***23号続き***




 結婚の儀のしきたりとして、式の前に5日間の沐浴が行われることとなっていた。
1〜4日目までの沐浴はカイルの魔力によりなんとかナキアの魔力を封じたが、
5日目の沐浴はイシュタルが昇る日。ユーリを別の世界に飛ばす条件が
揃ってしまうのであった。

 5日目の沐浴の日。ナキアはこの日を待ちに待っていた。
ユーリをこの世界から飛ばして、ヒッタイトから消し去る最後のチャンスである。
 カイルの監視の元、ユーリは恐る恐る第一神殿の泉に入った。
 とりあえず何も怒らない。カイルの魔力がナキアの力を封じているのであろうか?
見守っている一同はとりあえずホッとした。
 そう思うや否や、突然ユーリの姿が泉の中に消えた。油断したスキに
ナキアの魔力で引き込まれてしまったのであろうか?
「ユーリ!」
 カイルは血相を買えて泉に近寄った。
 ザバッ!
 泉の中に引きこまれたイシュタルが出てきた。
「一円玉みーっけ! ほら、カイル見て! 泉の底に一円玉が
落ちてたの。泉や池を見るとコインを投げ込みたくなる習慣って
古代からあったんだね」
 ユーリが泉に入ったとき、足の親指にコインの感覚がしたのだ。庶民出身の
タワナアンナは落ちているお金は拾わないと気がすまない。
そのため潜ってコインを取りに行ってしまったのだ。
「ユユユユユ、ユーリ! 勝手に潜るな! 心配させるんじゃない!」
 この緊迫した空気の中でのユーリの取った行動は、カイルが怒ってしまうのも
無理もないであろう。
「ご、ごめんなさい……。あっ! また足にお金の感覚が! これは500円玉かもしれない!」
 ユーリはチラリと未来の夫の顔を見る。
 眉毛が逆ハの字になっていた。
「わ、わかったよ……。もう勝手に潜らないから……」
 そう言うとユーリは足で泉の底をまさぐり、足の親指と人差し指でコインをつかむと
そのままシンクロの選手のように綺麗に足を挙げて、つかんだコインを
水面から出した。
「やっぱり500円玉! うれしー!」

 一方、ユーリの泉のコイン取りを見ていたナキアは、庶民の考えることは分からないと
頭を抱え、しばらく泉に引き込むことも忘れて呆然としていた。
「はっ! 小娘を泉に引き込まなければ! あまりのアホさに呆然と
してしまったわい!」
 ナキアは我に返り、500円を拾って喜んでいるユーリを泉の中に引き込んだ!
「あっ!」
 短い悲鳴を上げてユーリは泉の中に引き込まれた。
「ユーリ! もうコインは拾わなくていい! 出て来い!」
 カイルたちはまたユーリがコインを拾うために潜ったと思い込んでいたが、
今度はナキアの魔力によって引き込まれたのであった。
「あれ……? ユーリ?」
 泉の底にはコインの姿もユーリの姿もなかった……。

「ぶがぶぐぶくぶくぶががぶく!」
 泉に引き込まれたユーリは呼吸ができずにぶくぶくともがいていた。
すると真上に光が見えた。水面である。ユーリは死にもの狂いで光に向かって泳いだ。
「ぷはっ!」
 空気がユーリの肺の中に入ってきた。なんとか溺死は免れたようだ。
でもここは……?
 先ほどの沐浴をした泉ではなかった。カイルたちの姿もなかった。
ユーリが出てきたのは川だった。しかしもちろん赤い河ではない。
「ここはどこ……?」
 ユーリは首を180度左右に振った。
 人がいた。ラムセスほどは黒くないが肌が浅黒く、頭にはターバンを巻いていた。
お昼時なのか? 食事をしていた。食べていたものは……カレーだった。
「頭にターバン、カレー、もしかしてここはインド? そしてこの川は……ガンジス川!
結婚の儀の前の沐浴。ヒッタイトの泉ではなく、聖なる川、ガンジス川で
沐浴しろってことなの!?」
 なんとインドに飛ばされてしまったユーリちゃん。
ガンジス川できちんと沐浴すれば、もしかしたヒッタイトに還れるかもね♪


おわり

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今回の表紙! ルサファとネフェルトはやっぱりくっつくのね!
子供がかわいいわ〜♪ルサファ幸せになれてよかった!
それとバックの薔薇も忘れてはいけませんわよ!(笑)
天河いよいよラストかなぁ〜? 続きパロは大変だけど
書けなくなるのはとっても寂しい(T_T)。
篠原先生、腰をお大事に。


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