***アンパンマン編***


〜キャスト〜
アンパンマン:カイル
しょくぱんマン:イル=バーニ
おむすびマン:ルサファ
カレーパンまん:カッシュ
ジャムおじさん:ミッタンナムワ
バタコさん:ユーリ
バイキンマン:ラムセス
ドキンちゃん:ネフェルト


 むかしむかしのそのむかし。アナトリア地方にアンパンの顔をした皇帝が治める
ヒッタイトという国がありました。
 アンパン皇帝の名前はカイル、民衆からはアンパンマン皇帝と呼ばれておりました。
 このアンパンマン皇帝、こんがり狐色に焼けた顔には、大きなブルーの瞳が輝いており、それはおいしそうな…
いや、綺麗な顔立ちをしていました。(そ、想像できないぞ…アンパンマンカイル…)
パンの材料となる小麦粉ギャル達をキャーキャー言わせておりました。
 中身の脳みそ代わりのあんこも充実。大変、頭がよく賢い皇帝だったそうです。
 そんなアンパンマン皇帝に見初められたのは、王宮のパン工場で働く見栄えのしないバタコさんユーリでした。
ジャムおじさんミッタンナムワの助手をしていたユーリは、身分を越えて
アンパンマンカイルの正妃に選ばれたのです。育ての父であるジャムおじさんミッタンナムワは大喜び! 
 国を上げて、ユーリとカイルの結婚を祝っていたところだったのですが…。
 ―――な、なんと、敵国である隣のエジプト将軍バイキンマンラムセスに、ユーリは連れ去られてしまいました。
横取り大好き、人のものとなると欲しくなってしまうバイキンマンラムセスは、ユーリを我が物にしようと
自分の屋敷に連れ去ってしまったのです。

「ユーリを助けに行くぞ! しょくぱんマンイル、おむすびマンルサファ、カレーパンマンカッシュ、
用意はいいか!」
「もちろんです。アンパンマン皇帝! 今回は文官である私、しょくぱんマンイルもお連れ下さるのですね」
「ああ、今回はお前の知力も必要になるかもしれないからな!」
「お役に立てるようで嬉しいです。さあ、お化粧しなくっちゃ! 今日のファンデーションは何にしようかな?
ジャムにしようか? ママレードもいいな、ピーナッツバターも捨てがたいぞ! いいや、ここはシンプルに
バターにしようかな? バタコさんユーリ様を助けに行くのだし…」
 イルは、自分のお化粧に忙しそうでした。
「私も仕度せねば! 中身の具は何にしようかな? シャケか? おかかか? それとも小梅か?」
 おむすびマンルサファは、中身の具で真剣に悩んでいました。
「私はいつも中身は一緒だからな! でも、今日の焼け具合はどうだ? おっ、右端がちょっと焦げてるな…」
 カレーパンマンカッシュも、鏡を見ながらお化粧直し? をしていました。
 アンパンというだけ、中身はいつもおなじのカイルは何の仕度のいりません。
カイルは3人の仕度の遅さにいらいらしていました。……えっ? なんだって? 
「中身はいつも同じ」を訂正しろだって? 中身のあんこは、つぶあんのときと、こしあんのときがあるって? 
そ、それは失礼致しました。アンパンマン皇帝(笑)
 さてさて、用意の整ったアンパンマン皇帝を筆頭に、侍従の3人のパン達は、エジプトのラムセスの
屋敷のもとに飛び立ちました。

 ところ変わって、ここはバイキンマンラムセスの屋敷である薔薇屋敷。
この薔薇屋敷にバタコさんユーリは監禁されているのだ。
「らっりっるっれっろっーのラムセスだよ〜ん。バタコユーリは渡さないぞーん! 俺の妃にするんだよーん」
 ラムセスは、ユーリを助けにきたカイルに向かってそう叫びました。
「そうですわー。ユーリ様は私のものよー。離しませんわー」
 そう叫ぶのは、バイキンマンラムセスの妹のドキンちゃんネフェルト。
 バイキンマンとドキンちゃんの利害は一致していないようだが、ユーリをエジプトに
とどめるということでは二人とも息投合しているようでした。
「何をー! バイキンマンめ! これでも受けてみろ! アンパンマンパーンチ!」
 アンパンマンカイルはバイキンマンラムセスのホッぺにガツンと一発! パンチを食らわせました。
「いててててっ! よくもやったな! ええい! これでも食らえー! 薔薇薔薇いばら攻撃だー!」
 ラムセスはナイフのように尖った薔薇をアンパンマンカイルに向かって何本も投げました。
 グサササッ! 薔薇が刺さった音がしました。見てみると、カイルはしょくぱんマンイルを、
ぬりかべのように、盾にして、ラムセスの薔薇をよけているではありませんか! 
イルの体からは血の変わりにジャムが流れていました。
「よくもやったな! バイキンマンラムセスめ! これでも食らえー! おむすびマンパーンチ!」
 おむすびマンルサファはラムセスに向かっていきました。ルサファのパンチを軽々よけるラムセス。
ルサファは、壁に激突してしまいました。
「うわーん。せっかくの三角おむすび型がたわら型になちゃったー(T_T)」
 ルサファはボロボロ泣いていました。
「最後は私だな。いくぞー。カレーパンマンのスパイス攻撃だー!」
 トウガラシの嵐がラムセスとネフェルトのもとに降り注ぎました。
「うわあああ! 辛いのは苦手だー」
「辛口カレーより、甘口カレーのほうが好きですわ―」
 ラムセスとネフェルトはそう叫び、いとも簡単に降参の白旗を降ってしまいました。
 早速、ユーリを助け出すカイル。ラムセスの屋敷の一番奥の部屋に監禁されていました。
 ―――な、なんと、ユーリはとても衰弱しているではありませんか! 
どうやら、出された食事がみんな薔薇を使った食べ物らしく、口に合わず、食べなかったと言うのです。
「もう大丈夫だぞ! ユーリ! それ、私の顔を食べていいぞ!」
 カイルは、自分の顔であるアンパンを食べるようにユーリに言った。
「いいえ! ユーリさま。たわら型ですが、おむすびをお食べ下さい。中身の具は、
日本のなつかしの味梅干です」
 おむすびマンルサファも、ユーリの栄養バランスを考えそう言いました。
「私もどうぞ。辛口ですが、カレーです」
 カレーパンマンカッシュ。
「私こそ! 血…いや、ジャムまみれですが、しょくぱんです」
 ジャムをダラダラ流しながらしょくぱんマンイルもユーリの助けになろうとしていました。
 ユーリは小さな声で、ボソッと言いました。
「ん…、今食べたいのは…。いち早く、血糖補充の出来る……」
 ガブリ! ユーリはカイルの頭に噛み付きました。
 お腹をすかせたユーリには、甘いものがどうしても欲しかったようです。
「やっぱりな、私を一番に食べた、愛だな愛!」
 アンパンマンカイルはとても嬉しそうでした。
 こうして無事に、ユーリはパンの帝国ヒッタイト帝国にカイルとその側達と一緒に帰りました。

 ヒッタイト帝国のパン工場では、ジャムおじさんミッタンナムワがカイルの顔を焼いて待っておりましたとさ!

♪終わり