***8号続き***



 剣を持つだけが戦いではない。その言葉を証明するようにイル=バーニは見事ウルヒを
捕らえることに成功した。ジュダをナキアの封印から解き、正気に戻させた上でウルヒを
呼び出したのだ。まんまとイルの画策に乗せられ、ウルヒはカイルの目の前で美脚を
あらわにしているのであった。
 今までのナキア皇太后の悪行をすべて公の場で暴露すれば、ウルヒの罪は
問わないとカイルは言っているが、ナキアを戦時中の天皇のように崇拝しているウルヒのことだ。
ナキアを見捨てるなんてことは、まずありえないだろう。そんなことは置いておいて……。
 今回の続きパロは久々にご登場のジュダ殿下に注目したい。

「ジュダ殿下、正気に戻ってよかったね」
 黒い瞳がやさしくジュダに笑いかける。
「ええ、おかげさまで。でもね、私これから探さなくっちゃいけない人がいるの」
 何故かジュダ殿下は語尾がおねーさま言葉になっていた。声変わりを
しているのかしていないのか分からないがいつもよりトーンが少し高かった。
「探している人?」
「はい、ユーリさま。私、克之を探さなくっちゃいけないの。どこにいるのかしら?」
「カツユキ???」
 ユーリの頭には?マークがクルクル回った。カツユキって一体誰であろう?
そんな登場人物はこの天河上にはいないはずである。ユーリが不思議に思っていると、
ホホホホホとソプラノ声が部屋に響き渡り。背後から誰かが歩み寄って来た。
「おやおや、皇帝陛下にイシュタルさま、イル=バーニ書記長にウルヒにジュダ。
皆様お揃いで結構なこと。おほほほほほほ」
 天河の影の主役、悪のヒロイン、ナキアさまのご登場である。たいそう上機嫌であることは
笑い声から言うまでもないであろう。
「ジュダは黒い水を吐いてしまったのか。まあ、仕方がない。しかしまだジュダは
私の手の中にあるのだ。ほーほほほほ」
 ナキアは白鳥麗子のように高飛車に笑う。プライドも自信も相変らず満々のようである。
「どういうこと? 黒い水を吐きだしたんだから、ジュダ皇子はもうあなたの
言いなりになんかならないわよ!」
 ユーリは挑発的な言葉をナキアにぶつける。
「確かに……な。黒い水で操ることはできない。しかしジュダの中には別の人格が
宿っているのだ」
「別の人格?」
「そうじゃ。ジュダは大変本好きでのう。私の部屋にある『海の闇、月の影 全18巻 篠原千絵著』を
読み、たいそう気に入ってしまったのだ。以来、すっかりはまってしまい、気分はもはや流水と流風。
ほーれ、金髪だが髪型もそっくりであろう。黒い水で操られていたときの顔は流水に、
吐き出した後の顔は流風に。流水と流風のコスプレじゃ! まんがオタクと化してしまった
ジュダをもはや誰も止めることはできない。ホホホホホ」
 ナキアの話にユーリをはじめカイルもイル=バーニも呆然。呆気に取られている
空気の中、ナキアとウルヒはちらっと視線を交わし微かな笑みを浮かべる。
「私の名前は小早川流風。五枚の処方箋を探して宙を舞い、離れ離れになった克之を
探しているのよ。克之はどこー!」
 ナキアの言うとおり、ジュダは少女まんがオタクと化してしまったようだ。すっかり今は
流風になりきっているようだ。
 ユーリたちはまだ状況を把握できずフリーズしてしまっている。
「克之なら側にいるではないか、ほれ、あの黒髪のチビの隣にいる長身の男がそうじゃ。
髪が金髪だが、あれは染めているだけのこと。お主の探している克之だぞぉ〜」
「本当に? そう言えば似ているわ! 私の克之さ〜ん♪」
 ジュダはナキアの言葉をそのまま信じてカイルに飛びついた。
「ちょ、ちょっと……」
 突然抱きつかれたカイルは動揺し、ジュダの手を振りほどいた。
振りほどいた拍子にジュダは転び、なよなよとその場に倒れ足を揃えて女座りをしていた。
「ど、どうして私を嫌うの……」
 ジュダは右手を軽く口元に当て、うっすらと瞳に涙を溜めながら、
克之だと思いこんでいるカイルを悲しげな瞳で見つめる。
「ほほほ。私のジュダ……じゃなかった。今は流風とやら。金髪克之はそのとなりの
黒髪の女にたぶらかされているのだ。愛しい克之を横取りしたのだぞ!
とりかえすのじゃ!」
「はぁ?」
 自他共には勿論のこと、時代を超えて認める相思相愛カップル、カイルとユーリは
突然振りかかったナキアの言葉にポカンとする。
「なんですって!」
 すっかり流風になりきっているジュダは女言葉を吐きながらユーリを睨みつける。
「さあ! あの黒髪の女を倒すのだ! そしてお主を裏切った金髪克之も
亡きものにするのじゃ!」
 ジュダは剣を抜きカイルとユーリに向かってきた。
「えええええ! 何なの? 一体どういうことなの!」
 突然の展開にユーリもカイルも動揺するばかり。海闇にはまってしまったジュダを
恨むべきか? それともそう仕組んだナキアを恨むべきか?
まだまだ天河最終回には程遠いと思われる。

♪おわり


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なんなんだ。この続きパロの展開は……。どうして海闇がでてくるのであろう。
自分で書きながら不思議じゃ! まあ、書いてしまったものは仕方ないとして(笑)。
それよりも、最初の方のページでカイルのことを「兄上」って呼んでいるシーンが
ありましたよね。私は次のページをめくる前、ウルヒがカイルのことを「兄上」と
呼んだのだと思い、耳の穴から薔薇が飛び出るほどびっくりしました。
次のページをめくって「兄上」と呼んだのはジュダだと判明したのですが、
私は一瞬のうちにこんなことを思いました。

『えっ? 兄上ってどういうこと! カイルはウルヒの兄? 
じゃあ、カイルとウルヒはシュッピルリウマ王を父とする腹違いの兄弟なのかしら? 
それともカイルの母さんヒンティ皇妃が浮気してできた隠し子!? 
それはすごい展開だ!』

ホントに、1秒くらいの間にこれだけのことを思いました。でも兄上って呼んだのは
ジュダだったんだもの。「えー、なんか拍子抜けー。ぶつぶつ」心の中で呟きました。
バカですね、私。

それともう一つ!
イルがウルヒに会ったかとジュダに聞いたときのジュダのお答え。
『ウガリットにいく前夜、寝所で会ったよ』
寝所、寝所、寝所……。それって……、どういうこと? うふふ♪
とアホなことを思ったのも私だけ?


じゃ、今回の続きパロはこのへんで。
また再来週(^_^)/~