****シンデレラ編****
キャスト
 シンデレラ:ユーリ
 お城の王子様:カイル
 魔法使い:ナキア
 かぼちゃの馬車の御者:ラムセス
 意地悪継母:ハディ
 意地悪姉:リュイ、シャラ
 特別出演:ウルヒ

「私もお城の舞踏会に行きたい。」シンデレラユーリは 冬の寒さが凍てつく
空の下で呟いた。今日は丘の上のお城の舞踏会。結婚適齢期の王子様の花嫁を決める
舞踏会だ。国中の貴族の娘たちのほとんどがこの舞踏会に招待されている。ユーリも
貴族の娘なのだが、彼女は舞踏会なんかに行けるはずはない。
母に先立たれ 今は父(タロス)の後妻のハディが継母だ。(人間関係メチャメチャ)
ユーリは貴族の娘どころか 屋敷では奴隷同然の身分だ。継母や姉たちにいじめれれながら
毎日を過ごしている。
「ユーリ、私達はお城の舞踏会に行くけど あんたはしっかり留守番してるんだよ。」
継母ハディが きつくユーリに言った。
「そうよ、掃除に洗濯、明日の朝ご飯の支度やっておくのよ。」と意地悪姉リュイ。
「そうよそうよ、パロ小説じゃなくて少コミ実話では、毎日あたし達がやってんのよ。
しっかりやりなさいよね。」ドカッとユーリに蹴りを入れるシャラ。
「さあ、双子たち 支度はできた?もうお迎えの馬車が来ているわ。急いでお城に
向かいましょう。」
「ええ、お母様。王子様に見初められてもらうよう頑張りますわ。」声をそろえて言う双子達。
3人は馬車に乗りこみ お城へ向かった。

 馬車が豆粒のように小さくなるのを見送るとユーリは涙がでてきた。
着るものも食べるものも満足に与えられず、働かされている自分が情けなくなってきたのだ。
 その場でしくしく泣いていると、急にまぶしい光がユーリの顔を照らした。眩しくて
目をつぶるユーリ。
「そこの娘、何を泣いておる。」と命令口調のおばさんの声がした。
おそるおそる目を開けると 魔法のステッキを持ち後光を放った魔女が立っていた。
後光の射した弥勒菩薩像が魔法のステッキを持った姿を想像してもらおう。
「あなたは 誰?」
「私は 魔法使いナキア。そなたの望みをかなえてやろう。お前はお城の舞踏会に
行きたいのじゃろう?」
「そりゃ、行きたいけど。私には舞踏会に着て行くドレスも靴もないわ。」
「そんなことはお安いご用じゃ。おまえのその古着を純白のドレスに、靴はガラスの靴に
かぼちゃは馬車に 私の魔法でかえてやろう。かぼちゃと靴をここに持って来い。」
ユーリは貯蔵庫から かぼちゃを持ってきた。
「靴はどうした。おまえは靴は持ってないのか?」
「はい、靴は持ってないんです。」
「誰の靴でもいいから持って来い。裸足で舞踏会に行くわけにいかんじゃろう。」
ユーリは下駄箱へ行き靴を探した。
「姉や継母の靴は持って行けないし。どうしよう。しかたない、ちょっとサイズが大きくて
くさいけど 父、タロスの靴を持って行こう。」
「よし、揃ったな。では呪文をとなえてやろう。ビビリマクリブー。じゃなかった。
ビビデバビデブー。」
ユーリの古着は純白のドレスに、靴はガラスの靴に、かぼちゃはかわいらしい
馬車に変わった。馬車にはきちんと御者もついている。
シンプルなほとんど飾りのない純白のドレスだが、その白がユーリの白いなめらかな象牙色の肌を
目立たせている。きっと舞踏会へ行けば王子様に見初めてもらえること間違いなしだろう。
「ありがとう。魔法使いナキアさん。でも、このガラスの靴ブカブカだわ。
仕方ないか、タロスの靴は26センチだし。私の足は23センチ。これじゃ残念だけど
ダンスは踊れないわね。」
「さあ、ユーリ様 馬車にお乗り下さい。」かぼちゃの馬車の御者が言った。
「楽しんでくるがいい。ユーリシンデレラ。」と魔法使いナキアは 不気味な笑いを
浮かべてかぼちゃの馬車を見送った。

