「若き日のキックリ日記」
天河外伝〜続・魔が時の黎明続き〜




紀元前○年 △月◆日

 カネシュの街の暴動を治めてハットゥサへの帰り道。
我が主人カイル・ムリシリ殿下は盗賊に襲われた。
盗賊といっても人数は一人でまだ若い少年であった。
殿下の紅玉髄の胸飾りが目当てだったようだ。
殿下の剣の腕はヒッタイト軍のどの将軍にも引けをとらない。
このときも盗賊の少年より剣の腕は勝っていたが、
少年はなかなかの腕前だった。殿下も「使える」と思ったのであろう。
即座に殺さずに胸飾りを少年に投げつけ、逃がしてしまった。
少年は「施しを受けたのではない、借りただけだ」といって
日の沈む地平線もへ向かってかけて行った。少年は「カッシュ」と名乗った。
 カイル殿下は少年の背中を姿が見えなくなるまでずっと追っていた。
殿下はたいそうカッシュという少年に興味がおありのようだ。
剣の腕が若いのに素晴らしかっただからであろうか。
それともそれとも本当にあのカッシュという少年に「興味」をもってしまった
のではなかろうか。思えば、あの少年は身なりは貧しそうであったが、
整った顔立ちをしていた。あれだけの剣の腕前からすると庶民ではなく、
おそらく貴族階級であろう。
 ザナンザ殿下がカネシュの知事になってやっと邪魔者が消えた……
いや、カイル殿下ろ二人でいる時間が増えたというのに……。
殿下は別の少年にもう興味があるというのか? この私がいるというのに。
カイルさまのためなら、山歩きでも狩りでも戦争でも寝所でもどこへでも
お供するのに……もう殿下は次の少年に興味があるのだろうか?
ああ、私の心にメラメラと熱い炎をあげている。いや、でもあのカッシュという
盗賊の少年が再びカイル殿下の前に現れることがあるだろうか。
殿下が許したとはいえ、一国の皇子殿下を襲った盗賊である。
胸飾りを借りただけと言っていたが、庶民には縁のない高級品だ。
危険を冒してまで返しに来るなどあるわけがない。殿下があの少年を
気に入ったとしても、それは叶わぬ思いであろう。私の心配しすぎだ。
 ザナンザ殿下がカネシュの知事となった今、私が一番の殿下のそばにいる
従者だ。これからゆっくりカイル殿下との時を楽しもう。



キックリが安心しているのも束の間、カイルの周りには今後次々と
有能な側近たちが集まってくるのあった。




***
どーも、短いあまり内容のない続きパロですみません。
今回の外伝は本編に繋がる内容でなんだか
わくわくしちゃいました。最後にカッシュが出てきたのが嬉しい♪
絶対に3隊長とのなれそめが読みたいです!
外伝の続き、出るよね出るよね、絶対出るよね!
ねねはそう信じてます。
天河は、ねねずわーるどは永遠に不滅よ〜(笑)。


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