初日の出を見たい!
BYまゆねこ


「ねぇ〜初日の出見に行こうよ!」
 もうすぐ新しい年が明けるヒッタイトで大晦日の日ににユーリが
カイルに言った。ところがカイルときたら
「え〜? 初日の出だって? お前の国では太陽を拝む習慣があるのか?
でも私も神官だから新年の祭事で忙しいのだ!」
 そう言ってさっさと大神殿に行ってしまった。
 どうやら初日の出を拝むのは日本人くらいらしい(これは本当とか……)
 仕方がないのでユーリはハディと双子達に言った。
「ねえ、馬に乗って初日の出が見える所に行かない?」
 しかしハディ達も暮れの大掃除と新年の準備で忙しかった。
「ユーリ様! この忙しい時に何言ってんですか? 年が明けて落ち着いたら
陛下にお願いなさいませ」
 そう言って誰も相手にしてくれなかった。
「いいもん! それだったら勝手に行くからね」
 ユーリの即断はいつものことである。その日のうちにアスランに飛び乗って
王宮を出てしまった。

 「う〜ん、どこへ行こうかな? そうだ! ピラミッドの初日の出なんて
いいんじゃない?」
 そこでさっそくラムセス兄妹のところを訪ねた。ヒッタイトとエジプトが
戦争中と言っても、今は年末で休みである。ラムセスとネフェルトも
家で正月の準備をしていた。
「おう、ユーリ! よく来たな。やっと俺の嫁になる気になったか?」
「えっ、本当? それならお正月から大歓迎よ。お母様も喜ぶわ」
 相変わらず脳天気な兄妹である。
「えっ? まあ……あのその……実はピラミッドに昇る初日の出を見ようと思って」
 ユーリはちょっとすまなそうに言ったつもりだった。が、ラムセスは大喜びだった。
「それならいつでもOKだぜ! ピラミッドから昇る朝日はナイスだぜ。
さっそく案内しよう」
「ちょっと兄様! ホレムヘブ王の年越しライブはどうするの?」
 ネフェルトが言ったがラムセスは耳を貸さなかった。
「お前代わりに出てくれないか? 俺は急用ができたと言ってさぁ…」
「えっ! そんなの嫌よ〜。あんな音痴な歌、夜通し聞かせられるなんて〜」
 どうやら王のジャイアンリサイタルには臣下はずっと閉口しているらしい。
 年末のキンキのコンサートなら行きたいが、ホレムヘブのコンサートなど
ごめんこうむりたいのは誰だって同じである!

「ラッキー! じゃあ俺はユーリと出かけてくるから! ネフェルト後はよろしく!」
 そう言ってラムセスとユーリはピラミッドに向かって出発した。
「ユーリ! 砂漠の中へ行くんだが用意は大丈夫か?」
 ラムセスが言うとユーリは答えた。
「うん、もうバッチリよ! 日焼け止めは塗ったし帽子はかぶったし、
長袖着てペットボトルは持ったし、ちゃんと対策したもんね!」
 さすがにエジプトは2回目だけあってユーリもしっかり用意していた。
「それに今回は一眼レフのデジカメも持ってきたんだもん! 
ちゃんと写真も撮るつもりよ!」

 ピラミッドへ着くと、ようやく日が昇る頃であった。頃合いとしては
ちょうど良いところだろうか。
「よし、シャッターチャンスだ。ワセト! 薔薇を用意しろ! しっかり撮るんだ」
 ラムセスは部下のワセトにそう言うと真っ赤な薔薇の花束を用意して、
まずユーリとパチリ! 次に薔薇をくわえてピラミッド前でパチリ!
(まるで誰かのようである・爆)
「ちょっと! ラムセス初日の出は?」
「そうだ! 忘れてた〜」
 ユーリが思い出したので慌ててラムセスはピラミッドに昇る初日の出も撮った。
それから叫んだ。
「見ろユーリ! 二千年の歴史がお前を見つめているぞ! 
その向こうに富士山も見えるぞ!」
 相変わらずバカなことを言うラムセス……。
「ナポレオンだったらよかったんだけどねぇ…ラムセス」
「何? ナポリタンなら俺も好きだ!」
 もちろんラムセスはナポレオンなんて知らないだろうなぁ。
 
 やっと目的を果たしたユーリは一度ラムセスの家に寄って撮った写真を
メールでヒッタイトに送ることにした。(そう! 例の長いアドレスです)
「カイルったら初日の出を見に連れてってくれなかったから、あてつけに
送ってやるんだ!」
 ユーリはそう言うと怒ったようにパソコンのキーをたたいていた。
 その時である。ラムセスの家の召使いがやってきて伝えた。
「ホレムヘブ王のお越しです」
「何〜! 俺はいないと言え!」
 ラムセスは言ったが時は既に遅かった。
「やあ! ラムセス君! 何で年越しライブには来なかったんだ?
儂は寂しいぞ。せっかくだから年賀にカラオケセット持ってきたぞ! 一緒にやろう!」
 すっかりおとそで? できあがったホレムヘブ王がマイクを持ってやって来たのだ。
こうしてラムセスとユーリは怒濤のカラオケにつきあわされるハメになってしまった。

 その頃ヒッタイトでは、ユーリからのメールを読んだカイルが、
ラムセスに呪いのチェーンメールを送っていた。
「あなたはこのメールを24時間以内に百人の人に送らないと呪われるでしょう」と……。



ユーリがエジプトへ行くときの格好、わしらの格好ではないか!
薔薇くわえてパチリ。やったよねー。ルクソール神殿の中で。(笑)
今度はもっと大きな薔薇の造花を持って写真を撮りたい!
ねね