カイルの災難ラムセスの一得〜ぴかぴかシリーズ
BYまゆねこ



 カイルのクラスではひとつ学年が進級しても相変わらずのことがいくつかあった。

 その一つが給食である。毎日おかわりをめぐって、
ラムセスとミッタン達の熱い争奪戦が行われていたからである。

 今日は献立がカレーライスだったので特に激しかった。
他の子達もいつもより多く盛りつけるので、残されたご飯とカレーのお代わりは
更に少なかったからである。
「いただきま〜す」挨拶するとすぐラムセスとミッタンはまず自分の分を
全て平らげてしまう。こうしないとお代わりできない約束になっているからである。
「よーし! お代わり、お代わりっと♪」
 一足先に食べ終わったミッタンナムワが食管に向けてダッシュした。
「あ、このやろ〜〜〜」
 ラムセスも負けずに食管Mに走る。だが彼は食管の中身がほとんどないことに気がついた。
「このハゲタコの大食らい! 自分だけ多く取るなよな!」
 ミッタンも負けてはいない。
「俺だって少ないんだぞ!見ろよこれを!」
 そう言って盛ったばかりの皿を差し出した。いつもなら多少の譲り合いがあるのだが
今日はカレーだけに2人の間に険悪なムードが漂い始めた。
「こうなったらやるか?」
「おう!」
 今にも2人がケンカを始めそうになったときである。
「やめろよ!みっともないじゃないか」
 間に入って止める者がいた。カイルである。いつもなら大食い連中はほっておくのだが
2人の間にケンカが始まりそうだったことと、新しく委員長になったから
張り切っていたのである。
「何だよ?ムルシリ」
 ラムセスが叫んだ。
「そんなことぐらいでケンカなんてつまんないよ」
「つまんないとは何だよ! 俺達にとっては重要なんだ」
 今度はミッタンがムキになって言った。
「じゃあムルシリも一緒に責任取ってくれるってさ!」
「そうか? じゃあ心強いな!」
 カイルとミッタンがニヤリとして言ったので今度はカイルが聞くはめになった。
「おい責任って何だよ?」
「何? お前言ったじゃないか! これから俺達はおかわりを学校中に回収に
行くから一緒に来るんだよ」
 そう言ってラムセスとミッタンは食管をかついでカイルの手を引っ張った。
「おいおい何するんだよ!」

 しかしラムとミッタンは廊下をずんずん歩いて行った。
「まず1番残ってそうな所と言ったら1年だよな?」
「そうだな」
 すっかり彼らは意気投合している。だが1年の教室と言ったら弟のザナンザがいる!
おかわりなんてもらいに行ったら絶対何か言われるに決まっていた。
「おい! やめろよ恥ずかしいじゃないか!」
「何言ってるんだ! ムルシリ俺達は学校中の残飯を減らす努力をしてるんだぞ。
いいことじゃないか」
 2人ともカイルの言うことには耳を貸さなかった。1年の教室へ入るとすぐさま
「失礼しま〜す! お代わりが余っていたら僕たちがもらいに来ました」
 1年生はおおはしゃぎである。
「あ〜ラムセスとミッタンだ!」
「あ! カイルくんもいる。ザナンザ君のお兄ちゃんだよ」
 優等生で通っているカイルもいたので一瞬ざわめきが起こった。だが1年生は口々に
「いいよ〜持ってってください」
 とかわいい声で言ってくれた。1年の先生も苦笑しながらラムセスとミッタンの
差し出した食管にカレーの残りをよそってくれた。
 しかし1年の中にも渋い顔でにらんでいる者があった。
 カイルの弟ザナンザとラムセスの妹ネフェルトである。
「やだわ〜お兄ちゃん! 恥ずかしい」
「ラムセスならまだわかるよ。僕なんか兄上だぜ〜やめてくれよな」
 それを聞いてカイルは顔から火の出そうな思いであったが、
ラムセスとミッタンはいっこうに平気であった。

「さてもう1件行ってくるか!」
 最初がうまくいったので、まだまだもらおうという魂胆らしい。
全くピラニアのような奴らである。
「おい! いいかげんにしろよ」
 カイルはいたたまれなかったが、止めに入った以上後に引くことはできなかった。
ラムセスとミッタンは食の細いクラスにねらいをつけて、まんまと戦利品? を手に入れた。
「やったな! ミッタンこれで腹いっぱい食えるぞ」
「おう!」
「ムルシリ! お前の分もあるから食えよな」
「だから僕はいらないってば!」
「まだまだ〜さあ行くぞ! ムルシリ」

 こうして怒濤の給食も終わり、ようやく「ご馳走様」になってカイルもようやくほっとした。
 ラムセスは給食当番だったので食器類を給食室に片づけに行くと上級生が
待っていてラムセスの持って来た食器を受け取った。
「やあラムセス! お前もよく食うよな?」
「そうだよ! 給食好きだもん! お兄さん達何してんの?」
「俺達? 給食委員会さ! 学校中が持ってきた食器や食管の片づけの手伝いを
して給食のおばさん達を助けてるんだ」
「ふーん」
「そうだ! お前も手伝ってかないか?」
 上級生にはつらい委員会の仕事でも低学年には、おもしろい遊びである。
ラムセスは一緒になって働き担当の先生からもほめられた。
「あらラムちゃん! お手伝いえらいわね。あなたはいつも給食残さないから感心よ!
ごほうびにゼリーが余ってるから食べていきなさい」
「わーい! やったあ♪」
 ほめてもらった上にごほうびが出るなんて最高である。
「これなら毎日来てもいいよ先生!」
「えらいわねえ」
 いたずらだけど、なぜか憎めないのが彼の得しているところらしい。

 さてラムセス達につき合わされて恥ずかしい思いをしたカイルは、
更に家でも恥ずかしい思いをすることになった。夕食の時間にザナンザが話題に出したのである。
「全く兄上ったらさ〜給食をもらいにあちこちの教室行ってるんだよ!」
 それを聞いてヒンティママも苦笑していた。
「まあ! カイルもよく食べるようになったのね? 食も細いしやたらと胃も痛くするから
心配してたけどね」
「たくさん食べれば大きくなるぞ」
 シュッピリパパも言った。
「でも僕は恥ずかしいな! きっとお代わり足りなくなってラムセス達と
やってきたに決まってるもん」
「ザナンザ! よけいなことを言うな! 別につき合いで行ってやっただけだ」
「ふーん? でも友達が『カイルくんて顔に似合わずおもしろいことやるね』って言ってたよ。
よかったんじゃない?」
 と、さもわざとらしく言ったので、むかっとしたカイルは弟を叩いた。
ママに怒られたことは言うまでもない
弟が入学してから結構足を引っ張られてる? と感じているカイルでもあった。

            〜終わり〜