***1号続き***


 エジプト将軍ラムセス。
それなりの地位も身分もあったが、一国の皇帝と肩を並べるには十分な地位ではなかった。
将軍の地位であるラムセスにはヒッタイト皇帝と戦うための公式のステージは用意されて
いなかったのである。ステージが用意されていないのなら、戦いの場を作ればよい。
もともと、決められたレールの上を歩いたり、用意された舞台で他人に踊らされるなど、
鋭気の漂うオッドアイの瞳には似合わない。ラムセスは軍を捨て、単独でカイルの率いる軍に
駿馬を走らせて行った。
 一方、カイルにも、このエジプト戦にはいくつかの成し遂げなければならないことがあった。
この戦いを最後の戦いとし、平和な治世を築き上げること。ユーリを近衛隊長としての任務を
勤め上げさせ、自分のタワナアンナとすること。もう一つは……、エジプトの勇将ラムセスと
決着をつけることである。最後に挙げた目的はカイルにとって一番に成し遂げなければ
いけないことではない。ラムセスとの決着など、個人の問題であり、
一国を治める皇帝として自我は殺さなければならない。
 頭ではわかっていたのだが、もう二度と訪れないかもしれないチャンスを目の前にすると、
天河二代ヒーロー両者は、自分たちのため、読者ファンのため、ねね's わーるどのため、
一対一で刃を交えずにはいられなかった。

「今日こそ決着だ! ラームーセースー!」
「望むところだ! ムールーシーリー!」
 カキン、キン、カン、コン!
 鋭く二本の剣、四つの瞳は火花を散らしていた。
「あーあ、将軍ってば軍を放ったらかしにして……、またホレムヘブ王に怒られますよ……」
「陛下ぁ〜、軍を放ったらかしにしてはいけませんー! ユーリ様やカッシュ達が心配してますよー!」
 エジプト将軍の従者とヒッタイト皇帝の従者はパチリと目があった。
「あ……、これはどうも、ヒッタイト皇帝ムルシリ二世様のご側近のかたですね。
私はこういうものです」
 ラムセス側近の蜂蜜色の若者は胸ポケットから名刺を出した。

エジプト王国

薔薇軍将軍ラムセス側近


ワセト
伴侶募集中


「こりゃどうも、はー、綺麗な名刺ですねー。申し遅れました。私はヒッタイト皇帝側近のキックリです」
 カイル側近のそばかす男もワセトに名刺を渡した。

ヒッタイト帝国

ムルシリ二世皇帝側近

キックリ
妻2人

「シンプルな名刺のデザインで。この薔薇名刺は将軍の趣味なんですよ」
 ワセトは苦笑いをする。
「そうですか」
 両者両手で丁寧に名刺を受け取り、名刺ケースの中にしまい込む。
「まったく、うちの将軍は言い出したら聞かないんだから! 困ったものだ!」
「おお! 悩みは同じですな。うちの陛下も言い出したら全然聞かないんですよ!」
 破天荒主人を持った国籍の違う二人は、同じ悩みを持つもの同士、気が合ったようである。
「まあまあ、立って見ていても仕方がない。座って見学といきましょうか? キックリさん」
「そうですね。ワセトさん」
 二人は体育座りで芝生の上に腰を下ろし、特等席で主人の決闘を見学することにした。
「どうです? ヒッタイトの今の財政は?」
「まずまずですなぁ。専売品の鉄の製造のおかげで前よりは良くなったけど
このとおり戦争なんてしていたんじゃ、武器や食料が足りなくなるのは目に見えてますよ!」
「やはりそうですか……、年末のボーナスはいかほど頂きました?」
 ワセトは興味津々でキックリの顔を覗きこむ。
「鉄の製造で一ヶ月分の給料は上がりましたが、ボーナスは悪いんですよ。
雀の涙ほどしかくれなんですよ!」
「うちもです。財政難だとか言って、減給されてしまったのです!
さして、ボーナスはいかほどに……」
「コソコソコソコソ」
「コソコソコソコソ」

 キックリとワセトは小さな声でお互いのボーナスを耳打した。
 他人に聞かれては少々恥ずかしいからである。(爆)
「えー! 減給されてそのボーナスですか! 羨ましいですなぁ。
さすがはピラミッドの国エジプト!」
「いえいえ、それはこっちの台詞です。ムルシリ二世様は民のことを想う賢帝ですから、
こちらこそ羨ましいですよ。うちのカラオケ好きファラオなんか、王太后や王妃の尻に
引かれっぱなしで散々ですよ!」
 ワセトは少々声を大にしてキックリに言う。
「今の給料でもなんとかなるのですが、今度妻を二人迎えることになりましてね。
一人は妊娠しているのですよ。これからお金がかかりますから、もう少しボーナスが
欲しかったところですよ……」
 細い目をさらに細くしてがっくりとうなだれる。
「お互い辛いですなぁ」
「そうですなぁ」
 有能将軍と有能皇帝に仕える側近二人は顎に手を添えて「はぁ〜」とため息をついた。
「あっ、まだ戦っている……」
 ポツリとそばかすのすぐ真下にある口が呟いた。
「そのうち疲れてやめるでしょ。放っておきましょう、キックリさん!」
 天河二代ヒーローの縁の下の力持ち、ワセトとキックリ。彼らの苦労は連載終了まで続くであろう。

♪おわり

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いやぁ〜、カイルとラムセスの絡み合っているシーン。
病んだ読者が小おどりしそうですね。
なんだか天河もここまできたか……って感じ?(大爆)
ガンバレ! カイルにラムセス!(←何をだ……笑)
天河を読み終わり、パラパラ少コミをめくるとなんと「ぱらぱらパラソル」がない!
(フフフ、ダジャレ……)
パラソル好きだったのにー。単行本も持ってるのにー。
カムバーック! おばかなパラソル♪
でもルナルナ様は健在なのね。この頃イマドキも面白いなと思っている♪