2018年sho-comi6号
創刊50周年記念 新作読み切り


天は赤い河のほとり~書簡~
感想&続きパロ






【あらすじ
】 【感想】 【続きパロ】


【あらすじ】
まずはカラー表紙から。
宝塚のポスター表紙のカイルとユーリのツーショットの衣装がそのまま描かれています。
髪飾りもアクセサリーもほぼそのまま。久々にカラーかカイルとユーリを見ることができて幸せです……。
って、あらすじじゃなくて感想書いてるわ。私……。

 さて、あらすじ!
 エジプト王妃の元にザナンザが婿入りすることになり、
愛と戦いと豊穣の女神(イシュタル)の名を持つユーリが隊列の先導することになります。
 ザナンザには一つ秘めている想いがありました。
 ユーリに対する想いです。
 エジプト王妃を愛して、ユーリへの想いは封じると決めたのですがなかなか断ち切れません。
 そんなとき、ザナンザは自分の荷物の中にカイルからの書簡が隠してあったことに気づきます。
 長く自分の元に仕えてくれてありがとうという、兄カイルからの感謝の気持ちがこもった書簡でした。
 この書簡を見て、ザナンザは、自分も書簡を書きました。
 今の気持ちを書簡に託したのです。
 書簡はユーリには言わず、こっそりと彼女の荷物の中に忍ばせておきました。
 しかし、ナキア皇妃の企みで、衛兵がザナンザ皇子たちを裏切ります。
 ザナンザは矢で射抜かれ、ユーリも背中に矢が刺さり、気を失ってしまいます。
 アスランがユーリを乗せて砂漠をさまよっている所を、ネメスを被ったラムセスが見つけました。
 ザナンザの想いが詰まった書簡は砂漠の中へ消えていきます。


【感想】

ちょっとちょっと!
出てきちゃったじゃないですか!

通りすがりのラムセスが!(笑)

ザナンザのお話だから、きっとラムセスは出てこないのかな~と思っていのですが、
ブログで書いた通りにラムセスが出てきてしまった。
ああ、ちょっとビックリ。でも嬉しい(^-^)。

ザナンザの書簡いいですね~。
ページの見開きでザナンザの想いが伝わってきます。

「天は赤い河のほとり」

このタイトルが生きています。

読んでいない方は是非、少コミ本誌見た方がいいですよ~。
やっぱり篠原先生の作品は少コミサイズの大きさで読んだ方が迫力があるんですよ!
コミックスよりも雑誌サイズです。
あ、今は少コミではなくて、sho-comiというんでしたっけ?
少コミっていいと思うんですけどね~。昔、「笑コミ」って呼んでいたこと思い出します。
少コミが楽しくって笑顔が零れました。

ラストは「えっ! ここで終わっちゃうの? 書簡はどうなるの!( ゚Д゚)!」と
ドキドキの展開で終わっています。続きが読みたい(+_+)。
これはねねとして続きパロに繋げるしかないです。


【続きパロ】


砂漠の中に消えた書簡は行方は!?


1.3000年後、ねねの手に渡る
2.プロフェッサー氷室が発掘
3.遺失物としてラムセスの手に渡る




1.3000年後、ねねの手に渡る

 2002年9月
 ボアズカレ、ハットゥサ。
 最終回記念、篠原先生とお食事会付き、天河トルコツアーでハットゥサの遺跡を訪れたねね一行。
 当時は、ちょっと変わった日本人とドイツ人しか喜んで観光しないと言われた場所、ハットゥサ。
 ハットゥサの遺跡の中心、ライオン門で騒いでいると、背後からポンポンとねねは肩を叩かれた。
 振り向くと、猫の銅像を持った現地の物売りの少年がニコニコしながら立っているではありませんか。
 猫の銅像はいらないので、「のーさんきゅー(^-^)」と笑って答えるねね。
 でもこれも縁だし、現地の少年に何かプレゼントしたいなーと思った。
 折り紙で折った「やっこさん」を使って

 「メルハバ(トルコ語でこんにちは)」

 と挨拶してプレゼントしたら大喜び。

 お礼に「これあげる(トルコ語、多分こう言ってたはず)」と、粘土板をもらいました。




「わーい! 折り紙が粘土板に変わったぞ。やったぁ~ヽ(^o^)丿」
 無邪気に喜ぶねね。


 実はこの書簡が、ザナンザ皇子が託した書簡だったのです!

