***11号続き***



 ラムセス救出のためにテーベに攻め入るユーリたち反乱軍。しかし、ネフェルティティは
ホレムヘブのラムセス釈放の要求にも反して、ラムセスを自由にはしなかった。
むしろ、ヤケを起こして、反乱を機に暗殺するのではないかと考えるユーリ。
急いで王太后宮に駆け込んだ。だが、そこには、もはラムセスの姿はなかった。
無残にも、縛られていたであろう縄だけが、血まみれになって残っていたのだ…。
「ラムセスがいない! どこにいったの?!」
「早く探さなくっちゃ! ラムセス将軍が殺されてしまうわ!」
 ラムセスが監禁されていた部屋を出て辺りを見まわした。人の気配は全くない。
右も左も分からない王宮で闇雲に探しまわすユーリ達。しかし全くラムセスはどこにもいなかった。
「どうしよう…、全然見つからないよ…」
 泣きそうな顔になるユーリ。ここでラムセスが殺されては、民衆を率いて暴動を起こしたタハルカ達
にも申し訳ない。なによりもラムセスが殺されては…!
「仕方ありません。あきらめてヒッタイトに…、カイル陛下のもとに帰りましょう」
 シレッと言うイル=バーニ。やはりイルの考える第一は、カイルのようだ。
「ひどい! イル=バーニ! ラムセスだって薔薇男だけど、一人の人間なんだから!」
「そうですわ! ユーリ様の言うとおりです! イル=バーニ様だって、この前はラムセス将軍を助けることに
協力してくれると言ったではありませんか! 初志貫徹を通さないなんて、私のイル=バーニ様では
ありませんわっ!」
 ちょっと余計なことまで口走ってしまったハディ。リュイに続いて彼女も職場結婚か!?(笑)
「嬉しいぜ! ユーリ! 俺の為に泣いてくれてるんだな! そんなに俺のことを愛しているのか!」
 ガバッとユーリの後ろから誰かが抱きついた。ユーリはきゃあああと悲鳴を上げる。
 声の主はもちろんラムセス。そしてもちろんのこと、普通の格好はしていない。
今回のコスプレは…じゃなかった。今回は忍者の格好をしていたのだ。
「ラムセス! 無事だったの? どうやって逃げたの?」
「それは…、エジプト甲賀4000年の歴史、忍法縄抜けの術でスルスルと抜けたのさっ」
(縄は切れていただろ…という突っ込みは受けつけません・爆 BYねね)
 例えて言うなら忍者ハットリ君の忍者の格好。それもほっぺにはグルグルうずまきもかわいらしく
書いてあったのだ。
「ユーリ! お前は俺の妹…じゃなかった弟のシンゾウになれ!」
「ハットリシンゾウ!? いやよ! あんな真っ赤な忍者コスプレ!
私は天河のヒロイン! 天河のアイドルよっ! ハットリ君のアイドルの夢子ちゃんじゃなきゃ嫌よっ!」
 必死に抵抗するユーリ。どうやら女王の座は、彼女の手の中にないと気が済まないようだ。
「うーん…、仕方ない…。ハットリジンゾウはハディ! お前がなれ!」
「はっ? 私ですか? こ、こんな脇役の私が役を頂けるなんて滅相もない!」
 ハディはラムセスのハットリ君ごっこに入れてもらえて嬉しそうだった。
「じゃあ、他の配役は俺が勝手に決めよう。ハットリ君のライバル。ケムマキはもちろん俺の永遠の
ライバル、ムルシリ。ケン一君は特別出演、メガネをかけたキックリ。それと獅子丸は…」
 ラムセスはくるりと向きを変え、イル=バーニの方を見た。
「イル=バーニ! 獅子丸はお前だ!」
「えっ? 私が獅子丸ですか…」
 キョトンとするイル=バーニ。
 このように、忍者ハットリ君ごっこで、ネフェルティティに対する戦いはこれから繰り広げられようと
していた。