***マッチ売りの少女編***


「マッチはいりませんかぁ〜、マッチですぅ〜」
 冷たい木枯らしの吹きつける町の通りで、ちいさな少女ユーリはマッチを売っていた。
 通り行く人忙しそうで、ユーリの声などには、見向きもしなかった。
「はぁ〜、今日もマッチは売れない…。どうしよう…イル=バーニ執事さんに
怒られちゃう…」
 ユーリは通りに面したお店の壁によりかかり、そしてしゃがみこんだ。
「しかし、寒いな…。凍えちゃうよっ……。あっ! 雪だ…」
 天から小さな小さな天使でも舞い降りてくるように、ふわふわと静かに雪が降ってきた。
視覚には綺麗だったが、小さな天使は降れてみると冷たかった。ユーリの体温を
どんどん奪っていった。
「雪…、そういえば今日はクリスマスか…」
 あちこちの家から、クリスマス用のチキンを焼くいい匂いがしていた。
温かそうで…おいしそうで…、でも、ユーリには無縁のものだった。
マッチを売らないと、王宮に帰れなかったからである。
(どうして皇帝側室がマッチ売りをしているのか…、今回は王宮の下働きね…爆)

 ―――ドンっ!
 しゃがみこんでいるユーリに急に人がぶつかってきた。
「きゃあ」
 ユーリは突き飛ばされ、その拍子に、履いていた靴の片方が脱げてしまった。
ユーリの足には少し大きめの赤い靴だったからである。
「なんじゃ! なんでこんなところに座りこんでいるのじゃ! 邪魔じゃのう〜」
「はい、ナキア様。こんなチビッコは放っておきましょう! ついでに日頃の恨みです!」
 ―――ポカリ!
 何もしていないのにユーリはウルヒに頭を殴られた。
「痛い。えーん(T_T)」
 泣いていると、サササササとシャギーの入った黒髪の男が近寄ってきた。
「ユーリ様の靴! ユーリ様のぬくもり…。いただきっ!」
 そう言いながら、さっき脱げた赤い靴を持って男は消えてしまった。
「えーん、靴も片方盗まれたー! ヒック、ヒック」
 マッチは売れないわ、突き飛ばされるわ、殴られるわ、靴は盗まれるは…、
何て今日はついてない。そう、しみじみ思った。
「あーあ、私も温かいお部屋で温かいお料理をお腹いっぱい食べたいなぁ〜」
 ため息をつくと、ユーリは売れ残ったマッチを手にとり、箱から出して「シュッ」と
火をつけてみた。
 少しでも温まればと思いつけた火だったが、なんと火の中には…!
―――ユーリの家族が…、20世紀の現代の家族が炎の中にいたのである!
「パパ、ママ、お姉ちゃん、詠美!」
 マッチが燃え尽きるとすぐに家族は消えてしまった。ユーリは急いでほかのマッチをつけた。
 炎の中で何か楽しそうに会話をしている。古代に来る前と変わらないみんなの笑顔だった!
「みんな……」
 ユーリの頬にはほろほろと涙のしずくがこぼれ落ちていた。
 そんなユーリに……。
「お嬢さん。火遊びは危ないよ」
 と一人の男が話しかけてきた。
 見上げると外国人であった。金髪に左右違う瞳のオッドアイ。肌は浅黒かった。
「どうしたんだい? お嬢ちゃん? 寒いのかい? お腹が空いているのかい?」
「うん」
 ユーリは素直に答えた。
「可愛そうに…。よし! おじちゃんが、温かい部屋でおいしいものを
食べさせてあげよう! 一緒においで!」
「ほんと? 金髪の色黒おじちゃん! ユーリ嬉しい!」
 ユーリは素直に喜んだ。
「本当だよ。フフフ。さあ! 行こう!」
 色黒おじちゃんは、ユーリを軽々と抱きかかえ、大通りを超え、港の向こうに消えて行った。

挿入歌
 赤い靴〜 はぁいてたぁ〜 おーんーなーのーこぉ〜
 いーじんさんに つーれられてぇ〜 いーちゃーったぁ〜



はっ! 違う話になってしまった!

人攫いラムセス。今回のユーリは滅茶苦茶かわいそうだ…。

♪おわり