2度目の入学式〜ぴかぴかシリーズ
BYまゆねこ


その日はカイルが小学校に入って迎える2度目の入学式の日のことでした。
(と言っても別に彼が留年したわけでなく、今度は弟のザナンザが入学するのです)
「ねえ母上〜僕の格好おかしくない? ネクタイも合ってる?」
「はいはい、ちゃんと似合ってますよ」
「ランドセル大きすぎない?」
「大丈夫よ!」
 まだ7時だと言うのに、すっかり朝ご飯を済ませたザナンザは
自分の晴れ姿を何度もヒンティママに確認しているのでした。
 その様子を見ていたカイルがふっとつぶやきました。
「へっ! たかが入学式ごときに張り切っちゃってさぁ」
 カイルとすれば、ザナンザがあんまり浮かれているので、
ちょっぴり悔しくなったからなのですが、弟はその言葉を聞き逃しませんでした。
「何〜! 兄上だって去年はあんなにルンルンしていたくせにさ!
前の晩眠れなくて、朝方寝ぼけてトイレと僕の部屋と間違えそうになったのだって、
ちゃんと知ってるんだからな!」
「へん! 自分の姿を何度も鏡で見て鼻の下なんか伸ばしてなかったぞ!」
 あやうく兄弟げんかが始まりそうになった時、ヒンティママが言いました。
「カイル! 2年生は8時までに行くんじゃなかったの? 学校に遅れるわよ!
あなたも入学式に出て1年生を一緒に迎えるんでしょ?」
 ママにそう言われたので慌ててランドセルをしょったカイルでしたが、
出がけにザナンザにこう言うのを忘れませんでした。
「お前なんか入学したってお祝いなんかしてやるもんか!」

 学校に着くと、もうクラスのみんなは結構来ていました。
ユーリはハディと一緒に何か話しています
「ねえハディの妹の双子達も今年入学するのよね? きっとかわいいんだろうなあ」
「うん、朝からおめかししてたわよ」
 そこへカイルが教室に入ってきたのを見て2人はさっそく話しかけました。
「ねえカイル君の弟も今年入学するんでしょ? カイル君似で結構格好よかったわよねえ?」
「ザナンザかい? へ! あんな奴生意気なだけさ!」
 カイルが吐き捨てるように言うと、いつの間に来たのか朝から
テンションの高いラムセスが口をはさみました。
「だめだなあ! 朝からケンカするなんて!そ こへいくと俺様のかわいい妹も
今年入学するんだぜ! かわいがってやってくれよ」
「そうそう! ラムセスのとこのネフェルトも1年生なのよね? よかったわねえ!
兄に似ず、かしこくてかわいい妹でさぁ」
 ユーリが言うとハディも相づちを打ちました。
「そうよね! ラムセスと違って、まともだもんね」
「そうか? 俺は元々まともだぜ! でもかわいい妹に赤い薔薇模様のワンピースを
勧めたら『やだ』って言われたんだ。あいつがピンクのワンピースに
したのだけは気に入らないよな! 俺の育てた赤い薔薇だけはしっかり髪飾りにしたくせにさ!」
 そうラムセスが言うとユーリはが反論しました。
「それって女の子としては、ものすごく当然だと思うわよ」

 少したつと去年のカイル達のようにピカピカなランドセルをしょって
きれいに着飾った1年生達が親に連れられてやってきました。
下の学年が入ってきて興味津々な2年生達はさっそく1年生の教室に遊びに行きました。
「双子やザナンザ君、ネフェルトちゃんはみんな同じクラスみたいよ」
 ハディが言ったのでさっそく彼らは見に行ったのです。
「うわ〜かーわいい!」
 緊張した1年生達は自分の名前がついた机を前にキチンと座っていました。
「おもしろいお兄さんだよーん!」
 カイル達と一緒にやってきたミッタンナムワがさっそくおもしろい顔をして
1年生を笑わせました。
「やだ〜あのハゲの大きな人おもしろ〜い!」
 さっそくミッタンは1年生の人気者です。
「チクショー! ミッタンだけにいい目は見させないぞ!」
 それを見ていたラムセスがさっそく何かを始めました。
「いいかい? お兄さんのやることをよーく見てるんだ!」
 ラムセスはさっそく1本の棒を取り出しました。すると…あら不思議!
1年生の見ている前で棒は薔薇の花束に変わったのです。
「すごーい!」
 ラムセスの手品は1年生に大受けでした。1人妹のネフェルトだけが彼のことを
醒めた目で見つめていました。
「あのバカ…毎日コソコソやってると思ったら、またみんなの前で目立とうとしてたのね!
絶対他人の振りしようっと!」
 もう1人1年生で他人の振りをしている子がいました。カイルの弟のザナンザでした。
「ふん! 兄上の奴! 絶対学校で口きいてやるもんか!」

 しばらくして入学式が始まるので、2年生は先に体育館に移動して他の学年と一緒に
入学してくる1年生を待っていました。
 それから、かわいい音楽が鳴り、6年生に手を引かれて1年生が入場してきました。
おそろいのブレザーを着たハディの妹の双子はどっちか見分けがつきません。
ちょっと浅黒いけど、整った顔立ちをしたネフェルトはかわいいピンクのワンピースが
よく似合っています。そしてカイルに似てハンサムなザナンザは、去年の兄に続いて
1年生の男子の中でもピカイチです。
「やっぱりカイル君の弟だけあっていけてるよね?」
 上級生までそう囁いていました。

 1年生が自分の名前を呼ばれて上手に返事をして、校長先生のお話が終わった後、
2年生の出番になりました。全員でステージに上がって1年生にお祝いの言葉を言うのです。
1番に言うことになっていたのは、もちろんカイルです。
 ところが、普段はそつなくこなすカイルが、その日はステージに上がった途端台詞
を忘れてしまったのです。少しの間沈黙が続きましたが突然…
「兄上頑張れ!」
 と声がしました。声の主は弟のザナンザです。その顔を見て、ようやく頷いたカイルは
すらすらと言葉を言うことができました。さすがに上手でした。
「ザナンザ悪口言ってごめんな…ありがとう」
 カイルはそう呟いてステージを降りました。

 その後2〜6年生は1年生に聞かせるために校歌を歌いました。
しかしあんまり張り切りすぎていたミッタンナムワとラムセスは、こぶしがききすぎて
変な校歌になってしまいました。
「カラオケやってんじゃありません!」
 と後で2人はこってり先生に絞られました。 

〜終わり〜


 




[BACK]