夢の雫、薔薇色の烏龍
(ゆめのしずく、ばらいろのウーロン)


2016年5月号サイドパロ



 エジプトに無事についたラムセスは、手紙を読んでいた。
 イスタンブルの後宮にいるヒュッレム付きの女官、サハルからの手紙である。
 イスタンブルを出発する前に、できればヒュッレム様や後宮で起こっていることを
知らせてほしいと彼女に頼んでおいた。早速、手紙をくれたのである。
「割礼式ってなんだろうな?」
 ラムセスはサハルの手紙を読んで首をかしげる。
「どうした? ラムセス?」
 背後からイブラヒムの声がした。
「ああ、イブラヒムか。イスタンブルからの手紙なんだが、ギュルバハルがムスタファ殿下の
割礼式とやらを希望したらしいのだが、スレイマン陛下に却下されたと書いてあるんだ。
割礼式ってなんだ?」
 イブラヒムは一瞬驚いたような表情をする。この話は初耳なのだろう。
「割礼式とはイスラムの成人の儀式だ。ギュルバハル様がムスタファ殿下の割礼式を
申し出たということは、ヒュッレム様より優位に……息子を帝位に近づけたかったからだろう」
 イブラヒムはラムセスに丁寧に説明する。
「なるほど、そういうことか……」
 ラムセスは小さく頷き納得する。
「なんだ? その手紙は? 彼女からか?」
 イブラヒムは手紙の送り主を探る。
「えっ、ええ、まあ……そんなところですかね」
 ラムセスは焦り、手紙を隠す。
「まあ、いい。他にイスタンブルで変わったことはなかったか?」
「他には特にこれといったことは……」
 イブラヒムを見つめ答える。
「そうか、ならいい。邪魔して悪かった」
 イブラヒムはラムセスのいる部屋から出て行った。
 ラムセスはほっとする。
 もしも、手紙を読ませてくれと言われたらどうしようかと思ったからだ。
 サハルからの手紙には、もう一つヒュッレムの事が書いてあったからだ。
陛下の寵はヒュッレムにあるとみんなが思っているのに、ヒュッレムはそうではないという。
寵を独り占めしているわけではないと考えているらしいのだ。
ヒュッレムは『私を通して別の何かを見ている』らしきことを言っているらしい。
 サハルはどういう意味なのかわからないと書いてあるが、俺にはわかる。
 スレイマン陛下は、ヒュッレムを通してイブラヒムを見ているのであろう。
こんな手紙をイブラヒム本人に見せるわけにはいかない。手紙にさほど興味をもたなくて良かったと思っている。

 さあ、これから灼熱の太陽が照り付けるエジプトで戦いが始まる。
イブラヒムのことだ、きっと充分に策は練ってあるだろう。俺もエジプトの軍人として役に立てるよう努めなければならない。
 ラムセスは手紙を誰にも見られないよう、荷物の奥の方にしまった。



【感想】
わ〜イブラヒム出てこない〜。
エジプトに無事についただけってコマだけだよ〜( ノД`)
サイドパロはエジプトに着いたラムセスに手紙が来るということにしたんだけど、
誰から手紙が来ることにしよう。最初メフメトって思ったんだけど、
イスタンブルにメフメトのいるコマがない……。ということはメフメトも一緒にエジプトに行ってる?
うーん、困った。シャフィークからの手紙にしようか? あ、サハルにしよう。ちょっとラムセスと
いい感じに今まで書いてきたし。そうしよう。と、思いサハルにしました。
やっぱりサイドパロってムズカシイ……。ギャグ100%の天河続きパロとは違いますね。
まあ、できる範囲でがんばります。
カラー表紙も綺麗ですね。トルコのエブル(マーブリング)、
綺麗だけど、後宮のちょっとドロドロした怖い雰囲気も出ていて
サスペンス風な感じも受けます。8巻の表紙はこのエブルなんですね!


 



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