***席替え***
ピカピカシリーズ

 2学期になったある日、カイル達の担任の先生が言った。
「今日は席替えをします」
「わ〜い」
 と、みんなの歓声があがった。
(こういう時はたいていあがるものである。席替え自体はたいしたことないのだが
ちょっとした期待をする奴がいるからであろう)
「やった! これでムルシリの近くから離れられるよな?」
「お互い、よく我慢したものだ」
カイルとラムセスもユーリをはさんで座っていたから本当に
そう思ったらしい。これでお互い平和になると……。

 ところが…新しく先生が発表した席は何と! 
 お互いが隣り同士になってしまったのである。しかも同じ班である。
「では2学期の新しい席、新しい班の仲間で仲良くしようね」
 と先生が言ったとたん……。
「先生! 質問があります」
 カイルが手を挙げた。
「他の友達はみんな男の子と女の子と並んでいるのに、
どうして僕とラムセス君が隣同士なんですか?」
「そうだ! 俺はかわいい女の子と並びたかったのに……
珍しく意見があったな?ムルシリ」
 しかし先生は落ち着き払って言った。
「うちのクラスは元々男子が多いからそうなることもあります。
それにカイルくんとラムセスくんが仲良くなると、もっとクラスがよくなると
先生は信じています」
 先生の言葉に「そうだ!そうだ」と言う声もあった。
「だいたいカイルはくそ真面目じゃからのう。少しはラムセスの
爪の垢でも煎じるとよいのじゃ!」
 ナッキーなんかそう言っていた。

 そう言われてしまうと不満ではあるが仕方ない! だが…
「おい、班長は僕だよな?」
 カイルが言うと、案の定、反対するのはラムセス!
「何言ってんだ! 俺に決まってるだろ?」
 そこで同じ班の仲間に聞いてみた。
彼らはユーリやイルみたいに自分の意見をはっきり持っているわけではないので……。
「どっちでもいいんじゃない?」とか
「ジャンケンで決めれば」と言う始末であった。
 仕方がないのでジャンケンで決めることにした。
「やったあ!俺 の勝ち〜お前は副班長ね!」
 ラムセスが勝ち誇ったように言った。
「ちぇっ!」

 さて席が隣りになるとカイルは更にラムセスのことが気になった。
見るたびにズルをしているような気がする。ノートに下敷きははさんでないし、
使った鉛筆や消しゴムは授業が終わるとそのまま引き出しの中に入れてしまう。
「おい、それっていけないんだよ。ノートに下敷きはさむんだ。
それに鉛筆はちゃんと筆箱に…」
 カイルが注意するとラムセスは言った。
「お前ってさあ…こうるさいババァみたい! ああしろ、こうしろって早く老けちまうぞ!」
「せっかく言ってやってるのに! 何だよそれ!ズルっこラムセスバカヤロー」
 遂にカイルも切れてしまい、ラムセスとケンカになってしまった。
 もちろん! 先生に2人ともいやと言うほど怒られてしまった。

「あ〜あ! 嫌な奴と隣りになっちゃったなあ! そのせいで先生には怒られるし……
ユーリちゃんとも離れちゃうし、いいことない!」
 その日、カイルがぼやきながら家に帰ると弟のザナンザがうきうきしていた。
「あ、兄上、お帰り〜ぼくこれから出かけてくるからね♪」
「出かけるってザナンザどこへ? やけにお前おめかしして、薔薇なんか持ってさ〜
いったいどうしたんだ?」
 カイルが聞くとザナンザは得意げに続けた。
「あのね〜ユーリちゃんちに行くんだ。実はリュイやシャラの双子と同じ組なんだけど、
お姉ちゃんとユーリちゃんちに遊びに行くから一緒に行かないかってさ!
この薔薇? ママにせがんで家のをもらったのさ素敵だろ?」
 何だって〜? 弟がユーリちゃんちへ? そう言えば、ぼくはまだ行ったことない!
と言おうとしてカイルは言葉を飲み込んだ。
「兄上は仲良しだから遊びに行ったことあるんだろ?」
 とザナンザが言ったからである。それでつい兄としての見栄が先行してしまったのだ。
「そうか? じゃあ行って来いよ」
 と言って、できるだけ平静を装ってザナンザを見送ったカイルであった。

「くぅ〜ザナンザにまで先を越されて! 本当に今日はついてない」
 そう言って深いため息をついたカイルであった。

                〜終わり〜