***11号続き***


今回は2パターン考えました。

「父親は誰なの?」
 ジュダの問いにウルヒの整った顔は固まった。
「僕の父親はみんなのいうようにウルヒなの?」
 金髪を引っ張ったまま純真な瞳で父親かもしれない男を見つめる。
 しばらくの沈黙のあと、やっとウルヒは口を動かした。
「私はあなたの父親ではありません」
「じゃあ、やっぱり僕の染色体の由来はシュッピルリウマ陛下でいいの?」
「いいえ、あなたのY染色体の由来は私のものです」
「え? じゃあやっぱりウルヒが僕の父親じゃないか!」
 ウルヒの矛盾した答えにジュダは声が大きくなる。
「そうですね、ジュダ殿下。あなたが生まれたときにはあなたの父親でした。
ですが今は違うんです」
「それっていったいどういうこと?」
「驚かないで聞いてくださいよ」
「う、うん」
 隻眼の男はジュダの澄んだ瞳をじっと見つめる。見つめられた皇子はゴクリと唾を飲む。
「実は私は女なのです。生まれたときには戸籍上は男だったのですが、
長年、炊事、洗濯、掃除をまったくしない男まさりのナキアさまと連れそうにつれ、
女性の意識に目覚めてしまったのです。ナキアさまの承諾を得て、
性転換手術を受けました。今は女なのです。このキューテクルの美しい金髪。
整った顔立ち。セクシーな太もも。どれをとっても、そんじょそこらの女には
負けません。だから私はあなたの父親ではないんですよ」
「え゛ー! ウルヒはニューハーフだったの?」
 ジュダは衝撃の事実のあまり、整った顔を崩し、目と口で3つのO(オー)を作った。
「そうなんです。私はあなたの父親ではなく母親なんですよ」
 美しい髪を風になびかせニッコリとジュダに笑いかける。
「そうなんだ。わかった!」
 ジュダは納得してウルヒの髪を離して王宮に戻っていった。

「皇帝陛下ー!」
 弟にしたいNO.1の皇子はヒッタイト帝国の最高権力者の名前を呼ぶ。
「どうした? ジュダ」
 夫にしたいNO.1の皇帝陛下はかわいい弟の叫びを受け止める。
「僕の出生の秘密がわかったんだよ。ウルヒは僕の父親じゃないよ。
母親だったんだよ!」
「はぁ?」
 カイル、ユーリをはじめ、彼らをとりまく側近たちはあいた口がふさがらなかった。
「そ、それはいったいどういうことだ?」
 カイルはみんなを代表してジュダに問いかけた。
「実はかくかくしかじかでウルヒは女なんだよ」
 ジュダは先ほどウルヒから聞いたことをカイルたちに説明した。
 調べによるところ、アルヌワンダ陛下を暗殺してそのあと姿を
くらませている間に砂漠の向こうの国で性転換手術を受けたということだった。
 衝撃の事実に側近だけでなく、王宮内すべてが雑然とした。
「ふーん、ジュダの父親はウルヒじゃなたっかんだね。よかったね、カイル♪」
 未来のタワナアンナは黒い瞳でニッコリとカイルに笑いかけた。
笑いを受け取ったカイルの心の中には、別の種類の複雑な感情が生まれていた。
大帝国の皇帝となるもの、心労にはつきないものである。

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「父親は誰なの?」
 ジュダの問いにウルヒの整った顔は固まった。
 ウルヒは一度目を伏せ、静かにジュダに語り始めた。
「とうとう……このときが来てしまいましたね。お話しましょう」
「う、うん」
 ジュダは緊張のあまり胸がドキドキした。
「父親はわかりません。母親もわかりません。なぜならあなたは赤ん坊のとき
赤い河の橋の下で拾われた子だったのです」
 ウルヒはアイスブルーの瞳に涙を浮かべる。
「うそー!」
 事実を知ったジュダはムンクの叫びのような顔になっていた。
「嘘ではありません。これが証拠です。あなたが捨てられていたときに
腕にはめられていたブレスレッドです」
 ウルヒはジュダにまるで指輪のように小さなブレスレッドを見せた。
ブレスレッドにはヒエログリフが刻まれ、エジプトの神のひとつ、アヌビスが
描かれていた。ジュダは小さなブレスレッドを受け取り手のひらで転がした。
「ヒエログリフ……。ということは僕はエジプト人なの?」
「それはわかりません。さあ、こんなところにいる場合じゃありません。
あなたの母を尋ねて旅をするのです。赤い河を超え、砂漠を超え、ナイルを超え、
さあ、出発です。母をたずねて三千里です!」
 ウルヒは遠くに見える赤い河を指差した。
「本当の母上……」
「あなたはマルコになるんです。ポンチョに夜明けの風を受けて旅をするのです。
あなたのお供にアメデオ(マルコと一緒にいる猿)も用意しました。
「ありがとうウルヒ。僕がんばるよ!」
 純真無垢な皇子はすっかり母を捜す気分になっていた。
砂漠を見つめ目をうるませている。
「ジュダ殿下、さそりにはお気をつけて!」
 ジュダはポンチョを翻し、肩にはアメデオを乗せて遠きエジプトに旅立っていった。


次号、天は赤い河のほとり第二部、
〜ジュダ、母をたずねて三千里編〜



♪おわり

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ジュダの母をたずねて三千里もいいけど、本編の今後の展開が
気になりますねー。ナキアもいよいよというところですね。
最後に感動させてください、ナキアさま。そうねねは祈っております。
それよりもウルヒさん。そんなセクシーな姿でうろうろしていると
病んだ輩に襲われてしまいますよ。おねえさんはそれが心配です。

ねね


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