***17号続き***



 全皇帝暗殺の罪を問われたウルヒは、隙を見て剣を取りナキアを人質とした。
ジュダが意識を取り戻した知らせが入るが、ウルヒはナキアを抱きしめる手を
緩めない。ウルヒは最期にナキアの耳元で呟き、ギュッと抱きしめたと思うと、
自身の胸に剣を突き刺し自害した。
 最期に自分に触れたウルヒの死にナキアは呆然とし、自分の体を抱きしめた。
カイルやユーリ、他の元老院議員たちも突然の出来事にしばし呆然とした。

「うわあああああ! ウルヒ父さん!」
 沈黙を破ったのは先ほどカイルに皇位継承権があると認められた当人、
ジュダであった。母親お手製の毒を飲みそのまま意識を失っていたため、
ウルヒが宦官である事実を知らぬジュダは、自分の父親はウルヒだと
信じていたのだ。すっぱだかで胸に剣の刺さったウルヒを見てジュダは泣き叫んだ。
「ウルヒ父さん、どうして死んでしまったの。ウルヒ父さんの望みは、
母上と同じく僕を帝位につくることだよね。僕、父さんの望みを叶えるよ!
ヒッタイト帝国のタバルナの座についてみせるよ!」
 ジュダは涙を拭いて立ち上がったと思うと、カイルに向かって走ってきた。
「ど、どうした? ジュダ?」
 皇帝の椅子から腰を上げていたカイルは、向かってきた弟に動揺した。
「どいて! 兄さま! 皇帝の椅子は僕がもーらった!」
 カイルをドンと突き飛ばし、ジュダは皇帝の椅子に腰掛けた。
「さあ、これで皇帝の椅子は僕のものだー。ウルヒ父さん、僕はやったよ!」
 ガッツポーズをして喜ぶジュダ。カイルは唖然としたが、心を落ち着けて弟に
ゆっくりと話し始めた。
「ジュ、ジュダ……。皇帝の椅子に座ったからと言って皇帝になれるわけでは
ないんだよ。まだ毒がさめていないようだな……。もう少し休んだほうがいいぞ……」
「やだい! この椅子は僕のものだい! この椅子がなくっちゃ元老院会議ができないでしょ!
だからこの椅子に座った者が皇帝なんだい!」
 ジュダはだだをこねて椅子からどこうとしない。
「ええい! どくのだジュダ! この椅子は私のものだ!」
「うぐぐぐぐ」
 カイルは皇帝の椅子に尻を押しつけ無理やり座ろうとしたが、ジュダは絶対に動こうとは
しなかった。
「カイル陛下、ジュダ殿下。下等な争いはお止めください。今は椅子とりゲームなど
している場合ではありません!」
 元老院議長アイギルが兄弟喧嘩を止めた。
「椅子とりゲーム? 椅子とりゲームか! そうしよう!」
 側にいたイル=バーニはアイギルの言った言葉に耳を傾け、ポンと手を叩く。
「陛下、こんなのはどうでしょう? 皇帝に立候補する人数を募って、その人数より
一つだけ少ない数の椅子を円形に並べて用意し、音楽にあわせてみんなで椅子の
周りをまわるのです。音楽が止まったところで一斉に椅子に座り、一人脱落者が出る。
1個づつ椅子を減らしてゆき、最後まで椅子に座れた者が皇帝となるのです。
名づけて『ヒッタイト皇位をかけた椅子とりゲーム!』です」
「おお、イル。それは名案だ。皆の者、椅子を用意するのだ!」
「かしこまりました!」
 どこから集めてきたのか知らないが、小学校にあるような木とパイプで出来た
椅子が次々と集められた。(小学校でやりませんでした? 椅子とりゲーム。笑BYねね)

「フフフ、久々の登場だぜ。薔薇ムセスさまだぜ!」
 ラムセスの側近ワセトが籠の中に入った薔薇の花びらを必死に主人の後ろに
蒔いて登場した。
「やっぱりきたのね……」
 ユーリは呆れたように言った。
「お祭り騒ぎにはこのラムセスさまは欠かせないだろ? ヒッタイト皇帝になれば
ユーリがもれなくついてくるんだからな」
 オッドアイの片方を瞑り、ウインクをユーリに送った。
「私も天国からやってまいりました。第4皇子のザナンザと……」
「第5皇子のマリでぇ〜す」
 天使の輪をつけてカイルの2人の弟の姿もあった。
 黒太子やホレムヘブの姿もあり、どこから集まってきたか分からないが
数十人の椅子とりゲーム参加者が集まった。
「おもしろーい! 第二ラウンドはもちろんタワナアンナの座をかけた椅子とりゲームよね!」
 ユーリはわくわくしながら言った。
「そのゲーム、お前のような小娘には負けぬぞよ! 自慢じゃないがワタクシのお尻は
でかいからな! おーほほほ!」
「尻がでかけりゃ勝てるってものじゃないのよ! 椅子とりゲームはね、瞬発力なのよ! 
運動神経なのよ!」
 バチバチッ! ユーリとナキアは火花を散らした。
「ねえねえ、ユーリさま。椅子とりゲームも面白いけど、女王の座をかけた
タワナアンナ杯には女性らしく『ハンカチ落とし』もいいと思いません?」
 ハディがユーリに耳打ちする。
「ハンカチ落とし! それもいいわね!」
「おお、ハンカチ落としなら、ワタクシのこの絹のハンカチを使うがよいぞ!」
 思わぬ小学生バトルとなった『椅子とりゲーム』。最後の椅子に座るのは果たして
誰であろうか? 勝利の女神は誰に輝くのか?
 緊張の中、ドラえもんの音楽にのせて「ヒッタイト皇位椅子とりゲーム」が始った。


♪おわり

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 いつものことながらアホな内容ですみませんねぇ。
しかし、ウルヒの最期にはナキアもビックリしていましたね。
ウルヒの最期の言葉もナキアのハートをノックダウンという
感じでしょうか? 篠原先生の書く悪役ってやっぱり
憎めませんよね。泥棒にも3分の利。本当ですわ(ちょっと違う?)。
次号でナキアはどういう態度に出るのかな? ウルヒが死んで
取り乱す? 涙する? うーん、どうだろ?
まさかナキアは死なないよねぇ、史実では追放だったし。
ナッキーには生き延びてほしいなぁ。

今回の篠原先生のお言葉に「ローズマリー」という言葉が……、
ねねである以上触れておかねば!(笑)