 お城に着くとドレス、タキシードなど着飾った人々であふれていた。舞踏会のやっている
広間に入っていくと 中央には王子様がいた。ユーリには慣れないパーティの席のせいか
すみのほうに隠れるようにして 遠くから王子様を見ていた。
「こんな綺麗なドレスを着て舞踏会に来れただけで十分。このデカイガラスの靴じゃ
踊れるわけないし、もう王子様のこと見ているだけで幸せだわ。」
じっと見つめているユーリの視線を感じたのだろうか。王子様カイルはユーリの方を見た。
「あっ、今王子様がこっちを見てるどうしよう。」
とユーリが焦っていると グイッと後ろから腕を引っ張れれた。
「おい、もう時間だ。魔法が解けるぜ。」さっきのかぼちゃの馬車の御者がユーリの耳元で
ささやいた。
「何?魔法が解けるって?聞いてないわよ。」
「魔法は12時までしか効かないんだよ。お前シンデレラのくせにそんなことも知らないのか?
ほら、魔法が解けたら もとの古着に戻るぞ。ほら、帰るぞ。」
時計をみると11時50分だった。ユーりはむりやり引きずられ 舞踏会の広間を出た。
「ちょっと、そんなに引っ張らないでよ。あっ、ガラスの靴が脱げた。」
靴がぬげたユーリおかまいなしに かぼちゃの馬車の御者はユーリを引っ張って行った。
 無理矢理、ユーリをかぼちゃの馬車に乗せお城から去った。
「今日はいい夢見させてもらったわ。ありがとうかぼちゃの御者さん。あっ、もう12時過ぎたわね。
でも、魔法解けてないわよ。もとの古着に戻ってないし。
それに家に帰る道が違うわ。何処へいくの?」
「ふふふっ。オレの名はラムセス。お前をオレの妃にするためにこのままオレのひみつの花園へ
いってもらう。魔法だと?12時に魔法が解けるなんて嘘さ。でもよくドレスを見てみろ
12時になるとそのドレスは変わるように魔法をかけたのさ。」
ユーリはドレスを見た。するとさっきまで純白のドレスがみるみる薔薇色に変わり
趣味の悪い薔薇の模様が浮き出てきた。
「なんなのよ。私を妃にするですって?冗談じゃないわ。家に帰して。
あんたなんかの妃になるくらいだったら。一生奴隷として暮らしたほうがましよ。降ろして!」
馬車の窓から外を見ると なんと馬車は宙に浮いているではないか。銀河鉄道999のごとく
かぼちゃの馬車は宙に浮き、月に向かってメルヘンチックに進んで行った。

 宇宙の何処かにあるラムセスのひみつの花園に馬車は着いた。
無数の色とりどりの薔薇に囲まれてユーリは呆然としていた。
「とにかく着替えるものをちょうだい。こんな趣味の悪いドレス着てらんないわ。」
「冗談じゃない。そのドレスは特注で作らせたものだぜ。似合ってるぜユーリ。
このまま花園内にある 協会に行って式を挙げよう。」
ユーリの腕を引っ張って 協会に連れて行こうとするラムセス。ユーリはその手を思いっきり
振りほどいた。
「絶対にイヤ。こんなドレスここで脱いでやる!!!」
とむりやりドレスを脱ごうとするユーリ。だが薔薇色のドレスはまるで肌と同化している
ようにまったく脱ぐことが出来ない。
「そのドレスは、オレしか脱がせられないように魔法がかけてあるんだ。
初夜が楽しみだぜ。」(ホントにこんなドレスあったら怖いかも...BYねね)
「やだー」
と泣き叫びながら ユーりは花園内を逃げ回った。
(なんかマジでユーリがかわいそうになってきた...BYねね)

