ウルヒ愛の譜(日記より抜粋)
byえ〜げる

シュッピルリウマ25年 さくらそう月 4日

 本日、水浴びをしていたら茂みの中から若い女性が飛び出してきた。
 裸の私を見ると、「きゃああ、なぜ裸なのよ、ヘンタイ!!」と叫んだ。
「そちらが後から来られたんじゃありませんか」と言うと、
「王女の私に口答えするのか!」と、そこらの石を投げつけ始めた。
いくつかが当たってかすり傷だが怪我をした。王女だと言うが、あんまりな所行だ。
ただ、泣いたように目元が赤かったのが気になる。
考えてみれば、あの乱暴さも恥じらいの裏返しなのかもしれない。


シュッピルリウマ25年 タンポポ月 20日

 この前お会いしたのはナキア様とおっしゃって、皇帝陛下のご側室だった。
 後宮でどうやらいじめにあっておられるらしく、
今日もあの場所でしょんぼりされている。
 元気を出していただこうと、「なにか飲まれますか、それとも召し上がられますか」
とお尋ねすると、「ヤキソバパンが食べたい」とおっしゃった。
 ヤキソバパンは人気なので走って買いに行ったけれど売り切れていた。
仕方がないので、コロッケパンを買った。私はコロッケパンが好きなので、
もしナキア様がいらないと言われたら、自分で食べるつもりだった。
 コロッケパンをお見せすると「ヤキソバパンはないのか、役に立たないやつめ、
仕方がないそれをおよこし」とおっしゃって、かぶりつかれた。
少しは分けてくださるかと思って見ていたら「なんだ、その恨めしげな目つきは」と、
平手打ちが飛んできた。
 ナキア様が少しは食欲を取り戻されたのはよい事だ。





シュッピルリウマ26年 どくだみ月 8日

 毎日ナキア様にパンやジュースを買いに行かされるので、
資金を得るために内職を始めることにする。
 トイレ用の造花の製作で、300個作って6,000円もらえる。
材料費が3,500円引かれるので、2,500円のもうけだ。
 部屋にこもって作っていると、なんとナキア様が私の部屋を訪ねてこられた。
「ウルヒよ何をしておる」とおっしゃるので、「花を作っております」と
応えると「私が退屈しているのに、おまえが楽しそうなのは気にくわん」と
言って机をひっくりかえされた。
「何をなさいます」と言うと「口ごたえするのか、こうしてやる」と、
床の上の造花を踏みにじり、道具箱を投げられた。道具箱が当たったので、
前歯が欠けてしまった。
 今日は、私が現れないのを心配してお見舞い下さったのだろう。
ナキア様は優しいお方だ。






シュッピルリウマ26年 ペンペン草月 12日

 ナキア様の所にうかがうと、「ひまじゃ、街へ出るぞ」とおっしゃった。
 2人で後宮を抜け出してゲーセンに行くことにする。
 ゲーセンで『サンバDEアミーゴ』をご覧になり、「ウルヒ、私はこれがやりたい」と
お気に召されたご様子ふぇ、早速チャレンジすることにした。
 自慢するようだが、私はマラカスが得意だ。(作品NO.7 シンデレラ編参照 BYねね
けれどもナキア様は、やはりお嬢さん育ちでおっとりしておられるせいか
テンポが少々ずれるところがある。
 私の方が得点が高かったので少しは見直していただけるかと思ったら
「ウルヒのくせに私より点数が高いとは生意気な」と、マラカスで殴られた。
 鼻血がでた。顔と服が真っ赤になった私を見て、
「おお、みっともない。離れて歩け」とご命令になった。
 ナキア様はやはり、他人に負けることを良しとしない、高貴な心の持ち主だ。



シュッピルリウマ39年 さるのこしかけ月 13日

「アリンナに赴いてユーリを亡きものにせよ」とご命令されたのに、
失敗してしまった。 ナキア様がどんなに腹を立てておられるかと思うと、
御前に伺候するのも、びくびくしてしまう。
 ナキア様は予想通りに不機嫌で「おもしろくない、ウルヒ、
何か気の紛れることはないか」とおっしゃられた。
 私はかねてより練習していた欽ちゃん跳びをご披露した。
「どうですか、おもしろいですか」とおたずねすると、
「ますます、おもしろくなくなったわ」と、鹿の飾りのついた杖を投げつけられた。
足に当たって青あざができた。
 いろいろと思い通りにいかない事があって、心労が増すばかりなのは、おいたわしい。
 次は、坂上次郎のモノマネをマスターしてお見せしようと思った。





アルヌワンダ元年 ほうれんそう月 5日
 
 皇帝陛下が変わられて、皇太子選びには国民の人気投票があるので、
ナキア様が「ウルヒよどうすれば人気アップかの」とおたずねになった。
以前ユーリ様の『安息の家』が人気だったことをお教えすると、
「なるほど、良いアイデアじゃ。しかし面倒くさい、お前がおやり」とおっしゃった。
「その他に、愛称などで国民に親しまれるのも、良いかと思われます」と申し上げると
「たとえば、ナッキーとか、か?」とかなり乗り気なご様子。
 ところが「ナッキー」とお呼びすると、「なんだ、馴れ馴れしいぞ、無礼な」
と怒ってぐーで殴られた。
 こんなに重大なプロジェクトのご相談をされるとは、私はなんと信頼されているのだろう。





ムルシリ元年 ふきのとう月 3日

 片目を失う大けがをして、ナキア様のところに伺うのが遅くなってしまった。
私が御前に伺候すると「お前がいない間にカイルのやつが皇帝になってしまったわ」
とお怒りのご様子。「申し訳ありません」と、うなだれると
「お前は役に立たん、あっちへ行け」とそっぽを向かれる。
「でも、ナキア様、私はこんなに大けがだったんです」と眼帯を取ると、
「鬱陶しいものを見せるな」と、ワインカップをぶつけられた。ワインは傷口にしみた。
 けれど、すっかり気を落とされているものだと思っていたので、
おもいのほかお元気で安心した。




ムルシリ2年 さくらもち月 27日

 皇帝陛下の御命で、地下牢に囚われていたが、夕方近くに地鳴りがした。
見れば排水溝の水が激しく波立っている。ナキア様だ!
 水はつららのように鋭く、牢内の私や見張り兵を攻撃してきた。
しかし、日頃からナキア様の暴力にさらされていた私には、
それを避けることは容易かった。
 もしかして、この日を見込んで、日頃心を鬼にして私を鍛えていてくださったのか?
 何という洞察力だろう。心の底から尊敬しよう。
 ナキア様に自由にしていただいた身だ。ナキア様のために投げだそう、と誓った。




                               おわり


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かなり面白いと思います。やきそばぱんといい、欽ちゃん飛びといい、
サンバであみーごといい……。笑いました。
皆さんも笑ったでしょ?