***10号続き***

 


 ユーリの率いる反乱軍はどんどん勢力を増し、テーベの近くにまで攻め入った。
国にとっての危機であるのに、ネフェルティティはまだ、ラムセスを釈放しようとはしない。
 ユーリの目的はラムセスを助けること。こうなったら、テーベに攻め入り、王太后宮にラムセスを
救出しに行くしかない! 捕らわれの身の美人のお姫様を助けるというお話なら、どこにでもありそうな話だが、
逞しい肉体美のオッドアイのプリンスを助けに行くというお話も、面白いものだろう。
「このままテーベに、王太后宮まで攻め入るよ! 直接ラムセスを助けに行くんだ!」
 ユーリの言葉に続き、民衆はテーベにまで攻め入った。ジュゼルを始め、エジプトの有能な将軍は
既に反乱軍の捕虜となってしまい、軍をまとめる者はいない。たいした犠牲も、
時間もかからず、テーベを落とすことが出来た。
 ホレムヘブもネフェルティティも、急に攻めてきた反乱軍に驚きと恐怖を持った。
ネフェルティティは、今までのエジプト王政の責任を全てホレムヘブに押し付け、故郷の
ミタンニの方向へ亡命してしまった。(ミタンニはもうないってば…)
「ラムセス! 助けに来たよ!」
 食事も水も満足に与えられなかったラムセスはグッタリとしていた。
ユーリの顔を見たラムセスは、そのままユーリに倒れこみ意識を失ってしまった。
「ラムセス! 大丈夫?! ハディ、すぐに彼を涼しい場所で休ませてあげて。
それと目が覚めたら、お腹にやさしい食べ物を。そうとうネフェルティティにいたぶられたみたいだから…」
「分かりました」
 三姉妹は、いたぶられてちょっとセクシーなラムセスの世話をするために下がった。
「ユーリ様。ラムセス将軍も助けたことですし、ヒッタイトに帰りましょう。カイル陛下が待っています」
「帰るですって?! そんな…ユーリ様のおかげでここまで来れたのに…。一緒にいて下さい!」
 そう必死に叫ぶのは、エレファンティナのタハルカ。
今まで、国に不満を持っていても力で押さえつけられていた平民達。抵抗しようとしても、武器もなく、
戦い方も知らなかった為、何一つ逆らえなかった。
 許せない政治を執っていても、貴族や王族達の道楽のために税金を搾り取られていると分かっていても、
何の抵抗も出来なかった。その平民の気持ちを一つにし、戦い方を教えてくれたのがユーリ。
タハルカ達にとって、ユーリはこの悪政を正すために天からやって来た救世主。女神のような存在になっていた。
「ユーリ様。このままファラオを倒して、ユーリ様がファラオとなって下さい。私達平民は皆、
ユーリ様についてゆきます。どうか我が国のファラオに…いいや、我が国の女王になって下さい!」
 タハルカを始め、民衆達の目は真剣だった。
「ユーリ様……、ここに残ることはできないのは分かっていますよね。早くカイル陛下の元へ帰りましょう」
 イルがユーリの耳元で小さく囁いた。
「―――帰らないよ…。ヒッタイトには……。聞いたイル=バーニ? ファラオだって! 女王だって!
なってやろーじゃん! ホレムヘブの次のファラオは、ラムセス1世じゃなくって、このユーリ1世よ!
第19王朝は私のものよ! 世界史の教科書に名前を刻んでやるわ! おーほほほほほ!」
 高笑いするユーリ。民衆もユーリの笑い声に反応するように、ユーリファラオにエールを送った。
「ゆ、ユーリさま…。では、ヒッタイト帝国はどうするのです?! カイル陛下は…」
「もちろん! カイルには政治の手伝いはしてもらうわ! 私がここでエジプトのファラオとなれば
エジプトーヒッタイト間に和平がなるじゃない! カイルがヒッタイトの皇帝で、その妻である私が
エジプトのファラオ。なーんの問題もなくなるわけ! いい考えでしょ!」
「なるほど……、なーんて納得している場合ではない! ダメです! 『天は赤い河のほとり』は
日本から来た少女が、数々の試練を乗り越えヒッタイト帝国のタワナアンナとなる筋書きです。
そのストーリーを崩さないで下さい!」
 必死に止めるイル=バーニそっちのけで、すっかりエジプトの女王様モードだった。
「エジプトのファラオとなったら、ピラミッドの建築もしなくっちゃね! 日本の前方後円墳なんて
目じゃないわ!」
 るんるん気分のユーリに、それを支持する民衆達。
いやぁ、人気者はいいですね。羨ましいですよユーリさん(BYねね)

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うーん…一体、カイル君はいつ出てくるのでしょうね? 
出番が少なくなって、次に出てくるときデブデブになってたらどうしよ! 
きゃーそんなのカイルじゃないわー!(笑)
でも、ユーリがエジプトのファラオになって、カイルがヒッタイトの皇帝なら
全てが上手く納まりません? そうするとラムセスはどうなるのかって? 
天河の大道芸人にでもなってもらいましょ!(爆)