***サンタクロースっているの?〜ぴかぴかシリーズ***
12月のある朝ユーリが学校へ来ると、カイルが声をかけてきた。
「ねえユーリちゃん、もうすぐクリスマスだね!」
「うん、あたしとっても楽しみ♪ 今年はサンタさん何くれるのかなあ?」
「ぼくは剣をお願いしてるんだ」
その時2人の方へ声をかける子がいた。クラスの秀才イル・バーニである。
「2人とも何の話をしてるんですか?」
「今年のクリスマスの話よ。サンタさん何くれるのかなって…」
ユーリが言いかけるとイル・バーニはふふんと鼻で笑っって言った。
「2人とも、そんなこと信じてるんですか? 無邪気ですねえ!
サンタ・クロースって本当はいないんですよ。実は…」
と、イルが言いかけるとダダーと走って来た奴がいる。
クラス1の大男ミッタンナムワである。
「おい、嘘つくなよ! サンタ・クロースがいないなんて!
そんなこと言ったら俺は許さないぞ!」
そう言うとミッタンナムワはイル・バーニの襟首をつかんでオイオイ泣き出した。
「く、苦しい! ミッタンやめてください」
そこへもう1人片づけ途中のランドセルを放り出して来た奴がいた。
「そうだ、そうだ! そんなこと言う奴はプレゼントもらえないんだ! バカヤロー」
ラムセスである。2人のすごい剣幕にイルはびっくりしてしまった。
「そうは言いますけど、だいたいあなた達はサンタって見たことあるんですか?
それにどこに住んでるんですか?」
やっとの思いでイルが反論するとユーリがすかさず言った。
「サンタ・クロースはね、赤い服を着て白い髭を生やしたおじいさんと
三千年前から決まってるのよ!」
「そうだ! トナカイのひくソリに乗って来るんだ。古代エジプトでも常識だぞ」
「そうだ! ぼくもラムセスに賛成!」
と、いつもはラムセスとけんかばかりしているカイルも言った。
「ムルシリ! 珍しく意見が合ったようだな」
ラムセスが言ったところでキンコンカンコ〜ン♪とチャイムが鳴った。
と同時に先生の怒る声が聞こえてきた。
「誰ですか? こんな所にランドセル放り出したのは? 早く片づけなさい」
「ラムセスくんで〜す!」
「またですか? 早くしなさい!」
「ちぇっ先生、俺達重大な話してたんだけど…」
「そんなの後よっ!」
仕方なくみんなは自分の席に戻った。おかげでサンタの話は中断してしまった。
さて休み時間になるとイルが朝の話を蒸しかえしてきた。
「ところでさっきのことですけど、もしサンタがいるとしたらどこに住んでるんですか?」
ラムセスが言った。
「そりゃ決まってるだろ! エジプトのもっと南のアフリカのジャングルの
誰も知らない所にいるんだ」
すかさずユーリが反論した。
「そんなわけないでしょ! トナカイは北に住む動物よっ。ラムセスの言う通りだったら
サンタはマサイ族と槍持ってることになるっ! そんなの嫌〜」
「そうだよな? それに赤い服でそりに乗ってるんだから…カイル君はどう思う?」
キックリがおずおずと聞くとカイルが答えた。
「うん、うちのママが僕と弟に言った話では…北極に近いラプランドと言う所にいるらしいんだ」
カイルが言うとみんなはうんうんと頷いた。
「それはすごいなあ」
「きっとカイル君のママが言うんなら本当だね」
ラムセスがそれを聞いて慌てて言った。
「おい、アフリカじゃないのかよ?」
「バカ! そんなとこ絶対いるわけないだろ」
カッシュとミッタンが猛反対した。
「でもどんな家に住んでるんだろうねえ?」
またもや控えめなキックリがそっと呟いた。
そんなみんなの気持ちを知ってか知らずか、その日に先生が読み聞かせてくれた絵本は
「ババールとサンタ・クロース」という題であった。それによるとサンタは妖しい森の奥に
誰も知らない大きな秘密基地を作っているらしいという。
その事実? がわかった後ラムセスが言った。
「やっぱりサンタは、世界中のよい子のために巨大な秘密基地を持っていたんだな。
そうとわかればさっそく用意しなくちゃな!」
と放課後はそそくさと帰って行った。それを見ていたミッタンナムワは慌てて言った。
「大変だ。俺もがんばらないとラムセスにプレゼント独り占めされてしまうぞ」
ミッタンも大きな体をドスドス言わせながら、慌てて帰って行った。
そんな2人の後ろ姿を見てカイルとユーリは言った。
「ねえラムセスとミッタンって本当にわかってんのかなあ?」
「さあ? でもプレゼントもらえるのは良い子だけだから、たぶん無理じゃないかなあ?
いやユーリちゃんはきっともらえると思うけどさ…」
さて急いで帰ったラムセスとミッタンナムワは何をしているかというと…。
実はクリスマス目指してせっせと靴下を作っているのであった。
ラムセスのは真っ赤な薔薇のついた派手派手な薔薇模様の靴下である。
「へへへ〜これなら世界中の誰が見たって俺様の靴下ってわかるもんね」
一方ミッタンナムワはいくらでもプレゼントが入りそうな巨大な靴下を作っていた。
「やった〜これなら、たくさんお菓子がもらえるぞ」
全く懲りない奴らである。さぞかしサンタ・クロースはびっくりすることであろう。
〜世界中の良い子にメリー・クリスマス〜
<終わり>