***12号続き***
オロンテス恋歌中編続き




 ユーリ・ナプテラが人質にとられ、エジプトのスパイに連れ去られたと聞いた
カルケミシュ知事ジュダ・ウルヒリン。彼はきつく警備兵や付き添っていたアーシャを責めた
 ジュダ・ウルヒリン――なんてパロちっくな名前。
今回は続きパロではなくて、番外編の番外編パロでいこうと思います。
ジュダ・ウルヒリンの名前の由来について、ねね'S わーるど式に
考えたいと思います♪

***

 ムルシリ2世治世○×年

 シュッピルリウマ一世第六皇子ジュダとアルザワ帝国第一皇女アレキサンドラが
治めるカルケミシュ。
 2人の間に金髪の男の子が生まれた。
アレキサンドラは父親と同じ金髪なので、とりあえず『ジュダ』の名前そのまま
受け継がせることにした。もうひとひねり名前を考えていたところで、
古代一性格の曲がった姑、ナキアが口を挟んできた。
「おお、なんと美しい金髪! ウルヒと同じじゃ!」
「お義母さま、ウルヒと同じではなくてジュダ殿下と一緒なのですわよ」
 アレキサンドラは顔を引きつらせながら義理の母に言った。
「いや、きっとこの赤ん坊はウルヒの生まれ変わりじゃ。名前はウルヒがよいな」
「勝手に決めないで下さい! 第一、お義母さまは一切の国政への関与を禁じられている
はずですわ! 皇子の名前をつけるのに口出ししないで下さい」
「ジュダはワタクシの息子、ジュダの息子はワタクシの孫。孫の名前に
口出しをして何が悪い。国政とは全く別じゃ。
年寄りの言うことは聞くものじゃぞ。小生意気な嫁よ……」
「都合のいい時だけ年寄りぶっちゃって……。いつもは山本リンダも由美かおるも
ビックリのナイスバディだって自慢してるくせに……」
 アレキサンドラは幼子を抱きながらぼそっと呟いた。
どうしてこの母からジュダのような良い子ができるのだろうとカルケミシュに嫁いで、
何度不思議に思ったことか。トンビが鷹を産むとはこの母子のことを言うのだと思った。
「ウルヒはいつも鈴をチリンチリンと鳴らすと、『はい、なんでしょうナキアさま』
と飛んで来てくれた。嗚呼、懐かしや。およよよよ」
 ナキアは今は亡きウルヒを思い出して、マントで顔を隠しておいおい泣き出した。
「母さま、泣かないで下さい……」
 優しいジュダは、母をやさしくなだめた。
「ウルヒそっくりの金髪。ウルヒは鈴一つで何でもしてくれたことから、
孫の名前は『ウルヒリン』でどうかのう。愛称は『ウルリン』だ」
「ウルヒリン、いい響きですね。そうしましょう。だから母さま、もう泣かないで下さい」
「ジュダはやさしい良い子じゃのう。西のなまりの残る何処ぞの国の姫とは
大違いじゃ」
 ナキアはマントから少し顔を上げて、アレキサンドラを見てニヤリと笑った。
「殿下! ウルヒリンだなんて……そんな名前っ!」
「アレキサンドラ、よいではないか。育ててゆくのは私たちだ。
ウルヒの名前が入っていても大丈夫だよ」
「でも、愛称が『ウルリン』だなんて、きっと大きくなったら『世界ウルリン滞在記』
とか、『ウッチャンナンチャンのウリナリウルヒ』とかいっていじめられるわ!」
「姫、この子は皇子だよ……そんないじめ受けないって……」
 ジュダの顔にちびまる子ちゃんのような縦線が数本入った。
「頭の固い嫁め! ウルヒリンといったらウルヒリンなのじゃ。さあ、
もう決まりじゃ。ほーほほほ」
 ナキアはカルケミシュの天に向かって高らかに笑った。
 頼みの綱の夫ジュダもナキアの言うがまま。
アレキサンドラは歯を食いしばって悔しさをこらえた。
 せめてもの……ナキアの性格と魔力が隔世遺伝していないことを祈るばかりであった。


♪おわり


***

もう一つ、ラムセス2世第27皇子マリパス編行ってみよー!(笑)


(ちょっと細かな設定)
 薔薇ムセスの孫、ラムセス2世に27番目の皇子が生まれた。
薔薇ムセスにとっては曾孫。薔薇ムセスは年老いて、27番目の曾孫が
生まれたとき、病床にいた。(史実は無視ね)

<注>
*ウガ妻=ラム2世ウガリットの妻(マリパスの母)
*ワセト=ボケて上手く喋れない薔薇ムセスの通訳

ラムセス2世 「お祖父さま、第4王子が誕生しました」
ウガ妻 「ラムセス1世陛下、どうかこの子の名前を陛下につけていただきたいのです」
ラムセス2世 「どうかお願い致します」
薔薇ムセス 「ふぉふぉ〜ば〜らばらばらばら」
ワセト 「陛下は何か候補になる名前はないのかとおっしゃっております」
ウガ妻 「マリなんてどうでしょう。
シンプルでよいかと考えているのですが……」
薔薇ムセス心の叫び (マリだと? とんでもない。俺がヒッタイトのウガリット戦で殺した
ムルシリ2世の弟の名前じゃないか。ダメだそんな名前は!)
薔薇ムセス 「マリ……パス」
ウガ妻 「マリパス。まあ、それはなんとよいお名前!」
ラムセス2世 「マリパス。うーん、よい響きです。お祖父さま、ありがとうございます」
薔薇ムセス 「うぐぐ……マリ…パス」
薔薇ムセス心の叫び (違うんだ。マリなんてやめろと言っているんだ。マリという名前はパスしたいんだ!)
ワセト 「陛下はマリパスが良いと仰っておいでです」
薔薇ムセス 「うがーば〜らばらばらばら」
薔薇ムセス心の叫び (どういう通訳してるんだワセト! ふざけんな!)
ワセト 「どうかしましたか、陛下?」
薔薇ムセス 「ば〜らばら、うっ……ぐっ……」
     薔薇ムセス、容態急変。
ウガ妻 「きゃあああ! 陛下のご容態がっ!」
ラムセス2世 「お祖父さま! 医師を、薬師を呼べ!」
ワセト 「陛下!」
薔薇ムセス 「うっ……ぐっ……」


 ――パタン。薔薇ムセスはベッドに身体を埋めた。
 蜂蜜色の身体から力が抜けた。オッドアイはゆっくりと瞼に覆われた。

 雲ひとつない天から、背中に羽と薔薇の刺青が彫ってある天使たちが数人降りてきた。
 薔薇ムセスの身体から魂が抜け、天使たちにやさしく腕をつかまれると、
砂埃と薔薇の花びらの舞う天にふわふわと昇っていった。
 オッドアイは二度と見開くことはなかった……。


♪おわり




***
ふう。なんとか書きました。久々に見る篠原先生の絵はキレイですね。
ナプテラちゃんの切なさが伝わってくるようで、なかなかよかったです。
次号が楽しみです♪
しかし、ウルヒリンにエイミ、名前が笑いのツボ!



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