「まったぁ〜」
と花園内に声が響き渡った。
ユーリとラムセスは声のした方を振り向くと、そこには側近を連れた、お城の王子様が
立っていた。
「その娘は嫌がっているではないか。その娘は私がもらい受け 国のタワナアンナにする。」
お城の王子様カイルは、命令口調で言った。
「おまえこそ何なんだよ。オレの花園に不法侵入しやがって。なんでいきなり
ユーリを妃にするなんて言い出すんだよ。お前は どっかの国のお姫様とでも
結婚すりゃいいだろう。」
「天候神テシュプのお告げで、宇宙の彼方の薔薇の園に幽閉されている黒髪の少女を
妃にしろとお告げがあったのだ。さあ、その娘を渡したまえ。ラムセスとやら。」
「冗談じゃないぜ。これの女はオレが先に唾をつけたんだ。お城の王子様だろうが
天国の閻魔様だろうが こいつは絶対渡さないぜ。」
「テシュプを愚弄するつもりか?私は神のお告げにしたがっているまでだ。
それにユーリは嫌がっているではないか。」
少し黙っているラムセス。
「よし、わかった。そこまで言うなら、神の判断を受けよう。」
「判断というと 炎夏の秤か?」
「違う、裏の国立競技場でバトルだ。名付けて”パン食って障害物借り物競争”だ。
すぐジャージに着替えて支度しろ。カイル!」

 ユーリの気持ちを全く無視したバトルはこれから始まろうとしている。

「こちらはひみつの花園裏にある国立競技場です。これから、黒髪の姫を我が物にしようと
バトルが始まります。解説は今回はひとり二役のハディと。」
「イル・バーニです。競馬編では、ほとんど喋らなかった私ですが、今回は
熱意を持って皆様に実況中継したいと思います。」
「さあ、選手が入場してきたようです。まずはあずき色のジャージを着たラムセスさんの入場です。
ジャージの胸元には、薔薇のワンポイントがあります。
 続いてお城の王子様、カイルさん。みどりの田舎くさいジャージを着ての入場です。
両者の間では火花が散っています。どちらに勝算があるとお思いですか?イル・バーニさん。」
「そうですね。カイルさんは、計画性があり物事をよく考えて行動なさいますが、
ラムセスさんは、無計画、無頓着、無鉄砲ですからね。そのぶっ飛んだ勢いで
ラムセスさんにも勝利は望めそうですねえ。これは面白いレースになってきそうですね。」
「では、ここでコースの説明をしましょう。スタートから30mの地点でパン食い競争が
あります。おなじみ、ぶら下がっているパンを手を使わずに口で取るものです。
続いて網くぐり、平均台、跳び箱といきまして、次は飴玉拾いです。小麦粉の中に隠された
飴を手を使わずに拾います。そのまま20m行って、最後に借り物競争です。
紙に書かれたものをゴールまで持って行っておしまいです。ちなみに紙に書いてある借り物は
ユーリさんが書いたものです。さあ、そろそろスタートの時間です。」

