エイプリルフール
BYスカーレットミッシェル


4月1日。
「今日は、エイプリルフールだ…。カイルをだましてみよっかな……」
 と、庭を散歩しながら考えていた。
「カイルをだますとしたら、協力してもらうのは、ラムセスかなぁ……??」
「オレを呼んだか!? ユーリ!!」
 いきなり薔薇の茂みの中からラムセスが出てきた。
「うわっ!! びっくりしたなぁ! なんであんたがここにいるのよ!!」
「ユーリがオレの名を呼ぶとこの薔薇が反応して、オレをここに連れてくるのさ。なーんてな♪」
「まぁ、いいや、ラムセス! お願いがあるの!!」
「なんだ?」
「私がラムセスの家に遊びに行くってことにしてくれない?」
「ユーリ! とうとうオレと結婚する気になったのか!! それは、大歓迎だぜ!」
「違うの。カイルをだまそうと……」
「そういうことか! よし!! すぐにうちに行くぞ!! ユーリ支度してこい!!」
 全然、話を聞いてないラムセスである。まぁ、いっか1日だけだし……。
 と、ユーリはハディ、双子、キックリのところに行った。
「ねぇ、ラムセスのところに遊びに行ってくるね!」
 もちろん、ハディー達は、
「なりません! ユーリ様!!」
「カイルをちょっとだましてみようと思って…。私は大丈夫よ。ネフェルトがいるから」
「陛下がどんなにお暴れになることか!! ラムセスの家が迷惑を被ります!」
 ユーリより家の心配をするハディである。(笑)
「きっと、大丈夫よ。薔薇に囲まれてるから」
「それもそうですね! では、私達もご一緒に…… 」
 双子が声をそろえて言った。
「だめだよ! カイルをだますんだからさ。私がラムセスについて行ったっていうことをカイルに伝えて」
「陛下をだますのも、楽しそうですね! では、お伝えしておきますね♪」
 ハディもノリノリである。
「無事にすむといいんですけど……」
 存在感の薄いキックリが心配していた。
 そして、ユーリは、ラムセスと共にエジプトに行った。

「陛下! いらっしゃいますか!?」
 と、ハディーはわざとあわてた様子で叫んだ。
「どうした? ハディ?」
「陛下! ユーリ様が……!」
「ユーリがどうした!?」
「ユーリ様が王宮はもう飽きたと言って、ラムセスのところに行ってしまいました!!」
「なに!? 連れ戻しに行くぞ!」
 騒ぎを大きくしたくない事情を知ってるキックリは、
「大丈夫ですよ、陛下。すぐに戻ってきますよ!」
そんなことを聞いていないカイルは、
「ルサファ! バズーカ砲を持ってこい! カッシュは戦闘機、
ミッタンナムワは、アー○ネーチャーだ!」
「陛下、アー○ネーチャーは、なんの必要がおありですか?」
 冷静なイル・バーニである。
「間違えた! ミッタンナムワは、戦車を!」
「はっ!」
 ルサファ、カッシュ、ミッタンは、それぞれ用意を始める。
「あ〜、やっぱり、こんなになっちゃった……」
 不安が的中したキックリである。
「う〜ん……。まぁ、なんとかなるわよ!」
 夫の心配とは裏腹に楽天的な双子である。

 一方……。
「へぇ〜、ラムセスって小学校に入ってもおねしょしてたんだ!」
「そうなのよ、ベットが何個あっても足りないくらいだったわ。」
「ネフェルト! 余計なことをしゃべるな!」
 と、話に華が咲いていた。
「ユーリ、これは薔薇の砂糖漬けだ! パリパリでうまいぞ!」
(これが本当に結構イケル!)
「あら? 意外とおいしいんだね!」
「オレの薔薇がいいんだ!」
「私の調理の仕方がいいのよ! ユーリ、こっちもどう?」
「これは?」
「薔薇のジュースよ。」
「ネフェルト、薔薇で調理するのが好きなの?」
「いいえ、ただ、兄さまが薔薇を栽培するから作ってみてるだけよ。」
「少しは感謝しろよな! 薔薇は高いんだぞ!」

 その頃、カイルたちは、ラムセスの家を包囲していた。
「ラムセス! おとなしくユーリを返せ!」
 しかし……、何も反応がない。
「カッシュ、戦闘機で攻撃しろ!」
「はっ!」
「陛下! 攻撃しては、中にいるユーリ様が……」
 キックリが止める間もなく、攻撃をしてしまった。
 しかし、ラムセスの家は、びくともしない。
 なぜなら、薔薇に囲まれて薔薇に守られているのである。
「どうなってんだ!? ラムセスの家は…、いや、ラムセスの育てる薔薇は?? 
次、ミッタンナムワ!」
「はっ!」
 しかし、やっぱり全然びくともしなかった。

「なんか外が騒がしくないか?」
「そうね……」
「あ! もう、こんな時間? 外が真っ暗だわ。帰らなくっちゃ!」
「なんだユーリ、帰るのか?」
「うん」
「また来てね!」
「ありがとう、ネフェルトも今度、ヒッタイト王宮に来てね!」
 そう言って、帰ろうと、ドアを開けた瞬間、
「ルサファ! バズーカ砲発射!!!」
 という聞きなれた声がした。
「カイルだ!」
「あの野郎! オレの薔薇になんてことしやがるんだ!」
「危ない!!」
 と、ユーリが叫んだ。
 ぶつかる! と思った瞬間、薔薇が動いてムチではたくようにバズーカ砲をはね返していた。
「薔薇が跳ね返した!」
 驚いているユーリである。
「ユーリ!!」
「カイル、何してんの!?」
「ムルシリ! オレの薔薇になんてことしやがるんだ!!」
「ラムセス……。お前の薔薇は、どうなってるんだ?!」
「素晴らしいだろ? オレの育て方がいいんだ。オレの意志どおりに動いてくれるのさ」
「ユーリ、わたしと一緒に王宮に帰るんだ」
 カイルはユーリを凝視し、きつく言う。
「うん。そのつもりだけど……」
「??……お前は、王宮に飽きたと言ってここに来たのでは?」
「違うよ、遊びに来ただけ。カイルのこと、だましたの。ごめんね」
「なぜ、わたしをだましたりするんだ!?」
「だって……、今日はエイプリルフールじゃん。」
「どうでもいいが、ムルシリ! 片付けていけよな!」
 薔薇をなでながらラムセスが言った。
「みなさん、おそろいだし夜遅いからうちに泊まっていきなさいよ♪
ネフェルト特製薔薇スペシャルを作ってあげる!」
そして、カイルが言った。
「……エイプリルフールとはなんだ???」


おわり♪