 今もなお、ねね実家の押し入れの奥深くに書簡は眠る……。


 ♪おわり

***

 もちろん嘘です。
 でもハットゥサのライオン門のところで粘土板をもらったのは本当の話。
 貰った粘土板は上の写真ようなしっかりしたものではなく、こちら。

 トルコ旅行記5日目 ライオン門
 
 既に何の文字か分からない……。多分、楔形文字ではないだろう。
 だけど、何気なく貰ったり拾った粘土板が本物だったり……なんてことあるかもしれませんね。



2.プロフェッサー氷室が発掘



「やっぱりこの書簡大発見よ! アンケセナーメの婿としてエジプトに向かった
ザナンザ皇子の書簡に間違いない!」
 詠美は満足そうに頷いて、夫であり教授である氷室の顔を見た。
 時は現代。
 エジプトとトルコの国境付近の砂漠の中から、古い書簡が発見された。
 書簡は楔形文字で書かれており、その解読を氷室や詠美たちが行っていた。
「書簡にはなんと書いてあるんだ?」
 氷室が詠美が手にしている書類を覗き込む。
「解釈の仕方にもよると思うけど、ヒッタイト帝国の繁栄を願う書簡みたい。
ここで不思議なことが一つあるんだけど、兄であるムルシリ2世宛てじゃなくて、
その妃イシュタルに向けて書いた書簡みたいなのよね。
イシュタルが長く国に留まり、皇妃(タワナアンナ)となる日を想うって書いてある……」
「ふうん、それは興味深いな……」
 氷室は顎髭をいじりながら頷く。
「これは想像だけど、書簡を書いたザナンザ皇子は、もしかしたら兄の寵姫であるイシュタルのことが好きだったのかもしれないな……」
 詠美は書簡を静かに見つめる。
「またまた……女性はすぐに恋愛に結び付けようとする」
 氷室は詠美の言うことに苦笑いした。
「でもムルシリ2世の寵姫イシュタルの墓からは、ハートマークの書簡が出てきたじゃない。
イシュタルは愛と豊穣と戦いの女神。記録にはないけれど魅力的な女性だったのかもしれないわよ……」
「うむむ」
 氷室は腕を組み難しい表情になる。そんな夫の姿を見て詠美は微笑んだ。
「ザナンザ皇子の想いが、どうか届きますように……」
 詠美は窓際に飾ってある写真の方を向き、目を瞑り祈り始めた。
「なんで夕梨の写真を見て祈るんだ? 詠美?」
「うーん、なんとなく。お姉ちゃんに向かって祈れば、なんだか想いが届くような気がして……」
 詠美は目を開けて、姉の写真に向けてニコリと笑った。
「そうだな、その気持ち、なんだかわかるよ……」
 氷室も夕梨の写真を見つめ、大きく頷いた。


3.遺失物としてラムセスの手に渡る


 時は古代ヒッタイト。
 ナキア皇太后が失脚し、ユーリはカイルの正妃(タワナアンナ)として万民の支持を得て認められた。

 二人の結婚式とユーリのタワナアンナの戴冠式が行われた。
 近隣の国の高官たちも結婚式に参加しており、その中にオッドアイと蜂蜜色の肌を持つ身分の高い男がいた。
 エジプトの将軍、ウセル=ラムセスである。
 手にはお祝いの薔薇の花束ともう一つ、あるものを握りしめていた。

 手の中に収まる、小さな書簡である。

 ラムセスは手を広げ、書簡を見つめる。
 書簡には美しい楔形文字が書かれていた。少々几帳面な文字で、書き手の性格がにじみ出ていた。
 挙式の間、ずっと握りしめていたので少々汗ばんでいる。
 ラムセスは書簡を見つめニコリと笑い、再び手を閉じた。


