やがて 風と熱は一つになり……、熱帯低気圧となって、東シナ海に流されていきました。 毎年、東シナ海方面から発生する熱帯低気圧……、台風とは…、 ―――実は邑輝と巽の慣れの果てだったのです。 熱帯低気圧となった邑輝と巽は、毎年夏から秋になると、 都筑さんに会うために九州地方を中心に訪れているのでした♪ ♪おわり |