***3、4号続き***
〜邪道の最終回続きパロ〜


篠原先生

本編連載終了お疲れ様です




 カイルのプロポーズを受けて幸せ絶頂のユーリは、
万民の指示を得てタワナアンナに立后。
最良の皇后を迎えた国は、ヒッタイトの歴史上最大の繁栄をもたらした。
 カイルもユーリも赤い土に還った150年後――、ヒッタイト帝国は
歴史上から忽然と姿を消した。海の民に滅ぼされたとも、
疫病が襲ったなどいくつかの説があるが、都は炎と共に消えていったことが
現在残っている遺跡から推測されている。


***

 カイル=ムルシリとユーリ・イシュタルの結婚式。
 帝国中の人々が2人の結婚を祝福し、ユーリの立后を心待ちにしていた。
 神殿はいつもより豪華で、結婚式のために綺麗な花々で彩られた。
喜びと幸福に満ちた空間は、これからよき時代が来ることを連想させる。
 式の中――ヒッタイト幾千の神々の御名のもとに、
ユーリはタワナアンナとして認められた。
豹柄のマントを翻したカイルは、黒髪の上にタワナアンナの冠を載せ、
ユーリは晴れてヒッタイト帝国のタワナンナの地位を戴いた。
臣下も民も、神殿を飾っている薔薇の花までがユーリの立后を喜んでいた。
……薔薇? 薔薇が喜んでいる? 薔薇とい・え・ば!
「じゃ、じゃ〜ん! 薔薇薔薇薔薇ムセスさまの登場だっー!」
 神殿の階段に飾ってある薔薇の植え込みから、金髪にオッドアイの男が飛び出した。
もちろん肌の色は蜂蜜色である。
「ええい! パロディの世界とはいえ最後の最後までなんて邪魔な奴なんだ!
衛兵、エジプトのスパイだ! ひっとらえろ!」
 カイルは、右手で妻となったばかりのユーリを抱え込み、左手でラムセスを指差した。
「へへん! 捕まるものか! それより見てろよっ!」
 ラムセスは両手を大きく広げた逞しい胸筋と腹筋をあらわにした。
オッドアイをカッ見開き、天に向かって声のトーンを下げて呪文を唱えた。
「雄大なるナイルよ、力をかしたもうれ! 赤い大地に風よ吹けっー!」
 びゅうううううううう
 神殿に突風が吹き荒れた。強度の風にみんな目を瞑り、神殿に飾ってあった
無数の薔薇が宙を舞った。
 カイルも突然の風に驚き、ユーリをしっかりと腕の中に抱いた。
「な、何のつもりだ! ラムセス!」
 結婚式を滅茶苦茶にされたカイルは、ラムセスに食ってかかるように言った。
「ふふん。周りを見てみるんだな。ムルシリ!」
 憎きライバルしか目に入っていなかったヒッタイトの皇帝は、辺りを見回した。
 すると……
「ラムセスさま!」
「ラムセスさま!」
「我が薔薇ムセスさま!」
「あなたがこの国のファラオです!」
「ファラオラムセスよ!」
 先ほどまで、カイルとユーリの結婚を喜んでいた国民たちが、エジプト人である
ラムセスに、ひざまずいていていたのだ。
「ど、どうしたことなんだ……」
 カイルは呆気に取られた。
「ふふん、伊達にオレだって24巻で出番が終わってから何もしなかったわけではないのさ。
教えてやろうムルシリ。神殿に飾ってある薔薇はすべてエジプトから輸入したもの。
オレは日夜、薔薇の品種改良に挑み、とある魔法の薔薇の交配に成功したのさ。
その薔薇とは……」
 キラリとオッドアイがヒッタイトの皇帝に向かって光った。
 カイルはゴクリとツバを飲む。
「品種番号215番「ラムセスのかほり」だ! 薔薇花粉が鼻粘膜に付くと、
薔薇の教祖である薔薇ムセスさまに絶対服従を誓う魔法の薔薇なのだ。
ヒッタイトの輸出した薔薇は、すべて『ラムセスのかほり』とすりかえた。
さっきの突風で、薔薇花粉を吸い込んだから、ヒッタイトの国民は
すべてオレの言いなりさ!」
「な、なんだと! そんなことがあっていいのかっ!」
 カイルがラムセスにツバを飛ばすように言った。
 だが、次の瞬間、右腕に抱いていたユーリがスルリとカイルの腕を抜けた。
「薔薇ムセスさまァ〜」
 ユーリも薔薇花粉を吸い込んでしまったらしく、ラムセスの足元に
ひれ伏してしまったのだ。
「ユ、ユーリ!」
 カイルは驚いたが、薔薇花粉はヒッタイト皇帝の鼻の中にも
しっかり入り込んでいたのだ。
「うっ!」
 カイルは苦しそうに眉間に皺を寄せた。全身の力がふらふらと抜け……
「ああ、ラ〜ム〜セ〜ス〜ゥ〜」
 情けない声を出してヒッタイトの皇帝までもが、ラムセスに平伏した。
「ふふふ。これでヒッタイト帝国はオレのもの。ユーリもオレのものだ!」
 ラムセスはカイルがつけていた豹柄のマントを拾い、自分の肩に羽織った。
するとどうであろう。豹柄はみるみる薔薇柄に変化してゆき、蜂蜜色の逞しい
薔薇ムセス王が誕生したのだ。