 ラムセス、カイルはスタート地点に立った。スタートの姿勢をとり、ピストルの鳴るのを
緊張した面持ちで待っている。
 パァ〜ン〜。ピストルが鳴った。
「両者スタートしました。まず先頭に出たのはカイルさんです。パンの前まで行きました。
まったく同じに見えるパンが5個並んでいます。パンの中身は何なんですか?ハディさん。」
「えーパンの中身はですね、アンパン(つぶあん)、クリームパン、ジャムパン、
納豆パン、正露丸パンです。ちなみに取ったパンはすべて食べなければいけません。
どのパンも具だくさんですよぉ〜。」
「ハディさん。せ、正露丸パンですか?それも具だくさん・・・。」
ちょっとこのレースに参加しなくて良かったと思っているイルであった。
「あっ カイルさんがパンにかぶりつきました。中身は・・・
黄色いものがはみ出ています。どうやらクリームパンのようです。ゆっくりと味わって
食べています。どうもムルシリ2世はクリームパンが気にいったようです。
 ラムセスさんが来ました。すごい勢いでパンにかぶりつきました。おっと、ボロボロ黒い粒が・・・
どうやらラムセスさんは大当たり。正露丸パンのようです。がむしゃらに食べています。
それに比べカイルさんは 満面の笑みを浮かべおいしそうに食べています。
 ラムセスさんは正露丸パンを食べ終わったようです。次の網くぐりに向かいました。
は、はやい ラムセスさん。網にも引っかからず、平均台、跳び箱と次々にこなしていきます。
飴玉拾いでは 小麦粉で顔を真っ白にして飴を取りました。
それに比べカイルさんは 網に引っかかって動きが取れないようです。ラムセスさん有利です。
 さあ、ラムセスさん 最後の借り物競争です。2枚ある内の1枚の紙を選びました。
なんと書いてあるのでしょうか?」
 ラムセスは紙を広げた。
「何?マラカスだって?そんなものここにあるわけないだろう。くそっ。」
悔しがるラムセスの耳に遠くからシャカシャカという音が聞こえた。競技場の向こうから
ウルヒがマラカスを両手に持ち、シャカシャカ音を立て踊りながらこちらに近づいてきた。
「おお、ウルヒ。そのマラカスかせ。」
無理矢理、ウルヒからマラカスを奪い取り、そのまま全速力でゴール。
「やったぜ!ユーリはオレのものだあ〜。」
「ゴ、ゴールしました。この勝負ラムセスさんの勝利でしょうか?あら?
どうやら審判員のほうでもめています。どうしたのでしょうか?
ゴール地点にいるシャラさん、そちらどうなっていますか?」
・・・「はい、私も今回は一人二役のシャラです。残念ながらラムセスさん失格です。
借り物競争の紙に書いてあったのは”マラカス”じゃなくて”マスカラ”だったんです。
というわけです。では 放送席戻します。」
「はあ、なんとまあ、まむけ(おっと打ち間違い。フフフまむさん。)まぬけな結果でしょうか。
さあ、カイルさんはどうなったでしょうか。今 飴玉拾いの所にいるようです。
どうしたのでしょうか。なかなか小麦粉の中の飴を拾おうとしません。そちらにいるリュイさん
どうなっているのでしょうか?」
・・・「はい、リュイです。どうやらカイルさんは、美しい顔が小麦粉まみれになるのを
嫌がっているようです。あっでも今 意を決して飴を拾いました。では放送席中継を続けてください。」
「はい、カイルさん 借り物競争の残りの紙の一枚を手に取りました。なんと書いてあるのでしょうか。
あっ カイルさん側近のほうへ走って行きました。側近の方からなにか布に包まれた
ものを渡されたようです。そのまま全速力でゴール。さあ、きちんと紙に書いてあるもの
を持ってこれたのでしょうか?」
 カイルがゴールすると同時に ユーリが席を立った。カイルの方へ近づいてゆくユーリ。
彼女はもう一枚の紙になんと書いたのだろうか?カイルは 布に包まれたものを見せた。
中から出てきたのは、ユーリがお城で落としたガラスの靴だった。ユーリはもう一枚の紙には
”ガラスの靴”と書いたのだった。
「どうして、ガラスの靴を・・・。」
カイルに向かって言うユーリ。ユーリはガラスの靴なんて持って来れるわけはないと思っていたらしい。
「おまえ、城の舞踏会に白いドレスを着て来ただろう。声をかけようと思って追いかけていたら
このガラスの靴を落として去ってしまった。テシュプからのお告げの黒髪の少女というのは
おまえかもしれないと思ってな。これを一緒に持ってきたんだ。」
 感動するユーリ。悔しがるラムセスをよそに カイルはユーリにキスをした。
すると趣味の悪い薔薇のプリントの入った赤いドレスは、みるみる色が薄くなり
真っ白い純白のドレスになった。魔法・・・いや呪いが解けたようだ。勿論自分でドレスを脱ぐことも
できる。(脱がしてもらってもいいんだけどね・笑)
 その後 カイルとユーリは結婚式を挙げ 二人助け合い、市民に愛されながら立派に国を治めて 
幸せに暮らしましたとさ。

おしまい♪