***天国からこんにちはティト編***



 こんにちは、お久しぶりです。皆様、覚えていらっしゃるでしょうか? ティトです。
天河誌上、一番最初に死んでしまった者です。けど、僕は後悔していません。
だって、ユーリ様のためだもの…。僕が死んだ頃はまだ、ユーリ様の素晴らしさを、
みんな気づいていないみたいだったけど、今はすごいでしょ。あのイル=バーニ様だって
ユーリ様のこと認めているんだから…。ナキア皇太后も、ユーリ様をこの世界に連れてきて、
失敗だったんじゃなかな? って思うよ。
 そんなすごい方を守ったんだもの。僕は後悔してないよ。ただ、ちょっと死に方が
むごかったけど……。
 死んだばかりのとき、天国から地上の世界を見下ろすと、なんと、ハディ姉さんたちが、
ウルヒに騙され、ユーリ様を弑奉ろうとしているじゃないか!(2巻参照)
「違うんだよ。姉さん達! 僕はユーリ様のせいで死んだんじゃないよ!
そのウルヒに…ナキア皇妃に殺されたんだよ!」
 天国から叫んだけど、僕の声は全く届かなかった。
「ああ! ハディ姉さんがナキア皇妃の白い水を飲ませちゃた! ねえさ〜ん!」
 ユーリ様が息をしていない! どうしよう!
 僕はこのとき、まだ仲間のいない天国で一人でオロオロしたよ。
 でも…しばらくすると、ユーリ様が目を覚ました。あの黒い水は、仮死状態にする水だったんだ。
ホッと胸をなでおろしたよ。そんな安心も束の間、ズワに追いかけられてる! 大変だ!
あっ、父さんが…、タロス父さんがユーリ様と会った。よかった。これで父さんがユーリ様を助けてくれる
……と、えっ? なんで父さん、ユーリ様に剣向けるの?(2巻の最後参照)
姉さんだけでなく、父さんもバカー! 違うんだよー!
 父さんが、ユーリ様に剣を選ばせ、ズワと闘わせることに…。ひどいよ! 父さん!
あんなか細いユーリ様が、ズワに敵うわけないじゃないか!
 僕は天国で泣いたよ。
 でも、ユーリ様はズワに勝ったんだ!
 すごい!
 ユーリ様は本当にイシュタルだ! ヒッタイトの戦場の女神だ!
 みんなもユーリ様をそう、認めている。
 その後、姉さん達の誤解は解け、ユーリ様付きの女官に。良かった。
「姉さん、僕の分まで、ユーリ様に仕えてね」
 そっと姉さん達に言うと、シャラ姉さんが、天国のある方を見たんだ。
 僕の声が届いたのかな?

 その後、喜ばしくないことに、天国にザナンザ皇子と女官のウルスラさんが来た。
お話相手が出来たのは嬉しいけど、まだこっちに来て欲しくなかったな…。

 僕は毎日、地上を見ていたよ。やっぱり心配だもの。何が起こっても見ていることしか出来ないんだけどね。
 ユーリ様が、この世界に残る決心をし、カイル陛下もユーリ様を正妃にと考えるようになった。
エジプト戦で、近衛隊長を勤め上げたらユーリ様は晴れて、カイル陛下の正妃に…。
 遠征中のウガリットで、ユーリ様のご懐妊が分かった。カイル陛下はもちろんのこと、姉さん達や
3隊長も大喜びしてる。もちろん、天国にいる僕やザナンザ皇子、ウルスラさんも喜んださ!
 あれ? リュイ姉さんとシャラ姉さんがどっかに行くみたいだ。何処に行くんだろう…。
何? ユーリ様の安産祈願にバール神殿だって!?
 姉さんのバカー! あそこの神官はウルヒだー! 神官の顔くらい見ろー!
(T_T)(T_T)(T_T)(T_T)(T_T)……ああ、姉さんが…双子の姉さんが余計なことを…。
 まったく! いつもそうなんだ! 双子だから、余計なことも2人分。
僕が生きているころと全然変らないんだから!
 ほらほら、やっぱりユーリ様の乗っている船が沈められちゃったー。
ああ! リュイ姉さんが潮に流されている! 大変だ! このままじゃリュイ姉さんまで
こっちに来ることになっちゃうよ。
 ユーリ様とルサファさんは、ザナンザ皇子とウルスラさんが何とかしてるみたいだし。(ユーリ救出大作戦参照)
どうしよう。おろおろ。
「ポセイドンさん。僕の姉さんも助けて! 今度、ウルスラさんの下着こっそり盗んできてあげるから!」
 そう言うと、ポセイドンさんはリュイ姉さんのいるところに、潮の流れを変えて船をやってくれた。
 ウルスラさんやザナンザ皇子のような失敗はしないよ。(ユーリ救出大作戦参照)
ちゃんとアルザワの商船をリュイ姉さんのところに近づけたんだ。
 そうこうしていると、天国の世界にマリ殿下が入ってきた。決して嬉しくはないんだけどね。
死んじゃったものは仕方ないよね。命が短かった人は、その分、生きている時間を一生懸命、精一杯
生きてきたんだと思うしかないよね。
 最近じゃ、ザナンザ皇子やウルスラさんは、天国に来た人の歓迎会をするようになってしまった。
まあ、人生(終わってるか…)前向きに生きることも必要だけどね。
 今日は、マリ殿下の歓迎会。飲めや歌えの大宴会だ。
 宴会が始まると、みんなベロベロになるまで飲んでた。僕は未成年で死んだから、
お酒は飲めないんだ。みんなが酔っているスキをついて、僕はこっそりと神様のところに行ったんだ。

「神様、今度生まれ変わるときは、ユーリ様の弟か妹にして下さい」

そう、こっそりと頼み事しちゃった。



♪おわり