 その後――
 ヒッタイト帝国の首都ハットゥサを中心に、薔薇ムセスの統治する
薔薇王国は栄えていった。宮殿は薔薇研究のための研究所と変わり、
日々薔薇について実験が行われていた。
「フフフ。ニンヒドリン反応にルミノール反応。何でも薔薇ムセスさまに
おまかせだいっ!」
 薔薇白衣をまとったラムセスは、試験管や三角フラスコの並ぶ研究室で
ふんぞり返っていた。
「そうですね。ラムセスさま。メンデルの遺伝の法則もお手の物ですね!」
 側近のワセトが薔薇の花を片手に、上司の機嫌を取った。
「さぁてと、今日も実験に励むかな」
 椅子から腰を浮かし、実験台の前へきた。『バー タワナアンナ』と書いた
マッチを手に取り、シュッと一擦りしてアルコールランプに火をつけた。
「ええと、火の始末は厳重に……」
 火の付いたマッチを持って、ラムセスは水道まで来た。溜め置きの水がバケツに
張ってあったので、ポイとマッチを水面に向かって投げた。
「ラ、ラムセスさま! それは灯油っ!」
 ワセトが真っ青になって叫んだ。
「えっ?」

 ちゅっどーん!

 ラムセスは冬のストーブ用に用意してあった灯油の中に、
マッチの火を投げてしまったのだ。実験室には可燃性ものが多く置いてあり、
みるみる研究所は炎に包まれていった。
 ラムセスの勅命で帝国中にはたくさんの薔薇の花が満たされていた薔薇王国。
炎は次々と燃えるゴミに分類される薔薇の花に燃え移り、ムルシリ2世から乗取った
ヒッタイト帝国は業火の中に消えていった。
 海の民に滅ぼされたとも言われるヒッタイト帝国。
 実は海ではなく、ナイルの河の民に滅ぼされたという事実を……歴史は知らない(笑)。


おわり

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さ、最終回です。最終回までねねはやりました! 続きパロを!
うおおおおお! 何が何だか今はよくわかんないー!
とにかくとにかく。邪道の最終回続きパロは、ねね'S わーるどらしく
『薔薇』でしめました。
本編も薔薇に満たされてなんと幸せそうなカイル君とユーリちゃん
なのでしょう。最終回にまでこんなに薔薇を書いてくださるなんて……
なんて篠原先生はねね'S わーるど想いなのっー!(爆)
とにかく、本当に天河にはここ数年楽しませていただきました。
篠原先生、ありがとうございます。そしてお疲れ様でした。
番外編も楽しみにしております。
そして、続きパロを最後まで見てくださったみんな!どうももありがとう!
ねねはうれしいよ(T_T)。

ちょっと真面目に書いたねねの天河です(^^ゞ
読んでくれると嬉しいな♪

最終回を迎えて……



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