 結婚式が終わり、ユーリに娘を生むように頼んだ。その娘を自分の息子の嫁に貰うと宣言したのだ。
 手に持っている薔薇の花束と書簡を渡そうとしたその時だった。背後に嫌な気配を感じた。
「ラームーセースー」
 振り向かなくともわかる。ユーリの夫でありヒッタイト帝国の皇帝であるカイル=ムルシリである。
「ユーリに手を出すな!」
 すごい勢いで睨まれたので、とりあえず一歩引いた。
「手出しなんてしないさ。それよりもお祝いだ! 結婚おめでとう!」
 ユーリに薔薇の花束を渡す。
「あ、ありがとう……」
 ユーリは花束を見つめお礼を言った。
「ついでにこれも渡しておく。多分、二人のどちらかが持っていた方がいいと思ってな……」
 ラムセスは握りしめていた書簡をユーリに渡した。
 ユーリは不思議そうに書簡を見つめる。
「何これ? 楔形文字が書いてある」
「ラムセスが書いたのか?」
 ユーリとカイルがラムセスに聞いた。
「書いたのは俺じゃない。最近、砂漠の盗賊の取り締まりもやっていてな。
盗賊たちの盗掘品の中に、こいつをみつけたんだ。
盗掘された場所は、俺とユーリが最初に会ったあたりだ……」
 ラムセスはユーリを見つめ、笑顔でしっかりと頷く。
「最初にあった場所!? ええと……ラムセスと最初に会ったのは確か、アスランと砂漠をさまよっていた時……」
 ユーリはラムセスと初めて会った時のことを思い出そうとしているのか、
少々難しい顔になっていた。その傍ら、カイルは粘土板の解読を試みる。
「こ、これはっ!」
 カイルは粘土板を見つめてハッとした。
 ラムセスはカイルを見て無言で強く頷く。
「ねえ、カイル。なんて書いてあるの?」
 ユーリはカイルが持っている粘土板を覗き込んだ。
 カイルは一瞬目を閉じた後、言葉を続けた。
「まさか……弟からこんな、はなむけの言葉を貰うとはな……」
 カイルは困ったように、また照れたように粘土板を見て笑った。
「弟!? どういうこと? 粘土板にはなんて書いてあるの?」
 ユーリは状況が飲み込めず高い声を上げた。
 カイルはゆっくりと読み上げる。
「ユーリ・イシュタル。最高神テシュプの降臨せし女神よ。
長く我が故国にとどまりたまえ。永く兄上の側にとどまり
我が祖国の皇妃となる日を想う――」
 カイルはユーリを見つめ穏やかに笑った。
「え……。兄上……皇妃って、まさか……」
 ユーリは目を見開き、カイルとラムセスを交互に見る。二人は静かに強く頷いた。
 誰が書いた書簡か分かり、ユーリの黒い瞳から一筋の涙がこぼれ落ちる。
「この書簡は砂漠の盗賊が発掘したものだ。砂漠の中から、女性用の荷物と一緒に見つかったらしい。
女性用の衣類や荷物は高値で売れたらしく、どこにあるかはわからない」
 ラムセスは書簡が見つかった経緯を説明する。
「そういえば……ザナンザがエジプトへ向けて出立するとき、荷物の中にこっそりと書簡を忍ばせておいたんだ。
これはその返事かもしれないな……」
 カイルはクスリと笑う。笑いながら粘土板をユーリに手渡した。
「これはユーリにやろう。弟からの……ザナンザからのはなむけの言葉だ」
「え? この書簡はカイルが書いた書簡の返事じゃないの?」
「いや、これはユーリ宛のようだ。後で自分で解読してみるといい……」
 カイルは笑って書簡をユーリに渡した。
「ええ! 楔形文字、苦手なのに……」
 ユーリはブツブツいいながら粘土板を受け取った。
「ラムセス、大事なものをありがとう」
 カイルはラムセスをまっすぐに見つめ、礼を言った。
 
 ラムセスと別れたカイルはホッと息をつく。

 実はザナンザからの書簡は後半部分しか読み上げなかった。
 前半部分は、弟がユーリに伝えたかった言葉だからだ。
 ユーリ自身がしっかりと受け取ればいいと思う。
 弟の最後の想いを受け取ることができて、ユーリを正妃とすることができて本当に幸せだと思う。
 今ある自分もユーリも……、数ある犠牲の上に成り立っている。それを忘れてはならない。
 国を思い、民を思い、このヒッタイト帝国を築いていかなければならないのだ。
 カイルは隣を歩く、ユーリの背中にそっと手を置いた。




♪おわり




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