願いごと一つだけ

天河と夢の雫、黄金の鳥籠をつなぐパロディ

 こちら古代の地獄。
ジュダの元、カネシュに幽閉されたナキア。
静かにカネシュで生涯を送り、その地で静かに息を引き取った。

 ナキアは成仏して古代の地獄にいました。
「1254896号、元ヒッタイト帝国皇太后ナキア殿。う〜ん、お主は生前、随分と色々悪さ
をしたものだな。でも、カネシュに幽閉されてからは静かに過ごしていたのか……」
 地獄の閻魔様。ナキアの生前歴を見てため息をひとつつく。
「ナキア殿。生前、随分と悪事の数々をしてきたが、カネシュで反省したということと
みなして、お主に転生の機会を授けよう。転生にあたり、一つだけ願いを
聞いてやる。さあ、願いはなんだ?」
 ナキアはしばらく考える。
「そうだな……今度は自由な身分がほしい。生まれつきの王女の身分なんていらない。
金銀も宝石もいらない。平民でよいから、こんなナイスバディも美貌もいらぬ。
上に這い上がれるチャンスのある女として生まれ変わりたいぞ!」
 ナキアは一気にいった。
「う〜む、そうか。じゃあどの時代のどの女にしようかな……。
だいぶ時間が経ってしまっても構わぬか? お主が住んでいた地域と同じような場所で
生まれ変わる女がいるのだが……」
 閻魔様は分厚い転生台帳をめくりながらいった。
「なんという名で生まれ変わる予定なのじゃ? それは平民か?」
「ヒッタイトよりも少し北の国で生まれる教会の娘じゃ。もちろん平民で生まれたときに
つけられた名はアレクサンドラという」
「ほほう、息子の嫁と似ている名じゃ。教会の娘か。それは面白そうだ!」
 ナキアは満足そうに微笑んだ。
「アレクサンドラから名前が一度変わるのだが……それは転生してからのお楽しみとしよう。
では、ナキア殿、1500年代オスマン帝国へ生まれ変わるのだ」
「うむ、承知した」
 ナキアは静かに頷いた。

***

「ウルヒ、ウルヒや。起きろ。やっとお主の転生先が決まったぞ」
 地獄の閻魔様。ナキアよりずっと早く辿り着いていたウルヒを起こす。
「今さっき、ナキアが来てな。奴の願いを一つだけきいてやった結果、転生する人物が決まった。
オスマン帝国第十代皇帝のスレイマン1世だ」
 閻魔様は満足気にいった。
「こ、皇帝ですか? そんな高貴な身分はいらないのですが……」
 ウルヒは驚き、謙遜する。
「仕方ないであろう。ナキアの願いを叶えたらスレイマン1世になってしまったのだから。
転生するにあたり、お主の願いはなんであった?」
「今度はナキア様と身も心も結ばれることです」
「そうであろう。ナキアとウルヒの両者の願いを叶えたら、こうなったのだ。
静かにこのままスレイマン1世として転生するがよい」
 閻魔様は悟るように言った。
「はい、閻魔様。ありがたく転生させていただきます」
 ウルヒはゆっくり一礼した。
 
 ウルヒはオスマン帝国のスレイマン1世として、ナキアは奴隷ながらも彼の寵姫となる
ヒュッレムとして生まれ変わったのでした。
 もうひとつおまけでいうと……、イブラヒムは黒髪ラムセスだったりして?(笑)

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